イギリスのシュロップシャー州に住むエマ・ウィルクス(30歳)は、1つ年上の優しい夫と3人の可愛い娘に囲まれ毎日が幸せでした。そして体には4人目の赤ちゃんがいました。
出産まであと2ヶ月の検診に訪れた時、4人目も女の子であることが分かり、胎盤がかなり低い位置にあることが分かりました。
普通、胎盤は子宮の上の位置にありますが、エマの場合子宮の入り口付近にありました。この症状を前置胎盤と言います。胎盤がこの位置だと赤ちゃんが生まれる時、子宮口をふさいでしまうため自然分娩ができません。また妊娠後期に入ると子宮口部分が広がり胎盤と接している部分から出血する可能性もあります。
これまで3人の娘は自然分娩でしたが、お腹の赤ちゃんは自然に育っているのでエマはあまり考えないようにしていました。しかし、出血してしまったため入院し、陣痛が始まったので急遽帝王切開により出産することになりました。
手術開始から15分後、女の子が無事に生まれました。1ヵ月半早い出産でしたが無事に生まれました。ところが、エマの腹部から激しい出血が起こり血圧が低下。エマはアナフィラキシーショックを起こしていたのです。ラテックスアレルギーや麻酔のアレルギーの可能性がありましたが、医師はDIC(播種性血管内凝固症候群)であると思いました。DICとは血液中の血小板や血しょうに含まれる血液を固める成分が著しく低下するため大量出血が起こるものです。
エマの心臓は停止。しかし、輸血や薬による処置のおかげで危機的状態から帰ってくることができました。エマは羊水塞栓症(ようすいそくせんしょう)でした。
羊水塞栓症は少し前までは羊水が入り込むことで血管が詰まったり子宮内に異常出血を起こしたりすると考えられていましたが、最近の研究により羊水の成分に母親自身が激しいアレルギー反応を起こしている事がわかってきました。つまり、分娩時に微量の羊水が母体の血管内に入り、羊水に含まれる物質により激しいアレルギー反応がおきるのです。
詳しい原因は解明されていませんが、羊水内の胎児の髪の毛や皮膚・便が原因の可能性があると言われています。症状としては急激な血圧低下や呼吸困難、血液が固まらないことが最大の特徴です。発生頻度は約3万回の分娩に1例と稀ですが、発症すると死亡率は60~80%と高いです。
胎児はお腹の中では羊膜という膜に覆われ、母体とは混じり合わない別空間にいます。しかし、出産する時に破水した羊水が子宮口にできたわずかな傷口から侵入することがあります。帝王切開の場合は、腹部や子宮内膜を切開するため羊水が母体の血管に侵入する面積が多くなります。
エマの場合、前置胎盤が原因で出血を起こし、子宮内に傷が多くあったため破水したさい、そこから多くの羊水が血中に流れこんだと考えられています。またある研究では、帝王切開の方が12倍以上も羊水塞栓症になりやすいと言われています。
エマが命がけで生んだ子はテイラーと名づけられました。
「ザ!世界仰天ニュース」
妊婦を襲うアレルギー
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