生命大躍進 こうして母の愛が生まれた|NHKスペシャル

NHK総合テレビの「NHKスペシャル」で生命大躍進 第2集「こうして母の愛が生まれた」が放送されました。

 

母乳誕生の秘密

母乳による子育ての始まりこそ母親の愛を芽生えさせる大事件だったと考えているのがスミソニアン環境研究所のオラフ・オフテダル博士です。母乳による母と子の密着が愛情につながったと言います。では母乳はどうやって生まれたのでしょうか?汗のように吹き出すハリモグラの母乳は、卵がかえる前から湧き出しています。赤ちゃんの栄養とは別の役割があるようです。ハリモグラの母乳を分析すると興味深い2つの物質が見つかりました。一つはαラクトアルブミン。これは母乳ならではの甘い栄養分を作るたんぱく質です。もう一つはリゾチーム。これは殺菌力を持つたんぱく質です。ハリモグラはリゾチームを含む液体で卵を濡らし雑菌の繁殖を防いでいると考えられます。驚くのは全く働きの異なる2つのたんぱく質ですが構造はよく似ています。オフテダル博士は母乳の起源は殺菌物質のリゾチームを含んだ汗のような液体で、それが変化して母乳の基αラクトアルブミンを含む栄養豊富な液体に変わったと考えています。

 

汗が母乳に進化した?

約3億年前、哺乳類こそ生物界の王者でした。しかし王者といえども子育ては容易ではありません。当時の祖先たちは薄く柔らかい膜に覆われた卵を産んでいました。卵に雑菌が入り込むと中の赤ちゃんが死んでしまいます。そこで母親たちは殺菌物質リゾチームを含む汗のような液体で卵を濡らし雑菌の繁殖を防いでいました。私たちの祖先の子を守ろうとする営みの第一歩です。そんな祖先たちの体内で思いがけない変化が起こり始めました。DNAでは長い時間の中で時折変化が起こります。ある時、偶然その変化がリゾチームを作る遺伝子の一部に起こりました。その結果、遺伝子から作られるたんぱく質の形もわずかに変わりました。こうして生まれたのがαラクトアルブミンです。偶然起きたこの出来事で卵の殺菌が目的だった母親の汗に甘い栄養分が含まれるようになったのです。これを卵からかえった赤ちゃんが舐めたことで子育てに革命が起きました。子供が甘い汗を頼りに育つようになり、母乳の誕生という大躍進が起きたのです。母乳によって母と子はより分かちがたく結びつき、それが母の愛情へと繋がっていったのです。

 

母の愛を試練が襲う

約2億5000万年前、母乳による子育てへと踏み出した祖先たちは大繁栄し様々な姿、形のものへと種類を増やしていました。しかし噴火活動が100万年も続き地球上の生物種の96%が絶滅したと考えられています。私たち哺乳類の祖先はどうなったのでしょうか?

 

祖先の子育て大革命

2011年、中国で大絶滅を生き延びた私たちの祖先の貴重な化石ジュラマイアが発見されました。体長はわずか10cm。しかしジュラマイアは卵を産むのではなくお腹の中で赤ちゃんを育てる体の作りになっていました。赤ちゃんをお腹で育てるための胎盤を持っていたのです。

 

おなかで子を育てる

胎盤は赤ちゃんのへその緒の先にある特別な臓器です。これによって赤ちゃんは母親の子宮に密着し、栄養や酸素を母親から受け取れるように。もともと私たちの祖先は受精卵を殻で覆い外へ産み落としていました。それが卵です。ところが、あるとき不思議な変化が起きはじめました。受精卵の中にある赤ちゃんの尿を溜める袋が発達し母親の体の一部に密着したのです。これが胎盤となり子供は母親の胎内に留まって育つように。卵を産み落としていた我が子をお腹に身ごもるという新しい子育ての始まりでした。この大躍進は体の小さな祖先が生き延びる上で重要な意味を持っていたと言います。

 

わが子を守る母の苦闘

大噴火による大量絶滅の後、地球は恐竜たちが支配する世界へと変貌を遂げていました。恐竜時代の始まりには、まだ卵を産んでいた私たちの祖先は敵に襲われると親は逃げられても卵は置き去りにしなければならないこともあったでしょう。そこへ現れたのが胎盤を持つ私たちの祖先ジュラマイアです。ジュラマイアは昆虫などを餌に森で暮らしていました。胎盤の登場によって子供が無事に育つ確率は卵の時代に比べて飛躍的に高まりました。なぜ私たちの祖先は突如、胎盤を手に入れることができたのでしょうか?

 

突如出現!胎盤のナゾ

実は最近ある遺伝子が重要な役割を果たしていたことが分かってきました。それはPEG10遺伝子。PEG10遺伝子は1億6000万年以上前に突如現れ、その後の哺乳類に受け継がれたことが分かりました。PEG10遺伝子は様々な病気を引き起こすレトロウイルスとよく似ていることが分かりました。レトロウイルスが祖先のDNAに入り込み胎盤を生み出すPEG10遺伝子になったと考えられるのです。実は胎盤にはウイルスから貰ったとも考えられる不思議な能力が備わっています。それは母親の免疫を抑えるという能力です。親子であっても時に血液型すら違う別人です。そんな赤ちゃんが体内にいれば母親の免疫によって異物とみなされ攻撃されるはずです。それを胎盤が母親の免疫を抑えることで防いでいるのです。レトロウイルスも相手に感染するために免疫からの攻撃を抑える能力を持っています。この力がレトロウイルスをDNAに取り込んだ祖先にも伝わり我が子を身ごもるという大躍進を可能にしたのです。その後の進化で胎盤の能力は強化され、子を身ごもる期間は長くなっていきました。赤ちゃんは安全な母親の胎内でより大きく成長してから生まれてくるように。その一方で母親たちは我が子に栄養を奪われながら長い期間、身重の体で生きる苦労を背負わされました。




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