森から海へ 命がけの旅
インド洋に浮かぶクリスマス島を覆う鬱蒼とした熱帯雨林。アカガニはこの森のいたるところに暮らしています。アカガニは直射日光と乾燥を防ぐため地面の巣穴に隠れています。
甲羅の幅は最大で12cm。クリスマス島固有のカニだと考えられています。日差しが和らぐと地上に姿を現します。アカガニは果実や葉、花など地面に落ちているものを好き嫌いなく食べます。
11月中旬、雨季が訪れるとアカガニたちが歩き始めます。海への大行進が始まったのです。
普段は森で暮らすアカガニですが、元々は海に暮らす生き物です。子孫を残すためには海に卵を放たなくてはなりません。
森から海までの道のりは最長で9キロ。アカガニの足では1週間以上もかかる長旅です。
試練を乗り越え命をつなぐ!
大行進の末ようやく海に辿り着いたアカガニは、12月上旬に海岸にほど近い森へ。
オスは子育てに欠かせない巣穴を掘ります。オスは巣穴を掘らないとメスを射止めることが出来ないのです。メスはオスより数日遅れてやってきてパートナーを探します。
しばらくするとオスだけが巣穴から出てきます。恋を成就させたオスは一足先に元々住んでいた森の奥へと帰っていくのです。オスが去ってから残ったメスは巣穴の中で卵を守ります。
12月中旬、メスはまるで示し合わせたかのように一斉に地上に姿を現します。浜辺はメスたちで埋め尽くされます。そして潮が引き始めた夜中の2時、メスたちは波をあびた瞬間に卵を放ちます。
1匹が放つ卵の数は、最大で9万個にものぼります。海に放たれた卵はすぐに殻が破れゾエア幼生と呼ばれる赤ちゃんが泳ぎだします。赤ちゃんたちは引き潮に導かれ海岸から離れていきます。
それを待っているのはジンベイザメ。ジンベイザメにとってアカガニの赤ちゃんは最高の御馳走。だからこの時期を狙って島の周りにやってくるのです。赤ちゃんの成長を支える母なる海は危険に満ちた場所でもあるのです。
1月中旬、成長したアカガニの子供たちが島に戻ってきます。子ガニの大きさは5mm程。子ガニたちは親ガニの住む森を目指して行進を始めます。
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