生命大躍進 ついに知性が生まれた|NHKスペシャル

NHK総合テレビの「NHKスペシャル」で生命大躍進 第3集「ついに知性が生まれた」が放送されました。「人類誕生より遥か前に巨大な脳を獲得し考えるようになった恐竜がいた」という驚くべき学説が唱えられ始めています。その考える恐竜の化石が見つかったのはカナダのアルバータ州立恐竜公園。巨大恐竜たちに囲まれながら小さな体で熾烈な生存競争を生き抜いたのがトロオドン。トロオドンの化石を分析し、一体どんな恐竜なのか突き止めたのがカリフォルニア州立大学のデール・ラッセル博士です。ラッセルさんは10年近くも発掘を続け化石を集め、トロオドンの全身を復元することに成功しました。トロオドンは背丈1.2m程の小さな恐竜です。しかし頭蓋骨のくぼみのサイズから、とても大きな脳があったはずです。知能の高さは体重に対する脳の重さから推定することができます。トロオドンの脳はトリケラトプスの約10倍。ティラノサウルスと比べても3倍以上もあります。トロオドンは恐竜の中で飛びぬけて高い知能を持っていたようです。

 

人間の高い知性は約2億年前に祖先が獲得した新しい脳(大脳新皮質)によって支えられています。祖先は大脳新皮質を持つことで、これまでにない新たな能力を授かりました。それは色んな感覚をまとめる能力です。視覚、触覚、聴覚などいくつもの感覚を大脳新皮質でまとめることにより何がどこから、どんな速さでやってくるのかを総合的に判断できるようになりました。こうして感覚が研ぎ澄まされたことで祖先は夜の世界へと進出。夜は恐竜たちの活動が減る時間です。大脳新皮質はどのようにして獲得されたのでしょうか?

 

そもそも脳の細胞が作られる時には2つの遺伝子が関わっています。アクセルとブレーキの遺伝子です。アクセル遺伝子は脳の細胞に「増殖せよ」と促す指令物質を出します。一方、ブレーキ遺伝子は「増殖するな」という指令物質を出します。恐竜などの爬虫類は脳が出来る時にアクセルとブレーキの両方が同時に働き、打ち消し合うため細胞の増殖が穏やかになり脳はそれほど大きくなりません。しかし哺乳類では脳が出来る時に何故か一時的にブレーキ遺伝子が故障し働かなくなります。するとアクセルだけが踏み続けられ脳の細胞は増殖し続けます。こうして出来たのが大脳新皮質です。しかもブレーキ遺伝子が故障するのは哺乳類だけ。爬虫類や両生類など他の動物では故障は起きません。進化の過程でなぜ哺乳類だけにブレーキの故障が起こるようになったのでしょうか?

 

哺乳類のDNAではブレーキ遺伝子のすぐわきで、わずかな変化が起きていました。このことで分子レベルでDNAの形が微妙に変わり、細胞内を漂うFOXG1タンパク質がくっつくようになりました。すると、FOXG1タンパク質が蓋となってブレーキ遺伝子は指令物質を出せなくなります。これがブレーキの故障です。DNAに起きたわずかな変化が細胞の増殖を暴走させ大脳新皮質を生み出したのです。この大脳新皮質が進化の過程でいっそう巨大化し、哺乳類を大繁栄させ、やがて私たちの知性を生み出すもととなったのです。

 

氷河期の時代、地球上には私たちホモ・サピエンスとは異なる別種の人類が存在していました。ネアンデルタール人です。ネアンデルタール人は際立って巨大な脳を持っていました。ホモ・サピエンスよりも1割以上も脳が大きかったのです。その上、ネアンデルタール人は体格にも優れ並外れた力を持っていました。腕力はホモ・サピエンスの倍もあったと推定されています。しかし4万年前、ネアンデルタール人は絶滅してしまいました。そんなネアンデルタール人がどれほど言葉を使うことが出来たのかはよく分かっていません。ネアンデルタール人は数万年もの間、同じタイプの石器を作り続けました。ところがホモ・サピエンスは目的に応じて大きさや形の違う石器を次々と発明していました。この事実などから言葉に代表される知性の違いが見てとれると言います。ホモ・サピエンスは言葉などのコミュニケーションを使い技術を高め世代をかさね発展させ成功をつかんだのです。

 

ネアンデルタール人と比べて私たちホモ・サピエンスはより高度な言葉を使えたのはなぜなのでしょうか?最新研究からそこに遺伝子が深く関わっている可能性が浮かび上がってきました。きっかけは言葉がうまく話せない遺伝性の病気の調査でした。マックス・プランク心理言語学研究所のサイモン・フィッシャー博士は病気の原因を探るため症状が出ている人たちの血液を採取しDNAを分析。すると、その人たちに共通してDNAの特定の場所に違いがあることを見つけたのです。この遺伝子はFOXP2と名づけられました。しかし、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスとではFOXP2遺伝子の主要な部分に違いはありませんでした。研究チームはFOXP2遺伝子の周辺にまで分析の手を広げ、40万文字にもあたるDNAを徹底的にあらい直しました。すると40万文字の中のほんの1文字に違いを発見しました。ネアンデルタール人ではAで表されている部分がホモ・サピエンスではTに変化していました。わずか一文字の違いがFOXP2遺伝子の働きに影響を与えた可能性があると言います。

 

厳しい氷河期に私たちの祖先は高度な言葉を武器にして生き残りをはかりました。言葉を巧みに使うことで沢山の人が協力し合い、より大掛かりな狩りが出来るようになったと言います。さらに言葉は知識を世代を超えて引き継ぎ発展させることを可能にしました。人間以外の生き物ではどんなに素晴らしい技能を身につけても一代限りで子には伝わりません。ところが人間は言葉を使って知識を子に伝え、子がそれを発展させ孫へと引き継がせることができるようになったのです。


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