バレエまるわかり「ロメオとジュリエット」|ららら♪クラシック

シェイクスピアの戯曲をもとにロシアのプロコフィエフがてがけたバレエ「ロメオとジュリエット」誰もが知る愛の悲劇をもとにドラマティックバレエという新たな芸術を作り上げました。

ドラマティックバレエの傑作

舞台はイタリア・ヴェローナ。モンタギュー家の御曹司ロメオとキャピュレット家の令嬢ジュリエット。対立する家の者同士でありながら恋に落ちます。しかし、ロメオはキャピュレット家の人間を殺し、街を追放されることに。運命の歯車によって悲劇的な結末をむかえる物語です。こうした大人向けの物語をバレエにすることは、それまでなかったことでした。

それ以前のクラシックバレエの題材は主におとぎ話でした。例えば「白鳥の湖」は王子と白鳥の姿になった姫との恋物語。「眠りの森の美女」は魔法使いの呪いで100年間眠ったままのお姫様が主人公。いずれもこの世とはかけ離れた夢のような世界を描いています。

それに対し「ロメオとジュリエット」がテーマとするのは、逆境の中で苦しむ恋人たちの葛藤。誰もが共感できる普遍的な愛と悲しみを描きます。喜怒哀楽をリアルに表現した作品は「ドラマティックバレエ」と名付けられ、20世紀の一大潮流となりました。

ドラマティックバレエとは

クラシックバレエはストーリーの部分と踊りの部分がハッキリ分かれていて、この2つが合体してできています。これが20世紀にはいると、ストーリーだけというものと、踊りだけというものに分かれました。

踊りだけのほうは一般的に「アブストラクトバレエ抽象バレエ)」と呼ばれています。一方、ストーリーを全てダンスで語るのが「ドラマティックバレエ物語バレエ)」です。

大衆のためのバレエを

「ロメオとジュリエット」が生まれたのは1930年代のロシア(ソビエト連邦)です。この時代は一般大衆に分かりやすいもの理解できるものでないとだめでした。美術などでも抽象画の人たちは捕まり収容所送りになりました。

その中で出てきたのが「ロメオとジュリエット」です。「ロメオとジュリエット」は3つの点で革新があったと言われています。

革新❶台本

新たなバレエの構想を練っていたセルゲイ・プロコフィエフ。当時、ロシアで人気だったシェイクスピアの戯曲から「ロメオとジュリエット」のバレエ化を思い立ちました。

台本を作るさいプロコフィエフはクラシックバレエの定番だった踊りだけを見せるシーンをカットしました。そして、全編ストーリーを描くことに徹したのです。

革新❷音楽

作品の中で最も有名な音楽が「キャピュレット家の舞踏会」舞踏会を描く音楽です。ここには、クラシックバレエにはなかった手法が隠されています。単純な和音で作られていますが、それを分解してメロディーに。さらに、はねるリズム(付点のリズム)が加えられています。

この付点のリズムというのがこの曲の間じゅう執拗になり続けるんですね。ここのシーンというのは、単純な楽しい舞踏会ではなく、その背後では何か恐ろしいことが起こるのではないかという予感をさせるわけです。

(玉川大学教授 野本由紀夫さん)

さらに、フレーズの終わりは不協和音が連続します。

モンタギュー家とキャピュレット家が全く打ち解けることなく対立を続けている憎しみあっているということが暗示されているのではないでしょうか。初めて見た人でも単純に非常に明快に音楽に入っていけるのに、いつの間にか心理を操作されていく。

(玉川大学教授 野本由紀夫さん)

プロコフィエフは、ロシア映画の最初期に盛んに音楽を手掛けた作曲家の一人です。実験的な手法を次々と生み出しました。

映像の中では表現しつくせないような情景ですとか群衆の心理ですとか、そういったものを描き出そうとしたんですね。つまりそれは、今日の映画音楽ですとかドラマの音楽に通じる、その最初の先駆者なんですね。

(玉川大学教授 野本由紀夫さん)

革新❸振付

踊りの中で感情豊かな演技をより強くうちだすことが「ロメオとジュリエット」の革新でした。

それ以前の場面には、物語を進行するための「マイム」というテクニックがありました。身振り手振りで登場人物の言葉を表現するのです。約束事を知らなければ理解できない表現です。「ロメオとジュリエット」はこのマイムをやめてしまいました。

「ららら♪クラシック」
30分バレエまるわかり「ロメオとジュリエット」

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