今、ウェアラブルセンサーはスポーツ以外の分野でも活用が進められています。何種類ものセンサーを組み合わせたり人工知能を使うことによって、思いもよらないことを実現してしまうのです。交通事故を減らしたり、子供を笑顔にしたり、みんなが幸せになる職場まで作ってしまいます。実は、ウェアラブルセンサーには幸せを呼び込む力があるのです。
職場環境を変えるウェアラブルセンサー
大阪にある長距離バスの会社では、ウェアラブルセンサーを使って交通事故を防ぐ取り組みを行っています。耳につけるクリップ式の装置がセンサーです。センサーが感知しているのは眠気。自分では気づかない眠気を知らせることで事故を減らそうというのです。
耳につけたクリップで測定しているのは心拍です。重要なのは心拍のピークとピークの間の時間。実は、この間隔は身体の状態によって微妙に変動しています。装置はその変動を解析することで眠気を感知しているのです。こうして感知した眠気は、営業所にいる運行管理者にも通知されます。何度も眠気が感知されると、本人に運行管理者が連絡。事故を未然に防ぎます。
ウェアラブルセンサーを介護の現場で活用しようという研究もおこなわれています。北海道大学の田中孝之(たなかたかゆき)准教授は、腰の不調を訴える介護士が多いことから腰への負担を計測するウェアラブルセンサーを作りました。
田中さんはウェアラブルセンサーを施設の介護士につけ、通常通りの仕事をしてもらいました。すると、計測した51分間のうち33分も前かがみで作業していたことが分かりました。多くの時間を前かがみの姿勢でいることが腰の負担につながっていることが初めて数値から分かったのです。
ウェアラブルセンサーで子供の気持ちを測る!?
アメリカ・コロラド州ボルダーに住むエリオット・ヘドマンさんは、子供たちの感情の変化がとらえられるウェアラブルセンサーを作りました。センサーには微弱な電気を流す電極がついています。これを汗をかきやすい手や足につけます。人は興奮したり恐怖を感じたりすると汗をかきます。その汗の量を電気の流れ方の変化としてとらえます。狙子供の感情の変化から開発中のおもちゃをより良くしようというのが狙いです。
ウェアラブルセンサーで幸せがわかる!?
そのウェアラブルセンサーは首からかけて使います。加速度や赤外線など複数のセンサーが入っています。加速度センサーはパソコン作業など微妙な体の揺れから歩行まで全ての動きを計測します。赤外線センサーでは向かい合った相手が誰なのかを判別。いつ、誰と、何分間話したのかが分かります。様々な会社で取りだめた膨大なデータを解析したところ意外なことが明らかになりました。
基準以上の身体活動がどれくらい継続したかを解析し、従業員全員の活動の継続時間の頻度をグラフにしました。横軸は継続して活動している時間の長さ、縦軸は発生する頻度です。1分以下の短い動きが多く発生している一方、長く継続して動いている人もいます。
このとき、反比例の関係に近いグラフほど職場の幸福度が高いことが分かりました。一方、反比例と違った形のグラフになると職場の幸福度が低いことも分かりました。活動の継続時間と職場の幸福度が関連する理由は現在もよく分かっていません。しかし、研究者たちは膨大なデータを解析した結果、確かに関連性があることを見出したというのです。
「サイエンスZERO(ゼロ)」
幸せを呼ぶ!?ウェアラブルセンサー新時代
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