冬眠からの目覚め
冬の間、雪の約20cm下でマルハナバチの女王は冬眠しています。働きバチは冬になる前にみんな死に、たった1匹で春が来るのを待ち続けます。女王バチの体液にはグリセロールという成分が含まれているため、凍死することはありません。
雪が溶け始めると女王バチは目覚め、日の光を求めて地中から這い出します。マルハナバチの体には黒と黄色の毛がはえています。マルハナバチは、気温が2℃を超えると飛ぶことが出来ます。
女王バチは長い間何も食べていません。エネルギーを補給するため急いで花を探します。しかし、冬眠から目覚めた最初の1日を無事に生き延びられる女王バチはほんの一握りです。
蜜を吸えるヒミツ
蜜や水を飲むのに役立つ細長い器官は口吻(こうふん)と呼ばれ、折りたたむことができます。口吻の長さは蜂の種類によって異なります。
巣を探して…
花の蜜を吸って体力を取り戻した女王バチは、次の難題に挑みます。新たな棲家を探すのです。
マルハナバチは土の中や鳥の巣箱などに巣をつくります。理想的な場所はネズミや鳥、いたちなど他の動物が作った巣です。巣を見つけたら自分の群れ、コロニーを作ることが出来ます。
巣作り開始
まず、花の蜜を入れた壷を用意します。天気が悪くて外を飛べない時でも壷からいつでも蜜を吸うことが出来ます。
マルハナバチは、ミツバチのような六角形の巣房を作りません。女王バチは体からロウを出すと、大あごを使って小さな丸いカップをいくつも作ります。そして、そのカップに卵を産み付けます。女王バチは長い冬眠に入る前、秋のうちにすでに交尾を終えています。
カップにはそれぞれ5~12個の卵が産み付けられます。1つの卵から1匹の幼虫が誕生します。卵から孵った幼虫は20日以内にサナギに。女王バチは卵の状態を念入りに調べてから卵が詰まったカップに蓋をします。
働きバチの誕生
働きバチが誕生すると、女王バチに課された仕事はひたすら卵を産み続けることだけ。女王バチは二度と巣を離れることはありません。
高山地帯にも生息
マルハナバチの仲間には、特に寒さに強い種類がいます。セイヨウオオマルハナバチは、標高2700mの地点にもコロニーを形成します。マルハナバチは北半球全域に生息していますが、涼しい気候を好む傾向があるようです。
マルハナバチが厳しい環境でも生息できるのは、進化の過程で環境に適応していった結果です。
クマに襲われる!
環境に適応し、毛によって寒さから守られているのはマルハナバチだけではありません。ヒグマもです。ヒグマは通常植物を食べますが、ハチミツが大好きです。ヒグマの嗅覚はとても敏感で、何百メートルも離れた場所からでもハチミツのニオイを嗅ぎ付けられます。
マルハナバチがいくら針で刺しても効果はありません。ヒグマは甘いハチミツと一緒に幼虫やサナギも一気に食べます。
毒の花との密な関係
ナガマルハナバチの仲間は、アルプス山脈の標高800m~2500mの場所にしか生息していません。口吻の長さはヨーロッパに生息するマルハナバチの仲間の中でも最長です。
アルプス山脈には有毒なトリカブトの仲間が何種類か生息しています。この種はトリカブトからしか蜜を集めません。
一方、トリカブトにとっても蜜を吸う昆虫はこのハチだけです。つまりこのトリカブトは、ナガマルハナバチの仲間のこの種にだけ受粉を頼っているのです。
こうした関係にはリスクも伴います。もし片方が消えてしまえば、もう片方も生き残れないからです。
コロニーの終焉
夏の終わり、マルハナバチの死骸が道端で数多く見られるようになります。マルハナバチは1日に約150mgの糖類を必要とします。夏の終わりに食糧が不足することで、多くのマルハナバチが命を落としアリの餌食になります。
危険は巣の外だけではありません。ハチノスツヅリガの幼虫は、マルハナバチにとって最も危険な害虫です。ハチノスツヅリガの幼虫は、マルハナバチの巣の中でロウを食べ糸を吐きサナギになります。そして、蛾に成長すると巣を去ります。
蛾やダニなどの害虫が巣の中で急激に増えると、コロニーの存続が難しくなります。巣の中の糞や老廃物をキレイにするダニはマルハナバチの役に立つこともありますが、増えすぎるとマルハナバチのコロニーは破壊されます。ダニに寄生されたマルハナバチは飛べなくなってしまうからです。
「地球ドラマチック」
マルハナバチの一生 女王バチの子育て
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