宅配の経済学|オイコノミア

現在、宅配便の取り扱い個数は年間40億個以上。運ぶ人たちの人手不足と過重労働が社会問題になっています。

 

宅配のコストとは?

普通は取り扱う量が多ければ多いほど費用が減ります。「規模の経済」と言います。ところが、個別の配送だと規模の経済が働きません。

宅配の現場では、規模の経済が働かないラストワンマイル、つまり消費者の手に渡る最後の段階が問題になっています。

 

ラストワンマイルの問題

物流センターまで1回の移動で大量に運ぶのが規模の経済です。しかし、ラストワンマイルにあたる個別配送では1軒1軒消費者に手渡しをする手間と時間がかかります。この手渡し費用は1軒ごとにかかるので、規模の経済が働きません。ラストワンマイルの配送をまとめられないことが問題なのです。

 

再配達問題をどうするか?

中でも深刻なのが、宅配全体の2割を占める再配達です。急増する配達回数への対応策の一つに、ラストワンマイルの個別配送を無人化するという方法があります。例えば、ドローンによってマンションの屋上などに直接荷物を運んでしまうのです。緊急時には自動でパラシュートが開くなど安全面の開発も行われています。

 

自動運転の車による配送もすすめられています。荷物を受け取りたい時にスマホで指示を出すと自動運転の車が近くまで配送してくれます。車の中には宅配ボックスがあり、メールで送られて認証コードや暗証番号で荷物が取り出せます。ただし、これらの最新技術は実験段階で実用化には時間がかかりそうです。

駅などの公共スペースに設置された宅配ロッカー
「利用したいと思わない」 50.9%

出典:内閣府アンケート(2017)

 

ネット通販会社の新たな取り組み

宅配の問題は利用している企業にとっても深刻です。そんな中、独自の考えて対応を始めたネット通販会社があります。約1万坪の広さに保管されている120万個の商品。ここでは、靴とファッションを中心に小物、アクセサリー、スポーツ用品など約2000ものブランドを扱っています。ネットから注文があれば、すぐに20人程のスタッフが商品をピックアップ。1日に7000個が出荷されています。

 

午後2時までに注文した商品は、その日の夜9時から0時まで、1時間刻みで配送指定が可能です。さらに、翌朝の6時~9時までも1時間刻みで配送指定が可能です。これにより、週末にしか受け取れない人も夜間に受け取ることができます。さらに、1時間刻みの指定なので再配達も非常に少なくなっているそうです。

 

あえて”急がない”配送

さらに、スピードや再配達問題に取り組む中で意外なサービスを思いつきました。2017年9月に導入された「あえて急がないことを指定する配送メニュー」です。このサービスは注文が混みあっていれば2~3日後に配送を遅らせます。料金は即日配送より100円安い290円。今では約3割のお客さんが「急ぎません。便」を選ぶと言います。

 

送料無料のカラクリ

実は、送料無料の場合、送料は価格の中に含まれていると考えられます。すると、沢山買った人は、多く送料を負担していることになります。これを経済学では「内部補助」と言います。

 

送料自由化の実験

2017年、最大手のアパレル通販会社で送料自由化の試みが行われました。このネット通販会社では、それまで4999円未満の買い物は、一律399円の送料を設定していました。それを試験的に0円~3000円の間で送料を自由に選べるようにしました。何も選ばなかった場合は自動的に400円の送料が設定されました。

結果送料0円に設定した人 43%
全体の送料の平均は96円

多く払おうという人はほとんどいなかったのです。

 

結局、このネット通販会社では購入金額に関わらず送料一律200円に価格が設定されました。

 

配送コストは誰が負担する?

かつては、企業が同じ商品を大量に生産し、それぞれの小売店に運んでいました。消費者の側には、自分が欲しいモノを小売店に行って探しまわるサーチコストが発生していました。消費者は同じ商品ではなく様々な企業が作る多様な商品を求めています。すると、従来のままでは消費者のサーチコストはものすごく大きくなってしまいます。

 

そこに、ITの進化によって多様な商品を扱うことができるネット通販会社が登場。サーチコストはネットワークの経済によってなくなりました。その代わり、商品は消費者に直接個別配送されるようになりました。今度は膨大な個別配送コストが生まれたのです。

 

この個別配送コストは誰が負担するものなのでしょうか?実は、配送業者に重くのしかかっています。

 

価格が上がると消費者は商品を買い控えるようになります。これを消費者の価格弾力性が高いと言います。そのため、消費者の価格支配力が強く、送料の実質的な負担が企業や宅配業者に向けられるのです。

 

世界を変えたコンテナ革命

世界を変えたテクノロジーというと、インターネットなどを考えがちだか、国際貿易においては、「コンテナ化」こそが世界を大きく変えたのである。

(ポール・クルーグマン)

 

コンテナが発明される前は、船への荷物の積み下ろしは人力で行われていました。そのため、膨大な手間と時間がかかり、積み下ろしをする港湾労働者の賃金が海上輸送経費の半分を占めました。運賃が製品価格の25%に達するケースまでありました。

 

しかし、規格が統一されたコンテナは積み下ろしの作業能率を劇的に改善させました。24時間足らずで数千個もの荷物が積み替え可能となったのです。

 

世界の貿易額は1960年代からの20年で急激に増加しました。これはコンテナ化が進展したとされる時期を重なっています。

 

大きな箱に小さな物が入っていることがありますが、規格化することによってコストを下げているのです。

「オイコノミア」
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