太陽フレア 生命の脅威か?母なる恵みか?|サイエンスZERO

現代社会に脅威をもたらす太陽フレアとは?

太陽は地球と同様、天体自体が磁石のようになっています。しかし、その磁力の流れを示す磁力線は地球のように規則正しく並んでいません。その理由は太陽独自の自転にあります。

 

ガスでできている太陽は、自転速度が緯度によって異なります。赤道付近で25日になのに対し、極付近では30日。このため内部を南北に走る磁力線は引き伸ばされ、次第に糸巻きのように巻き付いていきます。

 

 

磁力線は、磁力の強い部分が浮かび上がる性質があります。この磁力線と太陽表面の接点にできるのが黒点です。黒点からは複数の磁力線が出ています。この磁力線が、磁場の変化によって動き接触すると爆発が起きるのです。フレアが起きるとプラズマが飛び出します。プラズマは電気をおびた粒子の塊です。

 

このプラズマが地球に到達すると、電離圏の地場が乱され大きな電流が流れます。これにより、地表の地場も乱されます。送電線に大量の電流が流れ変電所が破壊されるのです。

 

太陽フレアで飛んでくるのはプラズマだけではありません。代表的なものがX線放射高エネルギー粒子線コロナ質量放出(プラズマ)です。

 

太陽フレアの発生を予測せよ!

これまでと全く違った方法でフレアの発生を予測するシステムの開発が日本で進められています。京都大学宇宙ユニットの村主崇行さんは、最新の観測衛星のデータを使って太陽フレアの予測システムを開発しました。それがNASAの人工衛星SDOです。紫外線や可視光など様々な波長を観測できます。

 

SDOの観測データの中で村主さんが注目したのが、太陽の地場の状態が分かる画像です。実は、黒点は磁力線の向きによってN極とS極に分かれます。SDOの画像は、黒点のN極とS極の状態を色で見ることができます。この黒点のN極とS極がどのように分布しているかがフレア発生予測の重要なポイントになると言います。

 

黒点は、N極とS極がハッキリ分かれて発生するベータ型、そして複雑に入り組んで発生するデルタ型があります。この型の違いでフレアの発生頻度は大きく異なります。デルタ型は、ベータ型に比べて盛んに爆発を繰り返しています。フレアは黒点がデルタ型の時に数多く発生しているのです。

 

そこで活用したのがSDOのビッグデータです。25万枚の観測データをコンピューターに入力。黒点がどんな状態の時にフレアが発生したかを学ばせます。こうして現在の太陽の画像が送られてきたとき、どのような規模のフレアが発生するかコンピューターが予測できるシステムを作りました。

 

現在、このシステムは24時間以内にフレアが発生するか予測をしていますが、将来的にはいつ発生するか正確な時間を予測したいと村主さんは考えています。

 

太陽フレアが生命誕生のカギを握る!?

NASAゴダード宇宙飛行センターのウラジミール・アイラペティアン博士が、2016年5月に発表した一つの論文が大きな注目を集めました。何と地球生命誕生のカギになったのが、若い太陽の活動にあったという全く新しい説でした。

 

約40億年前、地球で初めての生命は海で誕生したと考えられています。しかし、そこには2つの大きな謎がありました。

 

1つ目の謎は、生まれてから間もない地球になぜ水が固体ではなく液体の状態で存在することが出来たのかということです。40億年前の太陽は誕生初期だったので、今と比べて70%程しかエネルギーを発していなかったと考えられています。このような条件では地球は0℃以下。いわば氷惑星のはずでした。

 

しかし、この頃から水は氷ではなく液体で存在していました。これは「暗い太陽のパラドックス」と呼ばれ、大きな謎だったのです。

 

2つ目の謎は、生命そのものです。DNAやRNAのもとになる窒素を、どうやって原子に分解したかということです。窒素は生物のDNAやたんぱく質を作るのに欠かせない元素です。ところが、この頃の地球には窒素は分子の状態でしか存在しなかったことが知られています。実は窒素は分子の状態では結合力が強いため、他の元素と反応することがありません。このままだと、たんぱく質などは出来なかったはずです。何によって窒素が原子まで分解され生命が誕生したのか大きな謎だったのです。

 

ウラジミール・アイラペティアン博士は、この2つの謎の答えが誕生初期の太陽に見られたスーパーフレアだと考えました。スーパーフレアとは、X100クラス以上の超巨大なフレアのことです。これほど強力なエネルギーが何度も発生すれば、窒素分子を原子に分解できるかもしれないと、地球でどんなことが起きるのかシミュレーションしました。

 

その結果、窒素分子が原子に分解することが分かりました。そして、大気中の二酸化炭素やメタンなどと反応し、様々な窒素化合物ができることが分かりました。これらの化合物からDNAやRNA、そしてたんぱく質が作られ生命が生まれていったと言うのです。

 

さらに、出来上がった化合物の中でウラジミール・アイラペティアン博士が特に注目したのが亜酸化窒素。亜酸化窒素とは、温室効果ガスの一種です。地球は太陽光によって温められると赤外線を出します。亜酸化窒素はその赤外線を吸収し、一部を地球に戻します。この効果が亜酸化窒素は二酸化炭素に比べて300倍もあります。こうして地球が温められることで水が液体で存在したのだと考えています。

 

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