星 宇宙の神秘 ~誕生から死まで~|地球ドラマチック

大きく、熱く、宇宙空間に無数に存在する天体が星です。星は荒々しく誕生し巨大な爆発で死をむかえ、残骸を宇宙にまき散らします。残骸は生命体の原料となります。

 

 

大小さまざま

私たちの銀河系だけでも1000億個以上の星があり、観測可能な宇宙空間にその銀河が1000億以上あります。どの星も巨大なエネルギーを持ち、あらゆる物質の原料を生み出しています。人間をはじめとするあらゆる生命体も例外ではありません。

 

ほとんどの星は地球から遥か遠くにあるため、あまりなじみがありません。しかし、一つだけ近くで輝く星があります。太陽です。私たち人類は、星に関する知識の大部分を太陽から学んできました。太陽もまた数多くある星の一つです。地上にふりそそぎ私たちを暖めてくれる日光は、星の光なのです。

 

 

地上から見る太陽は眩い光の玉ですが、太陽の正体は超高温ガスの塊です。46億年にわたり太陽系を照らし続け、地球上の生命に恵みを与えてきました。

 

地球から太陽までの距離は約1億5000万kmで、体積は地球の約100万倍です。太陽の直系は約140万km。地球よりも遥かに巨大ですが、星の中では特に大きい方ではありません。

 

りゅうこつ座のイータという星の体積は太陽の500万倍以上です。さらに、オリオン座のベテルギウスはイータの300倍。この星を太陽系の中心においたら太陽系の半分を占め、木星まで達してしまいます。ベテルギウスよりもさらに大きいとみられるのが、おおいぬ座のVY星。これまでに発見された中でも最大級の星です。

 

星の光の色は、赤・青・黄色など様々です。単独で存在するものもあれば、対になって互いの周りを回っているものもあります。大小さまざまな星が集まり巨大な銀河を形作っています。

 

始まりはちりとガス

どの星にもそれぞれ特徴がありますが、全ての星は同じように星雲と呼ばれるちりとガスの中から生まれます。星雲は端から端までの距離が数十億キロメートルある巨大なものが多く、美しい姿で宇宙空間を漂っています。どの星雲も数多くの星を宇宙空間に生み出してきました。

 

しかし、私たちは星の誕生を見ることはできません。重要なのは美しく輝くガスではなく暗い部分、ガスやチリが濃い部分です。そこから星が生まれています。暗い部分はチリが非常に厚いため一般的な望遠鏡では内部を見ることはできません。

 

長い間、星が生まれる過程は謎に包まれていました。星が誕生する様子を観測できなかったからです。しかし2004年、NASAがスピッツァー宇宙望遠鏡を打ち上げ状況は変わりました。スピッツァー宇宙望遠鏡は赤外線望遠鏡です。目に見える光ではなく熱を観測します。熱は厚いちりも通り抜けるため星雲の中で星が生まれる様子を観測できるようになりました。

 

星を作るのに必要なものは、水素・重力・時間です。チリとガスは重力で引き寄せられ、回転する巨大な渦になります。渦は数十万年かけて次第に厚みを増し、回転しながら巨大な円盤状になります。

 

中心部ではガスが重力によって押し固められ非常に高密度で高温の球体が作られます。圧力がさらに高まると中心から巨大なガスの噴流が発生します。重力によってちりとガスがどんどん中心部に集まり、粒子は激しくぶつかり合いさらなる熱を発生させます。

 

その後、50万年かけて幼い星はより小さく明るく熱くなっていきます。中心部の温度は1500万度に達します。非常に高い温度によってガスの原子が核融合を始め、膨大なエネルギーを放出するようになります。こうして生まれた星は何十億年、時には何兆年にも渡って輝き続けます。

 

アインシュタインが解明

星は長い年月に渡って燃え続け、大量の熱と光を生み出します。それほど長く燃え続けるためには莫大な燃料が必要です。しかし、20世紀になるまで燃料が何なのか誰にも分かりませんました。謎を解いたのは、天才物理学者アインシュタインでした。

 

 

アインシュタインは、星が原子内のエネルギーを活用していることを証明したのです。星の秘密はアインシュタインの方程式「E=mc2」の中にありました。この宇宙のあらゆる物質を形成している原子は、いわば凝縮されたエネルギーだったのです。

 

アインシュタインは原子同士を衝突、融合させれば原子内のエネルギーを取り出せることを示しました。核融合という現象です。核融合こそ星のエネルギー源でした。

 

