海に魅せられて
クロード・ドビュッシー
印象派を代表する作曲家ドビュッシーは、フランスのカンヌで少年時代を過ごしました。
音楽家でなかったら船乗りになっていただろう
(クロード・ドビュッシー)
父親が船乗りであったドビュッシーは、生涯海への憧れを抱き続けた音楽家でした。そんなドビュッシーが海の様々な印象を音楽で表現したのが交響詩「海」です。
1曲目のタイトルは「海の夜明けから真昼まで」この曲からイメージされるのは、早朝まだ暗い中でうごめく波。そして日が昇るにつれて見えてくる雄大な海の姿です。
2曲目「波の戯れ」は、まるで音そのものが寄せてはかえし儚く消えていくさざなみのようです。そして3曲目の「風と海との対話」は、風の巻き起こす力強い波がオーケストラにのりうつったかのようにダイナミックに響きます。
愛する海をテーマに作り上げた交響詩「海」は、ドビュッシーが円熟期の1905年に発表した代表作です。
浮世絵が20世紀の幕を開ける!?
ドビュッシーの書斎に飾られていたのは日本の浮世絵、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」です。19世紀末、パリでは万博が開催され世界中の文化が紹介されていました。とりわけ数々の芸術家に衝撃を与えたのが日本の文化でした。
ドビュッシーも日本文化から影響を受けた一人です。北斎の浮世絵を大いに気に入り、自分の書斎に飾り続けました。実はこの浮世絵は、交響詩「海」の楽譜の表紙にもなっています。
ドビュッシーは浮世絵に非常に大きな衝撃を受けたようなんです。と言いますのも、いわゆる西洋の伝統的な芸術の表現方法ですとか規則っていうのにのっとらなくても芸術は成り立つのではないかと気づいたからなんです。それを音楽にあてはめると西洋音楽というのはメロディーに頼って発展してきた。
ところが、ドビュッシーはメロディーを発展させて曲を作らなくてもいいということに気付いた。断片しかないんです。瞬間瞬間の表情の違いで作曲する、そこが非常に斬新だった。
(玉川大学教授 野本由紀夫さん)
様式やメロディーの美しさにとらわれることなく浮世絵さながらに波の印象を大胆にえがいたドビュッシー。音楽の姿について彼はこう語っています。
音楽の本質は形式にあるのではなく色とリズムを持った時間なのである
(クエロード・ドビュッシー)
時と共に変化していく色彩感、そして波と風がおりなす躍動感。ドビュッシーはまさに色とリズムで海そのものを表現したのです。
心に刻み込まれた印象を自由に大胆に表現したドビュッシー。その音楽はまさに20世紀音楽の扉を開いたのです。
「ららら♪クラシック」
ドビュッシーの「海」
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