逗子ストーカー殺人事件の真実|ザ!世界仰天ニュース

2012年11月6日、神奈川県逗子市の住宅で三好梨絵さん(当時33歳)が元交際相手の男によって殺害されました。

2004年10月、福岡の大学を卒業して東京の広告会社に就職した梨絵さんは世田谷区内の体育館でバトミントンサークルに参加しました。これが男(32歳)との出会いでした。男は爽やかなスポーツマンタイプで女子高で教師をしていました。梨絵さんと男はすぐに仲良くなり交際がスタートしました。

しかし、穏やかな時間は長くは続きませんでした。男はそれまでとは全く違った別の一面を見せるようになったのです。デートに少しでも遅れると一日中怒り続け、楽しいはずの時間が台無しに。ヒステリックで嫉妬深い面があったのです。

男は東京都内の家庭に次男として育ちました。大学卒業後は就職に失敗。その頃から精神的に不安定になっていました。教員として教壇に立つことはあったものの非常勤講師。雇用期間が終われば別の学校へという不安定な立場でした。これは人並み以上に高い男のプライドをズタズタにしていきました。

梨絵さんは男と付き合いきれないと思いつつも、何とか支えになってあげたいとも思っていました。そんな日々が1年半も続いた頃、同じ職場の先輩である三好さんに相談にのってもらうように。

男と交際を始めて2年経った2006年6月28日、梨絵さんは別れを切り出しました。しかし、男は全く相手にせず7月11日にもう一度別れを切り出し2人は別れることになりました。

しかし、1週間後「お前だけが幸せになるのは許せない」「人生の終止符をうつ」というメールが男から届きました。男は公園で酒と薬を浴びるほど飲み自殺未遂

2006年9月1日、梨絵さんは心療内科を受診。医師から男がやっていることはストーキングだと言われ、電話番号や仕事を変えて逃げるように薦められました。

梨絵さんは医師の意見に従って引越しし、男の電話番号を着信拒否しました。その後、梨絵さんは2年の交際を経て2008年7月に三好さんと結婚。神奈川県・逗子市へ引越しました。

しかし、仕事では旧姓を使い習い事のプロデュースを始め、友人や仕事の繋がりを広げるためソーシャルネットワークを始めました。

すると2010年12月、「裏切りの罪は重い」「お前だけ幸せになりやがってよ!」と男から再びメールが届き始めたのです。

実はこの空白の2年間で男は山中で自殺を図っていました。その後、教師を辞め自宅に引きこもり梨絵さんのソーシャルネットワークを監視。そこで梨絵さんの結婚を知ってしまったのです。男からのメールは2週間で2000通も送られてきました。

2010年12月9日、梨絵さんは逗子警察署に相談に行きました。相談を受け逗子警察署は家族を介して男に口頭注意を行いました。すると、男はまたもや自殺を図って入院しました。

一方、梨絵さんは自宅の表札を消し住宅地図に載っている名字も消しました。男には絶対に新しい住所と名字を知られたくなかったため、名刺やソーシャルネットワークをペンネームに変えメガネをかけることにしました。

一方、男の行動はエスカレートし2011年4月5日、梨絵さんが以前勤務していた会社に夫を呼び出す電話をかけました。2011年4月7日、梨絵さんは再び逗子警察署に相談に行きました。逗子署は脅迫事件として捜査することを決め、梨絵さんの自宅に緊急通報装置を設置しました。

男は出会い系サイトに梨絵さんの写真と実名を掲載。さらに、梨絵さんが以前勤めていた会社に梨絵さんの名前でピザを100人分も注文。仕事のパートナーや知り合い、福岡に住む梨絵さんの兄の勤め先にまで大量のピザや寿司の注文をしたのです。

その頃、梨絵さんの事件捜査は生活安全課から刑事課へ引き継がれました。2011年6月1日、逗子警察署は脅迫容疑で男を逮捕。しかし、男を連行する車の中で梨絵さんの住所や新しい名字が書かれた逮捕状の全文を読み上げたのです。絶対に知られたくなかった新しい名字と住所が警察から漏らされてしまいました。

梨絵さんはNPO法人ヒューマニティの理事長である小早川明子さんに相談に行きました。小早川さんはストーカー被害者、加害者のカウンセリングを行うストーカー問題のスペシャリスト。小早川さんは梨絵さんに具体的なアドバイスをしました。

男は起訴され懲役1年、執行猶予3年の保護観察処分が下されました。男の釈放を受けて警察署は梨絵さんの自宅に防犯カメラを設置。同時に自宅周辺のパトロールを始めました。

釈放された男には再犯の恐れがあるとして保護観察所から特別遵守事項が課せられました。その内容は被害者に一切接触しないこと。接触は訪問や電話、メールも含まれていました。違反した場合は執行猶予が取り消される可能性がありました。

ところが、電話やメールをしただけで執行猶予が取り消されるといった特別遵守事項が課せられていることを梨絵さんも警察も知らなかったのです。男は梨絵さんの正確な住所を特定するためインターネットの質問掲示板を使っていました。

2012年3月9日、男に動きがないことから逗子署は捜査を終了。梨絵さん宅に設置した緊急通報装置と防犯カメラを取り外しました。しかし3月24日、再び男から大量のメールが届くように。ところが、大量のメールに「殺す」などの脅迫的文言を一切使っていなかったため事件化することが出来ませんでした。その後、またメールは来なくなりました。

その頃、梨絵さんは逗子で会社を立ち上げようとしていました。

2012年11月5日、男は千葉県にある探偵事務所に梨絵さんの住所の調査を依頼しました。実際に動いたのは個人情報を聞き出す仕事を請け負う下請け業者でした。業者が電話をかけたのは逗子市役所。梨絵さんの個人情報には閲覧制限がかけられていましたが、担当者は詳しい住所を読み上げてしまったのです。依頼を受けてからわずか20分で梨絵さんの情報は流出しました。

そして2012年11月6日、梨絵さんは自宅にやってきた男に背中と首を刺され殺されました。その直後、男は梨絵さん宅の2階の手すりで首を吊って自殺しました。

この事件を機に社会は大きく動きました。警察庁では逮捕状の請求時に個人情報が漏れない事を配慮するよう全国の警察に指示。大量のメール送付も問題化されました。国会でストーカー規正法にメールによる嫌がらせも新たに追加するよう改正され規制が強化されました。

さらに、警察庁はストーカー事件で保護観察付きの執行猶予判決を受けた加害者に対して、警察と保護観察所が情報を共有する仕組みを導入。総務省は個人情報の問い合わせがあっても回答しないよう全国市町村に通達しました。

「ザ!世界仰天ニュース」
逗子ストーカー殺人事件の真実

この記事のコメント