アメリカ合衆国に近代文明をかたくなに拒む人たちがいます。彼らがモデルとなったのは1985年に公開されたハリソン・フォード主演の映画「刑事ジョン・ブック目撃者」。移動には車ではなく馬車を使い、電気は使用せずテレビもラジオもありません。食事は完全自給自足。彼らは「アーミッシュ」と呼ばれるキリスト教徒です。
アーミッシュの多くは18世紀頃にドイツから移住してきたキリスト教徒たちです。アーミッシュの人口は全米で20万人以上。キリスト教の教えに従い近代文明を拒否したライフスタイルを貫いています。多くはオハイオやインディアナの農村地で暮らしています。
アーミッシュは教えによって戒律の厳しさに段階があります。必要に応じて文明を受け入れているアーミッシュもいます。厳しさの段階は聖書の教えの解釈の違いです。コミュニティによっては生活が良くなる文明を受け入れている場合もあります。アーミッシュが守っているのは質素な生活です。
アーミッシュの暮らし
取材に協力してくれたのはナオミさんと夫のレイさん、息子のロニーくん。家には電気を使わないオリジナル冷蔵庫やオリジナル洗濯機などがあります。彼らが電気の代わりに使っている天然ガスはコミュニティごとに採掘し各家庭に分配していると言います。電気は近代文明から距離をおいた質素な生活というアーミッシュの教えに反するため、家にはテレビも電話もありません。
アーミッシュの考え方は、独自のカリキュラムが大きく影響しています。アメリカの義務教育は9年ですが、アーミッシュは8年。アーミッシュ専用の教科書を使い、馬の乗り方など生活に必要な教育だけを受けています。こうしてアーミッシュの考え方や価値観を子供たちに教え、外の世界の誘惑から守っているのです。
多くの家ではポニーを飼っていますが、幼少期から接する事で優しさや責任感を身につけるのだと言います。
アーミッシュは「ラムシュプリンガ」という時期があります。ラムシュプリンガとはドイツ語で「遊びまわる」という意味。16歳から成人になるまで一般の若者と同様の経験をし、その後アーミッシュとして生きていくか現代文明を受け入れ一般のアメリカ人として生活していくかという選択権が与えられます。それでもラムシュプリンガ後にアーミッシュに戻る若者は90%以上にもなるといいます。
厳格なアーミッシュ
厳格なアーミッシュの人々は「見た目にこだわってはいけない」という教えを忠実に守り、外壁などの塗装が剥がれたままの家に住み、舗装されていない道で生活を送っています。着ている服も黒やグレーが多く暗い印象です。
ジェイコブさん一家は最も厳格なアーミッシュの暮らしをしています。電気はもちろん禁止、水は雨水を石でろ過して利用。水は貴重なためお風呂は週に1度しか入りません。家の中の家具はほとんどが手作りです。また洋服も家も手作りです。彼らは外の世界を遮断するかわりにコミュニティのつながりを大切にしています。
アーミッシュの重要な収入源は家具です。丈夫な上に安価で手に入るため、とても人気が高いです。十数年前まで、ほとんどのアーミッシュは農業で生計を立てていましたが、現在は家具作りや建築業などで生計を立てるアーミッシュが増えています。ジェイコブさんの奥さんと娘は手作りのカゴを売っています。
「不思議探求バラエティー ザ・世界ワンダーX」
この記事のコメント