ジョー・パワーは、亡くなった人と交信することが出来るというイギリスで有名な霊媒師で、ジョン・レノンの霊とも交信したことがあると言います。
世界的メンタリストであるダレン・ブラウンは、自称霊能力者ジョー・パワーの仕事に同行。ジョー・パワーの元には死者の霊と交信したいという人から次々と依頼がやってきます。客はジョー・パワーのマネージャーがチョイスしたものでヴァンダという女性。値段は1回40ポント(約6000円)です。
ジョー「7という数字が見えます。ご兄弟、、、あ、子供たちでしょうか?」
ヴァンダ「そうです。」
ジョー「7人の子供がいる?」
ヴァンダ「そうです。います。」
ジョー「でもそのうち2人はすでに亡くなっていませんか?」
ヴァンダ「その通りです。」
ジョー「それから女性の姿が見えますね。お母様でしょうか?亡くなっていますか?」
ヴァンダ「はい。」
ジョー「お母様はあなたに辛かったけどよく頑張ったねと言っています。あとスープが見えました。豆とハムのスープですね。」
ヴァンダ「何てこと!母は料理が下手で唯一得意だったのが豆とハムのスープだったんです。」
この時のジョー・パワーに怪しい所はありませんでした。数日後、ジョー・パワーの霊能力ショーをダレン・ブラウンも見に行きました。観客の多くはジョー・パワーのショーに何回も来たことのある常連です。個人的な事情もある程度分かっているはずです。
ジョー「あなたの身近に自殺された方がいますね?」
客①「はい」
ジョー「亡くなったご主人が心配していますよ。腰が痛むんじゃないですか?」
客②「はい」
ジョー「膝も痛むでしょう」
客②「はい」
ジョー「あなたの親戚にジーン、、、いやデビーという名前の方はいますか?」
客③「おばがデビーです」
このショーは心理学的な会話のテクニックを使ったものでした。
ダレン・ブラウンは、イカサマ超能力者を研究しているリチャード・ワイズマン教授と共にショーを撮影したビデオを見返しました。そこには人の心を操る数々のテクニックが隠されていました。
テクニック①バーナムステイトメント
言葉は聞きなれませんが、至って初歩的なテクニックです。相手の外見などから判断して当てはまりそうなことを言うだけです。
ショーで「腰が痛むんじゃないですか?膝も痛むでしょう?」といったのは客②が老婆であったからです。お年寄りの女性は、だいたい足腰に何かしら問題を抱えています。それをさも霊から聞いて知った特別な事情のように話していたのです。
テクニック②反応で変える
ジョーは「あなたの親戚にジーン、、、いやデビーという名前の方はいますか?」と言っています。これは相手の反応を見ながら名前を変えているのです。ジーンで反応がなかったからデビーというように。しかし、そうとは知らない客③は、この人は私のことを分かっていると思い込んでしまったのです。
このように客がジョーを一旦信用してしまうと、とんでもないことが起こります。
テクニック③都合良く考えてくれる
ジョー「ポールという知人がいますか?」
客④「ポーリンという知人がいます。」
客④は「ポール」と言われ、頭の中で近い名前の知人を探しました。本当は全く当たっていないのですが、ジョーを信じる観客たちは彼の言葉をいいように解釈し、何でも当たっていると思ってしまうのです。
ジョー「5という数字が見えます。家族、兄弟でしょうか?」
客⑤「女の子が5人、男の子が1人います」
この場合、普通は6人兄弟と言います。しかし、ジョーの言った「5」という数字に意味があると考えてしまうと、女の子の数を言い当てたんだと思ってしまうのです。
最後の対決
ジョー・パワーと全く接点のない依頼者を番組で用意。依頼者の女性パムが会いたい人は乳がんで亡くなった姉です。死んでも絶対に会いに来ると約束していたそうです。
ジョー「男性が見えますね。お父様は亡くなっていますか?」
パム「はい」
これはテクニック①バーナムステイトメントを使ったもの。パムくらいの年代の女性なら父親が亡くなっている可能性が高いです。
ジョー「お母様も亡くなっていますよね?何か5という数字が見えます。兄弟、家族、5人のグループについて心当たりは?」
パム「ありません」
ジョー「じゃあ親戚の中にジーニーかジェーンという名前の方はいますか?」
パム「いません」
ジョー「おじい様の親戚とかさかのぼっても?」
パム「いないと思います」
ジョー「お父様とお母様はそばであなたを見守っていますよ。あなたに神の祝福を。ありがとう。」
パム「ちょっと待って私に会いたいという人がいるはずです。」
ジョー「ま、亡くなった方にもおりてくるタイミングがありますから」
そういってジョーは逃げるように立ち去りました。その後ジョーはダレン・ブラウンに向かって意味不明な発言を連発しました。
それから数週間後、驚くべき事実が発覚しました。始めにジョー・パワーに連れて行かれた依頼者ヴァンダですが、隣にジョーの姉妹が住んでいることが発覚。ジョー自身が依頼者に会ったことがなくても、彼女について詳しい情報を得ることができたのです。
この番組は放送後に大変な反響を呼び、霊能力者ジョー・パワーの評判はかなり落ちたと言います。しかし、ショーに来ていたような熱烈なファンの人たちはそれでも彼から離れなかったそうです。また、この番組でジョーに興味を持った人もいて、新しいファンも増えたそうです。
「世界まる見え!テレビ特捜部」
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