この事件は当時、一大センセーションを巻き起こし数多くの特集記事が組まれました。逮捕されたのはデビュー間近の若手歌手でした。
事件が起きたのは1967年。青年歌手Xは将来が期待されたデビュー直前でした。歌手Xは関西出身で、歌手を夢見て上京し芸能事務所入り。ルックスと歌唱力の高さで将来のスター歌手との呼び声も高く、デビュー目前にも関わらずマネージャーがつきました。
デビュー直前、歌手Xはマネージャーに夜の銀座に連れ出されました。当時、丸の内オフィス街と共に高度経済成長の象徴として輝いていた銀座。夜は上流階級のビジネスマンが集う華やかな社交場として不動のステイタスを誇っていました。
マネージャーに連れられて訪れたのは銀座の人気クラブでした。彼は歌手Xに一流の雰囲気、東京の気分を味合わせようとしたのです。そこで歌手Xは悪夢の出会いを果たしました。その人物とはクラブのマダムA。マダムAはその圧倒的な美貌と立ち振る舞いで人気をはくし「銀座の女王」と呼ばれていました。
美人でカンが良く、座持ちもうまい。この商売のために生まれて来たというようなところがありましたね。
(当時の記事より)
マダムAは石原裕次郎や力道山らが通った当時最高のクラブ「ニューラテンクォーター」で各界の大物を虜にしトップホステスとして君臨。その後、独立しママとして銀座に乗り込んできた夜の世界では有名人でした。
そんなプロの女といきなり邂逅してしまった歌手X。そこで紹介されたのがホステスZ。それは青年にとってあまりにも甘美な世界でした。
歌手XはホステスZに夢中になり、連日夜の銀座に足を運ぶようになりました。
そんなある日のこと、歌手Xが自宅にいると逮捕されてしまったのです。マダムAを殺した容疑でした。全く身に覚えのない嫌疑をかけられたのです。
実は数日前、隅田川で切り刻まれた女性の胴体の一部が見つかっていました。詳しく調べたところマダムAの胴体だと判明しました。歌手Xは、このバラバラ殺人に関わった容疑で逮捕されたのです。しかし、全く身に覚えのない容疑でした。
歌手XはホステスZが怪しいと疑いました。実は、マダムAはホステスZに店の外でも客と深い付き合いを強要していたのです。
やり方がキタナかったもの。女たちに客とやらせといて、その客は自分があとで取ってたんだから。
(当時の記事より)
ホステスZには不本意な営業をさせられている恨みがあったのです。しかし、逮捕されたのはXのマネージャーでした。
マダムAが隅田川に遺棄されたのは金曜日の夜でした。その日、Xはマネージャーと朝から仕事をしていました。レコード会社や音楽関係者に1日かけて挨拶に回りました。そして夜に2人でマダムAの店へ。しかし、店へ行くとマダムAと連絡が取れないとのことで店は休みでした。
そこで行き先を映画館へ変更。その夜はマネージャー宅に泊まり朝まで飲み明かしたと言います。これではマダムの遺体を遺棄する時間などありません。
しかし、実はマネージャーと挨拶回りをしていた時、マネージャーは寄りたい所があると都心から少し離れた場所へ。そして歌手Xに穴を掘るのを手伝うように言いました。死んだ飼い犬を埋めたいというのです。
犬の亡骸だと思っていたビニール袋は、マダムAの遺体だったのです。マネージャーは前日にマダムAを殺害しバラバラに切断。その一部を歌手Xに手伝わせて地中に埋め、残りの一部を隅田川に捨てたのです。
しかし、なぜマネージャーがマダムAを殺害したのでしょうか?
実は2人は長く男女の仲にあり、マネージャーはマダムAに現在の価値で1000万円を超す大金を援助していました。しかし、マダムAは政財界の一流の男たちと交際していました。そんな彼女に嫉妬心を抱いたマネージャーにマダムはこう言い放ったのです。
プライドをズタズタにされたマネージャーは、マダムAを殺害。捨てに行くため切り刻みました。
殺人をおかしたマネージャーに下された判決は無期懲役。そして未来のスター候補と言われた歌手Xは、この事件にショックを受け芸能界を去りました。
若き青年が大都会で抱いた歌手になる夢は、夜の街の深い闇で泡と消えたのです。
「爆報!THEフライデー」
実録!名前の出せない芸能界事件簿 第11弾
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