カブトガニ ~知られざる太古の力~|地球ドラマチック

NHK・Eテレの「地球ドラマチック」で生きた化石カブトガニ~知られざる太古の力~が放送されました。

 

生きた化石

1億5000万年前、恐竜が陸を支配し海にも巨大な生物が泳いでいた時代、カブトガニはすでに海底を歩き回っていました。6500万年前、小惑星の衝突によって地球上の生物の約80%が絶滅しましたがカブトガニは生き残りました。奇妙で不気味にも思えるカブトガニですが多くの人々を惹きつけてやみません。カブトガニの姿はまるで空飛ぶ円盤のようです。ヘルメット型の甲羅の下には先がハサミ状になった足が12本あります。そのうち10本は歩くために使われますが、一番前の一対は食料を取って口に運ぶ役割を果たしています。カブトガニは獲物を荒々しく取ることはせず死んだ魚や海藻などを食べています。年に1回の繁殖期が近づくとメスは出来るだけ多く食べるようになります。浜辺にたどり着くまでに体内で数万個の卵を作り出さなくてはならないからです。

 

人類を救う青い血液

カブトガニの大きな特徴は血液が青いことです。人間の血液には酸素を運ぶ鉄分が多く含まれ、その鉄が血液を赤くしています。ところがカブトガニの血液は鉄のかわりに銅が含まれているため色が青くなるのです。カブトガニの血液に豊富に含まれているLAL(ラル)は有害な細菌が一つでも存在すると反応し凝固します。ラルを使えば薬や医療器具の安全性がチェックできます。私たちが服用している錠剤の多くはラルでテストされています。大きな恩恵を受けているのです。

 

春は繁殖の季節

春、繁殖の時期が近づくとカブトガニは浜を目指します。産卵が行われるのは満月の夜。目や尾にある光センサーで昼と夜を区別します。年に一度の大切な儀式のため数多くのカブトガニが浜辺に集まってきます。先に到着したオスがメスの到着を待ちかまえています。こうした光景は恐竜が現れる前から繰り広げられてきました。

 

大量絶滅を生き抜いた!

4億5000万年前、カブトガニはすでに海底に生息していました。近い種である三葉虫も同じです。三葉虫やカブトガニはこの時代の海で繁栄を謳歌していました。化石によって当時の様子を知ることができます。三葉虫の化石にはしばしば奇妙にねじ曲がったものがみられます。三葉虫はカブトガニと同じく成長に合わせて脱皮をします。脱皮したてで甲羅が柔らかい時期、三葉虫は砂の中に隠れていたと考えられます。三葉虫が絶滅したのは約2億5000万年前のことです。この時代に起きたのは地球の歴史上最大と言われる大量絶滅でした。大陸は移動し大気が変化し、三葉虫を含む海洋生物の95%が絶滅しました。それでもカブトガニは生き残りました。そして6500万年前、またもや大量絶滅が起きました。小惑星が地球に激突し壊滅的な被害をもたらしたのです。地球上の生物の約80%が絶滅し、恐竜の時代は終わりをむかえました。それでもカブトガニは生き残りました。カブトガニとは一体何者なのでしょうか?

 

驚きの構造 目が5つ!

実はカブトガニはカニではありません。サソリやクモに近い生き物なのです。カブトガニは何億年にも渡って環境の変化に適応し、見た目も内部の構造も独特なものに進化しました。カブトガニの心臓は1分間に32回動きます。8つの方向に血液が流れるようになっていてエラや足、そのほかの主要な器官に青い血液が送り出されます。単純な消化器官と歯車のような形の脳があります。足でニオイを嗅ぎ分けることもできます。目も優れた機能を備えています。目は全部で5つあります。カブトガニの側眼は昆虫と同じく複眼で数百の個眼が集まったものです。それぞれの個眼にうつった画像はそのまま脳に送られます。オスは目で見て繁殖の相手を選びます。正中眼と呼ばれるもう一対の目は太陽や月の光をとらえます。お腹の目は体がひっくり返っても自分の位置を把握できるようになっています。また尾でも光を感知することができます。甲羅で覆われているため動きにくそうですが、実はとても柔軟な動きができます。

 

さまざまな護身術

体の構造は非常に複雑です。750の筋肉を駆使して歩き、エラを動かし様々な動きをします。潮の流れが速くても体が流されたりひっくり返されたりしないようにしなくてはなりません。そのために役立つのが尾です。尾剣は武器ではありません。仰向けになった体を元に戻すのに使います。小型の海洋生物の多くは潮の流れによって流されてしまいますが、カブトガニは違います。尾剣を海底に突き刺し、体が流されないように固定するのです。カブトガニの硬い甲羅は身を守るのに役立ちます。サメのような大型動物が近づいて来た時には身を隠します。

 

脚に技あり!