エネルギー源は水素

星を形作っているのは途方もない重力です。重力によってガスが圧縮され、莫大な熱が生まれ核融合が起きています。だから、星は長く輝き続けるのです。

 

星の中心部で起きている核融合は、核爆弾10億個分に相当するエネルギーを毎秒生み出しています。星はいわば巨大な水素爆弾です。吹き飛んでしまわないのは巨大な重力によって繋ぎ止められているからです。

 

重力と核融合が生み出す爆発エネルギーは、常にせめぎ合いを続けています。重力は中心部に向かって働き、星をこなごなに押しつぶそうとします。一方、核融合のエネルギーは外側へ向かって働き、星を吹き飛ばそうとします。星は2つの力が釣り合うことで存在しているのです。

 

重力と核融合エネルギーのせめぎあいは、星の一生を通じて繰り広げられます。2つの巨大な力がバランスを保つことで、星は長い年月に渡って輝き続けるのです。

 

光が地球に届くまで

星から生み出された光は長い旅をします。光の進む速さは、秒速30万キロメートル。1秒で地球を7周半します。光より速いものは宇宙に存在しません。しかし、ほとんどの星は非常に遠くにあるため、光が地球に届くまでに長い年月がかかります。

 

ハッブル宇宙望遠鏡が宇宙の彼方をとらえて観測した光には、数十億年前に発せられたものもあります。しかも光は星の外に向かって飛び出すまでに長い年月を費やしています。

 

太陽の中心部で水素が核融合すると光と素粒子・光子が生まれます。光子は太陽の中心部から表面に到達するまでに長い時間を要します。光子は誕生するとすぐ周りにある様々な素粒子と衝突し弾き飛ばされます。太陽の内部で追い合いへし合いしながら無秩序に動きまわるので、真っ直ぐに進むことができません。それで太陽の外に出るのに時間がかかるのです。

 

光子は太陽の外に飛び出すまでに数えきれない程の素粒子と衝突します。光子は太陽の中心部で生まれてから外に出るまでに何千年、何万年もかかりますが一度外に出ると8分で地球に到達します。

 

危険!太陽風

光子は光と熱の源ですが、一方で破壊的な現象も引き起こします。光子は太陽の表面に到達すると太陽の外側の部分を熱します。その熱は太陽の表面をかけめぐり、ガスの激しい流れと強烈な衝撃派を起こします。あまりに激しいため音を実際に聞くことができる程です。

 

猛スピードで流れるガスは、強力な磁場をいくつも生み出します。磁場は太陽の自転にともなってぶつかり合い表面から飛び出します。磁気を帯びたガス「プロミネンス(紅炎)」が宇宙空間に噴出します。輪のような形をしていて、地球が通りぬけられるほど巨大なものもあります。

 

プロミネンスが発生すると、電気を帯びた粒子が太陽から噴き出します。太陽風と呼ばれる現象です。太陽風には破壊的な威力があり、宇宙船や人工衛星を傷つけ宇宙飛行士の命を脅かすこともあります。

 

星の表面で巨大なプロミネンスがぶつかり合って放出されたエネルギーは、周囲の温度を1千倍に急上昇させます。こうした極度の高温が太陽風や恒星風を引き起こし、何百万トンもの粒子を宇宙に放出します。星が大きいほど風は強烈なものになります。

 

70億年後 太陽の死

どの星もやがてはをむかえます。核融合の燃料である水素が尽きてくると重力と核融合エネルギーのバランスが崩れ、星は不安定な状態になります。

 

太陽の中心部では毎秒6億トンの水素が燃えています。このペースでいけば、70億年後に水素を使い果たします。水素が底をつき外側へ向かう核融合エネルギーが減少すると、内側へ向かう重力が優勢になります。しかし、この段階になると核融合エネルギーは太陽の表面に近い部分を激しく熱するようになります。熱せられた気体は膨張するので、太陽は巨大化します。

 

太陽は赤色巨星と呼ばれる段階に達します。地上の温度は数千度にも達するでしょう。海は沸騰し山は溶けます。人類が生存することなど不可能です。

 

やがて、膨張した太陽は地球を飲み込みます。赤色巨星と化した太陽は、不安定さを増し自滅への道をたどります。

 

燃料源である水素を使い果たすと、太陽はヘリウムを原料とした核融合を始めます。しかし、内側から崩壊を始め、中心部から表面に向かって強烈なエネルギーの波が放出されます。エネルギーの波は太陽の表面を吹き飛ばします。太陽はゆっくりと崩壊を始めます。

