世界自然遺産に登録されている小笠原諸島の1年の平均水温は約24℃と暖かく穏やかな海が広がっています。この海に毎年12月頃になると巨大なクジラたちがやってきます。
ザトウクジラは体長13m、体重は30トンを超えます。クジラは哺乳類なので約15分おきに水面に上がり頭の上にある鼻で息継ぎをします。
サンゴの海で子育て
ザトウクジラの主な繁殖地は北半球ではハワイや小笠原諸島など、南半球では南太平洋の島々など。ザトウクジラの赤ちゃんは1日に500リットルものお乳を飲み1ヶ月で体重は2倍近くにもなります。
暖かい海での暮らしは子供にとっては快適そのものですが、お母さんにとっては辛い日々でもあります。出産後4ヶ月もの間、お母さんはほぼ飲まず食わずでお乳を与え続けるからです。
暖かい海は栄養が少なく、食べ物となるプランクトンや小魚があまり多くありません。探し回るのも効率が悪いので、あえて食べずに子育てに専念するようになったのかもしれません。
しかし、絶食で体重は3分の2にまで減ってしまいます。体力が限界に近づく頃、お母さんは子供を連れて食べ物探しの旅に出ます。目的は冷たい海。毎年夏になる前に移動を始めます。
そこは動物プランクトンや魚など、ザトウクジラの食べ物が溢れる楽園です。その豊かな海で食事をして子育てで失った体力を回復させ、1年分の栄養を蓄えます。
オスの競争
ザトウクジラのオスはメスを巡っていろいろな勝負をします。速く泳ぎ続けることで誰が一番体力があるかを競ったり、鼻から泡を出す量で誰が肺活量が大きく体力があるかを競ったり、ジャンプ力(着水した時の音の大きさ&泡の量)を競ったりします。
しかし、これらで勝負がつかない場合、最終決戦・乱闘へと突入します。
恋の季節、オスたちはひたすら戦いにあけくれます。そして勝者のオスだけがメスに寄り添うことが出来ると言われています。
しかし、メスにある儀式を通して気に入ってもらわないとオスの恋は実りません。それは「ソング」と呼ばれる鳴き声を出すことでプロポーズすること。
ザトウクジラの歌は、繁殖地ごとに特徴があり歌いつがれると考えられています。
オスは出来るだけ多くの子孫を残すために、メスと結ばれるとすぐに次の相手を探し始めます。そして、その途中に出会ったオスたちと再び恋のバトルを繰り広げます。
熱血スイミング教室
生後3ヶ月を過ぎると、ザトウクジラは潜る練習を始めます。潜るこつは尾びれを高く上げること。子供はお母さんの真似をして尾びれを上げようとしますが、子供はそれほど筋力が発達していないため、なかなか尾びれを上げることが出来ません。
しかし、潜れるようにならないとサメなどの天敵から逃れることが出来ません。
長旅へ
小笠原が初夏を迎える頃、親子は食べ物を求めて旅に出ます。潜水の訓練も大詰めです。冬にお母さんが次の子供を生む前に親子は別れて、それぞれの道を歩み始めます。
いつの日かオスの子供はたくましく成長し、ライバルたちと激しい恋のバトルを繰り広げていくことでしょう。この荒々しい姿にこそ、クジラが脈々と命を繋いできた歴史が刻まれているのです。
「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」
大迫力!巨大クジラ恋のバトル
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