人間はどこまで賢くなれるか?|地球ドラマチック

アインシュタインの脳

アインシュタインは、相対性理論によって時間と空間に関する概念を根本から覆しました。そこから重力の働きについても解明。質量とエネルギーの関係をE=mc2という公式で表しました。

 

 

そんなアインシュタインの脳は、プリンストン大学病院に保存されています。1955年にアインシュタインが亡くなった時、病理学者のトーマス・ハーヴィーは解剖における規定を無視しました。遺族の了承なしにアインシュタインの脳を取り出したのです。

 

ハーヴィーは脳の写真を何百枚も撮った後、240のブロックに切り分けました。トーマス・ハーヴィーはこの研究に生涯を捧げました。プリンストン大学病院での職を失った時でも、アインシュタインの脳を持って立ち去りました。

 

ハーヴィーはアインシュタインの脳と共に各地を転々とし、時折信頼できる研究者に脳の一部を送りました。1990年代に、カナダの神経科学者サンドラ・ウィテルソンも脳の断片と数枚の写真を受け取りました。

 

頭頂葉が大きい!

ハーヴィーはウィテルソンにアインシュタインの脳の断片を送りましたが、それ以上に役立ったのは写真でした。頭頂葉と呼ばれる部分に明らかな特徴が見られたのです。

 

アインシュタインの脳は、他の脳よりも頭頂葉が15%程大きかったのです。頭頂葉が大きいことにどのような意味があるのでしょうか?

 

シワが重要!

脳回と呼ばれる部分には数十億もの神経細胞が詰まっています。谷間の部分は脳溝と呼ばれます。基本的にシワが多いほど神経細胞が多く、知能が高いです。脳のシワは葉(よう)と呼ばれる領域に分かれています。

 

アインシュタインの脳で際立った発達が目立った頭頂葉は、特に重要な働きをします。アインシュタインは頭頂葉が発達していたことで相対性理論を発見できたのかもしれません。しかし、彼の天才的な知能を支えていたものは発達した頭頂葉だけだったのでしょうか?

 

楽器演奏が脳を変える!?

アインシュタインの脳は、右脳の前頭葉にも目立つ特徴が見られます。ここは左手を動かす運動に関わる領域です。アインシュタインはこの部分が非常に発達し、コブのような形になっています。子供の頃に弦楽器をならった人に同じような特徴が見られると言います。

 

 

アインシュタインは子供の頃、バイオリンを習っていました。物理学の難問にぶつかった時、アインシュタインはバイオリンを演奏して心を落ち着けていました。アインシュタインはこう語っています。

 

相対性理論は直感的にひらめいた。その直感をもたらしたものは音楽だった。

(アインシュタイン)

 

バイオリンを趣味にしていたことも、アインシュタインの優れた才能を形作る要因の一つになりました。アインシュタインは人生の経験によって脳をうまく活用する術を身につけたのです。

 

天才の脳はここが違う

アインシュタインの脳は死後トーマス・ハーヴィーによって持ち去られましたが、ハーヴィーは亡くなる前に脳をプリンストン大学病院に返還しました。部外者には公開されていませんが、神経学者のフレッド・レポアは脳の写真を手に入れることができました。ハーヴィーの遺族が写真を博物館に寄贈したためです。

 

新しい知能測定法

人類は1世紀以上に渡り知能検査によって問題を解く能力を測定してきましたが、他に良い方法はないのでしょうか?

 

脳を形作る膨大な数の神経細胞は、情報を伝達するたびに電気信号を発します。脳の表面近くにある色の濃い部分「灰白質」には多くの神経細胞が詰まっています。一方、その下の白質は縦横に張り巡らされた長い神経線維で出来ていて、異なる領域同士をつなぎます。灰白質の量だけでなく白質の伝達ネットワークも重要な役割を果たしていると考えられています。

 

これで脳が発達!

お手玉を長い間続けると、脳の一部の灰白質が増えることが研究によって実証されています。その後、灰白質だけでなく白質も増えることが分かりました。脳の働きを良くする一番の方法は使うことです。おてだまなど新しいことを覚えて脳を使うことです。

 

 

3000年先の曜日も当てる!

ジョージ・ワイドナーは、特定の日にちを言うと、それが何曜日がすぐに教えてくれます。ワイドナーは計算をしているのではなくカレンダーの形式で並んだ数字が見えるため、日付を探して曜日を確認しているだけだと言います。

 

現在、ワイドナーは数字やカレンダーの日付を散りばめた絵画を制作し芸術家として成功してます。しかし、少年時代の彼は学校生活にうまく適用できず苦しんでいました。ワイドナーは自分の殻に閉じこもり、カレンダーの日付に慰めを見出すようになりました。

 

彼がサヴァン症候群であると診断されたのは、それから数年後のことでした。

 

ある日突然ピアニストに!

サヴァン症候群は生まれつきだけでなく、怪我や病気をきっかけにして突然特殊な能力を開花させる人もいます。その一人が、ピアノの才能を開花させたデレク・アマートです。

 

 

アマートは、プールに飛び込み頭を打ち、1週間意識不明になりました。その後、頭痛と記憶障害に悩まされましたが、同時にピアノを弾きたいという衝動にかられました。彼は頭の中に白と黒のブロックが次々と浮かんできて、そのブロックに従って指を動かすとメロディーが弾けるのだと言います。

 

怪我で突然サヴァン症候群のような能力を獲得する人や、生まれつき特別な能力を持つ人がいるのはなぜなのでしょうか?

 

サヴァン症候群 脳の働き

ほとんどの人の脳は左右ともに活動しますが、ワイドナーの脳は左に偏っています。反対側の脳を遮断し、片側の脳にそなわった処理能力を全て一つの作業に使っているのかもしれません。

 

通常、脳は数百数千の作業を同時に行っていますが、それをたった一つの作業に集中させているのです。では生まれつきではない後天性サヴァン症候群の人たちはどうなのでしょうか?

 

アン・アダムズもその一人で、科学者から画家に転身しました。彼女は脳の病気で徐々に話す能力を失っていきました。しかし、それと同時に絵を描きたいという強い衝動にかられ、何百枚もの絵画を制作しました。アン・アダムズの脳では、言語の処理に関わる機能が失われた代わりに視覚の処理に関わる部分が発達していました。

この記事のコメント

  1. 匿名 より:

    是非また再放送してください。