 

死をむかえた太陽には、極めて高温で密度の高い中心核だけが残されます。星の最後の段階である白色矮星に変化したのです。太陽は地球ほどの大きさの白色矮星になると予測されていますが、密度は地球の100万倍です。

 

白色矮星の中心部には、ヘリウムを燃料とした核融合から生まれた炭素100%の巨大な結晶があると考えられています。直径数千キロメートル。宇宙に浮かぶ巨大なダイヤモンドです。

 

一方、太陽よりもはるかに大きな星はもっと激しい死をむかえます。

 

爆発の原因は鉄

巨大な星は、眩く輝き小さな星よりも早く激しい死をむかえます。しかし、巨大な星の死は天体を構成し、生命を生み出す材料を宇宙にまきちらします。

 

地球から640光年の距離にあるオリオン座のベテルギウスは、太陽よりもずっと若く誕生してまだ数百万年程度です。しかし、星としての寿命はすでに尽きかけています。

 

巨大な星は大きな圧力と高温を生み出します。ベテルギウスの重力は非常に大きいため、星の中心部で大きな原子が激しく衝突し核融合が進みます。核融合にともなって作られる元素は次第に重いものになっていきます。最終段階で作られる元素がです。一度鉄が作られたら、もはや星の破滅を避けることはできません。

 

鉄は星のエネルギーを吸収します。鉄が生み出されたら巨大な星の寿命は残り数秒しかありません。星は膨大なエネルギーを使って鉄で核融合反応を起こそうとしますが、それは不可能です。その結果、星のエネルギーはどんどん奪われていきます。中心部で鉄が出来た瞬間、星の一生は終わりをむかえるのです。

 

星の中心にむかう重力と星の外にむかう核融合エネルギーのバランスが崩れます。鉄が作られたことで核融合は行き止まりに追い込まれ、重力が星を押しつぶしていきます。星は中心部に向かって崩壊し、続いて強烈な爆発が起こります。超新星と呼ばれる激しい現象です。超新星は、わずか数秒間で太陽が一生かかっても生み出せないエネルギーを放出します。

 

超新星の贈り物

世界中の天体望遠鏡が超新星を探し続けています。1987年には約16万光年離れた大マゼラン星雲で超新星が見つかりました。幅何兆キロメートルもある火の玉が、宇宙空間に勢いよく広がっていきます。太陽よりもはるかに巨大な星の最後の姿です。

 

しかし、私たちに見えるのは星が爆発した後だけで、星が崩壊を始め爆発にいたる瞬間までは観測できません。

 

激しい爆発の後にも残るものがあります。以前は、超新星爆発によって星は粉々に吹き飛び何も残らないと考えられていました。しかし、それは間違いでした。超新星爆発の後、巨大な星の中心部は非常に密度の高い中性子星に姿を変えます。直径は30km程ですが、信じられないほどの質量があります。

 

死んだ星は中性子星を残すだけではありません。新たな元素を宇宙にまき散らす役割もはたしています。生命に欠かせない元素を作り出せるのは超新星だけです。超新星がなかったら生命は存在しません。

 

もたらされる生命の源

死をむかえた巨大な星は、爆発によって宇宙に星の残骸をまき散らします。星の残骸は水素・炭素・酸素・シリコン・鉄といった元素で満ちています。新しい星や太陽系、惑星、そして生命体を形作る原料となるものです。私たちの世界は、全て星の中心部から吹き飛ばされた物質によってできているのです。

 

はるか昔に死をむかえた星が星屑となり、太陽系、地球をはじめとする惑星、惑星上にある全てのものを生み出しました。太陽も爆発した星の残骸が集まり新たな星として生まれ変わったもので、最初の星から数えて3代目や4代目に当たると考えられています。

 

生命あふれる黄金時代

しかし、多くの星々が輝く時代はやがて終わりをむかえます。核融合の燃料となる水素は無限にあるわけではないからです。あと数兆年後には、宇宙の水素は使い果たされ、新しい星は生まれなくなります

 

まず巨大な星が燃え尽きます。次に太陽のような中くらいの星が消え、数兆年後には小さな星も全て消えてなくなります。そして最後の星が燃え尽きた時、宇宙は暗黒の世界になります。

 

HOW THE UNIVERSE WORKS:STARS
(アメリカ 2010年)

この記事のコメント