ハイエナといえば獲物を横取りしてばかりの悪役の印象があります。ある辞書には「貪欲に利権を求める者のたとえ」とまで書かれています。
ブチハイエナは頭の先からしっぽの先まで約130cm、体重は70kg。チーターやヒョウと比べてみるとブチハイエナの方が20kgも重く、サバンナではライオンの次に大きな肉食動物なのです。
ハイエナは犬の仲間だと思われがちですが、どちらかといえば猫に近いハイエナ科という独立した仲間です。
ハイエナの子育て
ハイエナは穴で子育てをします。地面にあいた穴は地下のトンネルで繋がっています。通路は中の方で狭くなっているため、天敵となる他の肉食動物は入ることが出来ません。
穴は元々ツチブタなど穴掘りの得意な動物が掘ったもの。自分たちで掘って穴を広げハイエナ流にリフォームして使っています。親がいない間は子供たちだけで巣穴で過ごします。
ここで子供たちが過ごすのは生後10ヶ月まで。迷路のような巣穴に守られ子供たちはスクスクと育ちます。巣穴から出てくるとおっぱいの時間です。ハイエナの授乳期間はサバンナの他の肉食動物と比べてとても長く1年以上。子育て専用の安全な巣穴があるおかげで手間隙かけてじっくり育てられるのです。
ハイエナの食事
ハイエナは数頭ずつに分かれて獲物を探します。ライオンが食べ終わった後の骨などを食べます。ハイエナにとって骨は栄養満点の食べ物。骨の約4分の1はたんぱく質、骨の中にある骨髄には脂肪やビタミンなど貴重な栄養がたっぷり詰まっています。
でも、骨は硬いため多くの動物は食べずに捨ててしまいます。ハイエナは噛む力が強いので骨を食べることが出来るのです。
また、ハイエナは消化する能力も抜群なため胃で肉も骨も完全に溶かしてしまうので糞として出てくるのはカルシウムくらいなのです。他の肉食動物は獲物の約30%を残しますが、ハイエナはほぼ100%食べつくします。命を残さずいただいているのです。
ハイエナの狩り
ハイエナが最も活発に動くのは夜。実はハイエナは優秀なハンターです。並外れたスタミナに加え、最高時速65kmのスピードもあります。さらに、群れのチームワークも活かし自分の体の数倍もある獲物だって仕留められるのです。ハイエナは食べ物の約6割を自分の力で手に入れています。
しかし、そんな狩りの現場によく現れるのがライオン。ライオンに食べ物を横取りされてしまうのです。ライオンは食べ物のうち自分で捕まえるのは半分以下。約2割はハイエナから横取りしたものという調査結果もあります。ハイエナからすればライオンこそ力にものをいわせた嫌な奴なのです。
ライオンからの一撃をくらい命を落とすハイエナも少なくありません。ハイエナは百獣の王を向こうに回し、自らの力で生き抜いているのです。
ハイエナの助け合いのルール
足を上げてお互いのお尻をくんくんするのがハイエナ流の挨拶です。ニオイで相手の気分や体調が分かるのだと言います。さらに、足の上げ方にはルールがあります。ハイエナの群れでは順位が決まっていて下のものが必ず先に足を上げます。挨拶は順位の確認でもあるのです。お互いに確認しあうことで群れの秩序が保たれています。
ハイエナは哺乳類の中では珍しくメスがオスよりも10%程大きくて力も強いです。オスの順位はメスよりも下。何と子供たちよりも低いのです。そのため、メスに挨拶することすら許してもらえないこともあります。
ハイエナは違う群れ同士でも極力争いを避けます。仲間同士で協力し他の群れとはケンカを避ける、ハイエナは平和的なのです。また怪我をしたハイエナも群れの中で暮らしています。我先に獲物に群がる食事の時も、のけ者にされることなく一緒に食べます。
怪我をした肉食動物は多くの場合、獲物が食べられず死んでしまいます。野生では極めて珍しいことなのです。ハイエナの群れでは例え怪我をしたとしても順位は変わりません。それまでと同じ生活を送ることが出来ます。そのため野生の世界では死を意味するような怪我でも乗り越えることが出来るのです。
「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」
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