アフリカ南部ボツワナ共和国に広がるマカディカディ低地では5月、雨がほとんど降らない乾季が始まります。マカディカディ低地の西側を東に向けて移動すると草原は次第に少なくなり、白い地面が目立ってきます。白いものの正体は塩。大量の塩はいったいどこからやってきたのでしょうか?
1万年ほど前までこの一帯は塩を含んだ巨大な湖でした。その後、気候変動により徐々に水が干上がり低地の東側、一番低い場所に大量の塩が残されたのです。こうして東と西で大きく変わるマカディカディ低地独特の環境が生まれました。
11月になると雨季が到来します。塩の大地は巨大な湖となります。塩分濃度は最大で海水の4倍近く。巨大な塩の湖です。
巨大な湖に集まるフラミンゴ
そんな塩の湖にやってくるのがフラミンゴの群れ。その数30万羽。不思議なことに雨が少ない年は訪れず、大きな塩の湖ができた時だけ集まってくるのです。
ここには2種類のフラミンゴがやってきます。コフラミンゴとオオフラミンゴです。フラミンゴたちはアフリカ各地からやってきます。
なぜフラミンゴは真水ではなく、こんな塩辛い水でできた塩の湖を目指してやってくるのでしょうか?その答えは独特の食べ物にあります。
フラミンゴが食べているのは藻。塩分の多い水を好む藍藻(らんそう)と呼ばれるプランクトンです。フラミンゴたちは塩の湖で大発生するプランクトンを食べるために、遠路はるばる集まってきていたのです。
フラミンゴももちろん真水を飲まなくてはいけません。そのために時折近くの池に行って真水で体を洗ったり水を飲んだりしています。時には何百キロも離れた土地まで真水を求めて飛んで行きます。
しかし、こういう水辺には天敵が沢山潜んでいます。フラミンゴは長い助走が必要で、すぐに飛び立つことができません。そのため真水の周りにやってきて命を落とすフラミンゴが多いのです。
フラミンゴの羽がピンク色なのは食べているエサに関係があります。食べ物に含まれるカロテノイドという色素がフラミンゴを赤く染めています。野生のフラミンゴが食べているプランクトンは緑色ですが、実はカロテノイドがたっぷり含まれています。
色の鮮やかさはフラミンゴの健康状態を示すバロメーター。そのため子孫を残す時、身体の色が重要な役割を果たします。色の濃い個体ほどモテると言われているのです。繁殖期になるとフラミンゴは羽を大きく広げて鮮やかな赤色を相手に見せ付けます。
フラミンゴの子育て
12月になるとフラミンゴたちは子育てを始めます。天敵を避けるため中洲に巣を作ります。巣は泥でできています。
メスが産む卵は1つだけ。天敵に襲われる心配がないので沢山産む必要がないのです。卵がかえるまでの1ヶ月間、大切に温めます。
生まれたばかりのヒナはまだ体が赤くありません。親から特別なミルクをもらうことで少しずつ赤くなっていきます。フラミンゴミルクは栄養たっぷりで、お母さんだけでなくお父さんも与えることが出来ます。
巣ですごすのは孵化して10日程。その後、少しずつ巣から離れて歩き回るようになります。自分で飛べるようになるまで約3ヶ月。マカディカディ低地では多い年には3万羽ものヒナが生まれます。
5月になると再び乾季が始まります。フラミンゴたちはまだ水の残っている場所を目指して湖の北を目指します。飛べる親鳥たちはここで食べ物と水にありつけますが、まだ飛べないヒナたちは歩くしかありません。
そんなヒナのために親鳥は水場とヒナのもとを何度も往復し、自分の子供を探してはフラミンゴミルクを与えます。ヒナたちは生きるために100kmの道のりを進むのです。
6月、飛べるようになったヒナたちと共に数百キロ離れた海辺までフラミンゴたちは飛んでいきます。
「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」
フラミンゴの大行進