海底を移動しながら食料を探します。食べる時に使う小さなハサミはクモとサソリ、カブトガニだけにあるもので、3つの生き物が近い仲間であることを示しています。カブトガニは食べ物が口に入ると脳を通り抜けて胃や腸に運ばれます。カブトガニの性別は脚で見分けることができます。繁殖期にはメスの体内は数万個の卵で一杯になります。カブトガニは陸上でもエラさえ濡れていれば何日も生きることができます。

 

繁殖 メスの争奪戦

春は繁殖の季節です。カブトガニは遥か昔からある合図に反応するようになっています。満月の夜、満潮になると多くのカブトガニが浜辺に集まります。つがいの相手を見つけるためです。アメリカ東海岸に生息するカブトガニはオスの方が数が多く、1匹のメスに対して5~6匹のオスが群がります。待ちかまえていたオスはメスに飛びかかり、前足でメスの体を捕まえます。メスの体はオスよりもずっと大きく力があるので、後ろにオスがしがみついても楽々と移動することができます。メスはより優れたオスを見極めようとします。うまく相手を見つけるオスもいればふられるオスもいます。メスは少しでも優れたオスを選ぼうとしますが、次から次へとオスが押し寄せてくるので抵抗しきれなくなります。つがいの相手を見つけたオスはメスをしっかりとつかみ、くっついたまま何日間も過ごします。相手を見つけられないオスはカップルの後についてまわり、あわよくばメスを奪おうとします。

メスはオスを引きずりながら産卵のため浜辺に向かいます。浅瀬に着くとメスは産卵のための穴を掘ります。そして卵を産み落とします。エラであおって水流を起こし、卵をくぼみの中に広げます。続いてオスが精子を出します。メスの作り出す水流によって卵の上にふりかかります。産みだされたばかりの卵を狙う魚から卵を守るのは簡単ではありません。相手を見つけられなかったオスはカップルの卵に自分の精子をかけ受精させるチャンスを狙います。産卵が終わるとカブトガニは海へと帰っていきます。

 

卵の周りは敵だらけ

産み落とされた卵には多くの危険が待ち受けています。カブトガニの卵は砂粒とほぼ同じ大きさです。数多くの卵のうち無事にかえるのはほんの一握りです。カブトガニの卵の敵は鳥です。

 

細菌を検知 青い血液

カブトガニは様々な危険をのりこえ何億年も生き抜いてきました。しかし近年、新たな災難がふりかかるようになりました。人間による捕獲です。毎年、50万匹のカブトガニが研究室で青い血液を採取されています。鉄の代わりに銅が含まれる青い血液は細菌だらけの古代の海に耐えられるよう進化した血液には驚くべき特徴が秘められています。カブトガニの血球は細菌に触れると固まり、細菌の侵入を防ぎます。素早く固まるので1時間以内に細菌の存在を確認することができます。抜き取る血液の量はカブトガニの全血液の30%です。カブトガニの血液は巨大なビジネスになっています。1リットル足らずの血液が1万5000ドルで売買され、試験薬ラルの産業規模は約1億5000万ドルです。ラルは宇宙科学の分野でも利用されています。NASAは宇宙で使われる器具が汚染されていないかを調べているのです。

 

血液採取の影響は?

血液を採取されたカブトガニは消耗した状態で元いた浜辺に戻されます。死なないよう注意して扱われてはいますが血液の採取に関しては様々な意見があります。実際にはカブトガニの死亡率は15%にのぼり、毎年何万匹も犠牲になっています。もとの生息場所に戻っても失った血液が再生されるまでの数か月間、カブトガニの活動は鈍くなります。

 

めざせ!人工繁殖

卵からかえってから6日間、赤ちゃんは浅瀬で活発に泳ぎまわります。カブトガニは脱皮を繰り返します。最初の脱皮をすると大人のカブトガニの姿に近づき、海底を歩き回るようになります。脱皮の直後は甲羅が柔らかく、身を守ることができないためカブトガニにとっては危険な時期です。大人のカブトガニになるまでに約10年かかり、その間に十数回脱皮を繰り返します。脱皮のたびに複眼を構成する個眼も完全に再生されます。他の海洋生物には見られない特徴です。全ての赤ちゃんが大人になれるわけではありません。浜辺で鳥に食べられずにすんでも魚やカメに食べられたり、人間に捕まったりする危険衛があるからです。ある研究によれば最初の1年を生き延びるカブトガニは0.003%、10万匹のうちたった3匹です。無事に試練を乗り切れば20年以上生きるとみられています。しかし、ほとんどが幼い時に食べられてしまう上に繁殖できるようになるまでに10年程かかるためカブトガニの数は減っています。科学者たちは様々な対策を練っています。

 

ALIEN CRAB
(ドイツ 2012年)




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