生命大躍進「そして目が生まれた」|NHKスペシャル

NHK総合テレビの「NHKスペシャル」生命大躍進 第1集「そして目が生まれた」が放送されました。生命は悠久の時の中、少しずつ少しずつ姿を変えて今の姿形まで進化したと長らく考えられてきました。ところが今、それだけでは説明のつかない事実が次々と明らかになっています。例えば脳は最先端の研究から何故か200万年前に突如巨大化していたことが分かりました。さらに手足はこれまで考えられていたより遥かに短い時間でヒレから進化したことがわかりました。なぜ突然進化の大ジャンプが起きたのでしょうか?

 

今から約5億年前、それまで目を持たなかった祖先が突如として精巧な目を持つように進化しました。5億500万年前、カンブリア紀の海は命溢れる世界でした。地球に生命が誕生してから30億年以上もの長い間、生命はずっと目に見えないサイズの微生物にとどまっていました。ところがカンブリア紀に突如大きく複雑な姿をした動物へと進化しました。この動物時代の幕開けに王者として君臨したのがアノマロカリスです。左右に突き出た2つの複眼は一度に360度見渡せます。目は生き残りに欠かせない武器となっていました。

 

長い生命の歴史において突如現れた目を持つ動物たちですが、その中で最初に目を持ったのはクラゲのような動物だったと考えられています。ウォルター・ゲーリングさんと五條堀孝さんはDNAの世界的な研究者です。ゲーリングさんはスイスで40年に渡って目の起源に迫ってきました。注目したのはクラゲの原始的な目の形です。ウズベンモウソウ(渦鞭毛藻)は森の木々と同じ植物の仲間ですが、クラゲの目と同じ三日月型の黒い部分で光を感知しています。これはより効率よく光合成を行うために何億年もかけて進化させた光センサーです。植物であるウズベンモウソウの光センサーと動物であるクラゲの目がそっくりなのです。全く異なる進化の道を歩んできた両者が同じものを持つことは普通はありえません。ゲーリングさんと五條堀さんがウズベンモウソウのDNAを調べたところロドプシン遺伝子が見つかりました。ロドプシン遺伝子はが作り出すたんぱく質は動物の目のたんぱく質とそっくりなのです。実は私たち動物の目にとってこのたんぱく質は欠かすことができないものです。それがあるのは目の奥にある網膜。たんぱく質の中央の部分に光が当たると形が変わり、この反応のおかげで私たちは光を感じることが出来るのです。植物が作った遺伝子が種の壁を越えて動物に移動したのかもしれません。

 

2014年、植物から動物へ遺伝子が移動したという実例が初めて見つかりました。その生き物はウミウシ(エリシア・クロロティカ)です。このウミウシは餌を食べなくても光を浴びるだけで生きることができます。動物なのに葉緑体を持っていて光合成が出来るのです。ウミウシの遺伝子からは海藻の遺伝子が見つかりました。このウミウシは元々海藻が持っていた遺伝子を自分のDNAに組み込み光合成できるように進化していたのです。植物である海藻から動物であるウミウシに遺伝子が移動したという発見に基づけば、大昔に植物から私たちの祖先に遺伝子が移動しても不思議ではありません。

 

私たち脊椎動物の最も原始的な祖先はピカイア。わずか3cm程の小さな動物でした。その目はクラゲの目とほとんど同じで明るい暗いを感じる程度の原始的なものだったと考えられています。私たちの祖先は立派な目を持ち繁栄を極める節足動物に怯えて生きるか弱い存在でした。ところが3億6000万年前、脊椎動物は劇的に姿を変えていました。ランクルオステウスです。ランクルオステウスの目は人間と同じカメラ眼でした。大きなレンズで光を集め、奥には解像度の高いスクリーン網膜があります。ランクルオステウスは視力が高く遠くからでも敵の姿や動きを的確に見極めたことでしょう。一方、節足動物が持つ複眼は一度に広範囲を見渡せるメリットはありますが、視力となるとぼんやりとしか見えません。明るい暗いしか分からなかったピカイアの原始的な眼から、一体どんな魔法でカメラ眼への第二の大躍進を果たしたのでしょうか?

 

5億年前のピカイアの生き残りと言われているのがナメクジウオです。2008年、ナメクジウオと人間のDNAを比べたところナメクジウオでは1つしかない遺伝子がヒトでは4つに増えている例がたくさん見つかりました。例えば体の基本構造を作り上げるHOX13遺伝子はナメクジウオには1つしかありませんがヒトは4つ持っています。さらに眼を形作る時に重要なEYA遺伝子もナメクジウオには1つしかありませんがヒトには4個ありました。なぜヒトでは遺伝子が4個ずつあるのでしょうか?ナメクジウオのような姿の祖先から人間に進化するまでの5億年間のどこかで持っている遺伝子のセットが丸ごと4倍に増えるような事件が起きていたのです。遺伝子のセットが4倍に増えたことで体の中の器官をより複雑で精巧なものに進化させていくことが可能になりました。その代表がカメラ眼です。光を感じる細胞を1億個以上も配置してできた網膜、透明な細胞を規則正しく並べてできたレンズなど、様々な部品が増えた遺伝子を使って作られました。では遺伝子の4倍増という出来事はどのようにして出来たのでしょうか?

 

普通、精子は父親のDNAの半分を持ち卵子は母親のDNAの半分を持っています。そのため子供には両親と同じ量のDNAが受け継がれます。しかし何らかのミスで親のDNAを半分ではなく丸ごと持つ精子と卵子が作られ親の2倍の量のDNAを持つ受精卵ができたのです。通常より大量の遺伝子を持つ受精卵は普通、余分な遺伝子が悪さをしてうまく育ちません。ところが生き残るための何らかの条件が偶然にも生み出され2倍のDNAを持つ子供が誕生したのです。そして世代を重ねるうち、この奇跡が再び起こりました。そして4倍ものDNAを持つ子供が誕生しました。これこそ私たちの祖先です。その体には進化の上でのとてつもない潜在力が秘められていました。遺伝子を4セットずつ持つという潜在力がその後、顎やヒレなどの画期的な器官を生み出し続けました。その中の一つがカメラ眼でした。おかげで私たちの祖先は外の世界を鮮明に見て天敵から逃れられるようになったのです。カメラ眼はその後も恐竜、哺乳類などあらゆる脊椎動物によって大切に受け継がれていきました。




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