病の起源 脳卒中 ~早すぎた進化の代償~|NHKスペシャル

NHK総合テレビの「NHKスペシャル」で病の起源 脳卒中~早すぎた進化の代償~が放送されました。

毎年世界で1500万人が発症する脳卒中。突然人々を襲い脳の機能に障害が出る病です。出血した血液を取り除くなど急いで治療しなければ命に関わります。急速に巨大化した人類の脳。しかし、その代償として私たちは驚くほど脳卒中を起こすよう進化していたのです。700万年前アフリカで誕生した人類は、過酷な環境を知性を武器に生き抜き高度な文明を築き上げてきました。しかし、その影で私たちの体には病気の種が埋め込まれていたのです。チンパンジーとの共通の祖先から分かれて二本の足で歩き始めた人類は、自由になった手で石器を作りだし知性を高めてきました。わずかな期間に脳は3倍以上に巨大化。しかし、脳の血管の強度は進化のスピードに追いつけず脳卒中の原因を生み出していました。さらにアフリカの大地に適応してきた体は現代の生活の変化にも追いつけずにいます。このことが脳の血管に負担をかけ脳卒中を次々と引き起こしているのです。

 

脳の血管に膨らみが出来るのは体の血管より壁がはるかに薄いからです。私たちの脳の血管が薄いのはなぜなのでしょう。4億年前、脊椎動物で最初に誕生したのは魚類です。血管は薄い構造です。その後誕生した両生類や爬虫類も同じように壁は薄いままでした。しかし、2億年前に誕生した哺乳類では脳の血管は薄く、体の血管は厚く変化していました。運動すると筋肉にはたくさんの血液が必要です。そのため体の血管は大量の血液が流れても耐えられるよう壁が厚くなりました。ところが、脳には筋肉がなく運動しても必要な血液の量は変わりません。脳の血管の壁は薄いままで十分だったのです。脳の血管は薄いまま進化しなかった哺乳類。人類もまたその宿命を背負っているのです。

 

人間の脳は巨大化したことで毛細血管が劇的に増えました。そのため毛細血管の付け根にある幹の血管に大きな変化が起こりました。毛細血管の数が増えたことで幹の血管に大量の血液が流れるようになったのです。血管が分かれる場所ではカーブの外側で流れが早くなり、壁にかかる力が増えました。ところが、人の血管の壁は薄いままだったため膨らみが出来るようになりました。人類は250万年前から手を動かす能力を発達させました。人は運動神経の数が増えたことで必要な血液の量も増大しました。そのため、レンズ核線条体動脈には特に大量の血液が流れ脳卒中が起きるようになったのです。

 

アフリカのカメルーンに暮らすピグミーの人たちには脳卒中がみられないと言います。ベルギーのエラスムス病院のダニエル・ルモグン医師はピグミーの人たちには脳卒中がほとんど起きていないことを突き止めました。なぜピグミーの人たちには脳卒中が起きないのでしょう。調べてみるとピグミーの人々は年を取っても血圧が上がらないことが分かりました。高血圧になると血管の壁にかかる圧力が大きくなります。すると、脳の血管の弱い部分に脳卒中の原因となる微小動脈瘤が出来てしまうのです。私たち人類の祖先も高血圧になることはほとんどなかったと考えられています。人類が高血圧になるきっかけとなったのが6万年前の出アフリカです。人口の増加がきっかけでアフリカからヨーロッパ、アジアへと進出していきました。そして辿り着いた先で高血圧の原因となる塩と出合ったのです。塩は食べ物の味を引き立たせるため調味料として大量に使われるようになりました。塩との出会いによって人類は高血圧になるようになったのです。

 

最近、脳の血管ではなく首の血管が原因で起きる脳卒中が急増しています。首には脳に血液を送る太い動脈があります。首の動脈が詰まると脳の広い範囲に影響が起こり大きなダメージが起こります。血液中に脂肪やコレステロールが大量にあると血管の傷ついた部分からコレステロールが体の中に入り込んでいきます。壁が厚くなり血管を塞いでしまいます。人類史上かつてない程の肉や脂肪を摂るようになった人類。塩と同じように欲望が暴走し脳卒中を引き起こしているのです。




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