今、浮上している新たな問題が海の二酸化炭素問題です。実はこれまで排出された二酸化炭素の多くは海が吸収してくれていました。ところが今後、海に吸収される割合が減っていく可能性があるというのです。
さらに、二酸化炭素を吸収してきたことで進行しているのが海洋酸性化の問題です。酸性化が進むと海の生態系に大きな影響を及ぼすことが明らかになってきました。人類が排出する二酸化炭素の受け皿となってきた海に何が起きているのでしょうか?
海の熱吸収機能に異変!?
2015年9月、イギリスの気象庁が衝撃的なリポートを発表しました。ここ10年あまり安定していた気温が、再び上昇傾向に変わり地球温暖化が急速に進む可能性を示したのです。
実は地球上では、温暖化が進んでいるとされながら気温に変化が現れない期間が続いていました。ところが、2年前から突然上昇傾向に転じたのです。なぜこうした変化が起きているのでしょうか?
原因の一つとしては2014年夏から続いている大規模なエルニーニョ現象があります。
エルニーニョ現象とは太平洋の赤道付近で海面水温が平年より高くなる現象
この現象は1年程続き、気温が上昇することが知られています。
ところが、今回の気温上昇にはさらに大きな海の変化が関わっていると考えられるのです。それが太平洋で10年周期で起こる海面水温の変動です。この現象を「太平洋十年規模振動(PDO)」と言います。これまでの観測から、最近のようなパターンになった時に気温が上昇傾向になることが知られているのです。海面水温のパターンが気温上昇に影響するのはなぜなのでしょうか?
またメカニズムは解明されていませんが、2000年から2012年までのようなパターンの時は大気の熱が海に取り込まれる傾向が強くなることが分かっています。このおかげで10年余りの間、気温上昇が抑えられていたと考えられています。
海への熱の吸収が弱まり海面水温が上がれば、連動して気温も上昇します。今の状況が続けば、世界の平均気温は今後も最高の値を更新し続けると考えられています。
海洋の酸性化
海洋に二酸化炭素が溶け込むことで海洋の酸性化といった問題が起こっています。海洋の酸性化とは一体どんな現象なのでしょうか?
二酸化炭素は水と反応し炭酸になります。さらに、炭酸は水素イオンと炭酸水素イオンに分かれます。つまり、二酸化炭素が海に溶ければ溶けるほど水素イオンが増えます。これが海洋の酸性化と呼ばれる現象です。
さらに酸性化が進むと、地球温暖化に大きな影響を及ぼす可能性があると言います。二酸化炭素が海に溶け水と反応して炭酸水素イオンや水素イオンが増え続けると、徐々にこの反応が起きにくくなります。そのため大気中に残る二酸化炭素が増えるというのです。
海洋酸性化で海の生物に異変
海が酸性化することで深刻な影響を受けるのがさんごです。酸性化の影響で、将来サンゴが生息できなくなるかもしれないというのです。
珊瑚は海の中にあるカルシウムイオンと炭酸イオンが反応して出来る炭酸カルシウムで骨格を作っています。しかし、海に二酸化炭素が溶け込むと、その一部が炭酸イオンと反応し炭酸水素イオンに変わっていきます。そのため炭酸イオンが減っていき、サンゴの骨格になる炭酸カルシウムが作られにくくなってしまうのです。
「サイエンスZERO(ゼロ)」
温暖化の新たな危機!海洋酸性化
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