ステゴサウルスの背中に生えているプレートの役割について、研究者たちはいろんな説を提唱してきました。しかし、2年前に日本の恐竜研究者がプレートを切ることでプレートの役割にまつわる論争に決着がつきました。
大阪市立自然史博物館の林昭次(はやししょうじ)さんは、世界各地の博物館に保管されている20体のステゴサウルスの化石を切断してきました。複数のステゴサウルスを切断・比較した本格的な研究は世界初です。
プレートは切ってみるとスポンジのように穴だらけ、スカスカでした。そのため武器や鎧としては使えなかったと想定されました。そしてスカスカの穴には血管が通っていたようです。
現在、生きている動物の中にステゴサウルスのプレートと同じ役割を持つ動物がいます。それがオニオオハシ。特徴はカラフルで大きなくちばし。
実はオニオオハシのくちばしの中には血管が通っていて、血管を膨らませて放熱しています。ステゴサウルスのプレートは熱を逃がすためにあったのです。
体が大きくなると大量の熱を蓄えることができますが、その反面熱を逃がすのが苦手になります。そのため、何らかの放熱システムがあった方が良いのです。
恐竜の巨大化の謎に迫る!
アルゼンチノサウルスは、体長30m以上、重さ50トン以上もありました。こういった首が長く巨大な恐竜は竜脚類(りゅうきゃくるい)と呼ばれます。
なぜ、このような巨大化が出来たかが恐竜の最大のミステリーと言われています。しかし、その謎が化石を切ることで明らかにされつつあります。
ドイツ・ボン大学のマーティン・サンダー教授は、竜脚類巨大化の研究を続けて30年の第一人者です。サンダー教授は、これまで300体以上の竜脚類の化石を切断してきました。その結果、竜脚類の骨の内部に、ほかの恐竜にはない特徴があることを突き止めたのです。
それは木の年輪のように広がっているはずの成長停止線がほとんど存在しなかったのです。
成長停止線は、成長が中断した時に出来ますが、竜脚類があれほどの大きさになるには止まる事なく成長し続けなければなりませんでした。15年で20トンという急成長を成し遂げたと推定されます。
巨大化の秘密は、ずば抜けた急成長にありました。しかし、なぜ急成長できたのでしょうか?それはミルフィーユのように重なった2種類の骨にありました。
まずは方向性のバラバラな骨で素早く枠組みを作り、空洞の中に方向性のそろった骨を後からしきつめます。すると、急成長しながらも丈夫な骨を作ることが出来るのです。
また竜脚類の背骨は、スポンジのようにスカスカであることも分かりました。実はこうした構造は鳥の背骨にもよく見られます。
鳥では背骨の穴は気嚢(きのう)と呼ばれる器官へとつながっています。気嚢は肺の前と後ろにあり、呼吸に関係する働きを担っています。
サンダー教授は、竜脚類も気嚢を持っていて鳥と同じ特別な呼吸をしていたと考えています。気嚢により効率的な呼吸が出来るようになり代謝が活性化し、急成長を実現させていたのです。
「サイエンスZERO(ゼロ)」
恐竜化石研究新時代
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