巨大災害 異常気象 ~暴走する大気と海の大循環~|NHKスペシャル

NHK総合テレビの「NHKスペシャル」で巨大災害 地球大変動の衝撃 第1集 異常気象~暴走する大気と海の大循環~が放送されました。

 

世界で多発 異常気象の謎

アメリカの西海岸では今年に入って山火事が相次ぎました。500年に1度という大干ばつが起きていたのです。深刻な水不足によって農業は大きな打撃を受けました。本来、西海岸の冬は雨が多い季節です。しかし、この冬はほとんど雨が降らず1月の降水量は0。乾燥に強いはずのアーモンドの木も次々と枯れていきました。同じころアメリカの中部から東海岸にかけての地域は記録的な寒波に襲われていました。シカゴでは平年を20℃下回る氷点下30℃を観測。ニューヨーク州は大雪にみまわれ非常事態を宣言。各地で交通網が寸断され都市部は大混乱に陥りました。異変はアメリカだけではありません。イギリスでは250年ぶりの大雨による大洪水が起きていました。平年の2~3倍という雨が3ヶ月に渡って降り続いたのです。ロンドンの近郊ではテムズ川が氾濫し、市街地が浸水。多くの人が孤立しました。なぜ世界で同じ時期に異常気象が多発していたのでしょうか?

 

イギリスの気象庁は当時の世界中の気象情報を収集し、その原因を探ってきました。分析の結果、浮かび上がってきたのは地球規模の大気の異変でした。上空を流れる地球最大の風「偏西風」にある変化が現れていたのです。偏西風は南北に波打ち、常に変化しながら移動しています。ここに偏西風の重要な役割が秘められています。偏西風が流れているのは日本列島がある中緯度帯。赤道と極にはさまれた地域です。この間を偏西風の波が移動することで、暖かい空気と寒気が数日ごとに入れ替わり、適度な気温をもたらします。こうして偏西風は地球の熱のバランスを保っているのです。ところが、異常気象が多発した今年1月頃、偏西風の流れ方がいつもと違っていました。常に移動していた波が止まり、同じ位置に固定化されてしまったのです。風そのものは流れていますが、波の位置が変わらなくなりました。通常、偏西風の波が移動している時は暖かい空気と寒気が交互に吹いてきます。しかし波が止まってしまうと暖かい空気と寒気が同じところにとどまり続けることになるのです。2014年1月半ば、アメリカ西海岸付近で西から移動してくる偏西風の波が止まりました。この固定化は5日ほど続き、アメリカ西海岸は南からの暖かい空気に覆われていました。こうした状態がこの冬に何度も繰り返されたため大干ばつに繋がったのです。一方、アメリカの東側では偏西風によって寒気が大きく南下し続けました。このため、大寒波が引き起こされたのです。アメリカで起きた偏西風の異変は大西洋を挟んだイギリスにも及んでいました。偏西風がイギリスの南側を流れるようになり、北から寒気を引き込みました。そして南の海上で偏西風が向きを変え北へ。この風が海からの湿った空気をイギリスに運び、寒気とぶつかって雨を降らせました。風の流れが固定化されたことで雨は降り続いたのです。

 

地球の熱バランス 大気と海の大循環

太陽によって暖められた赤道付近の熱は、大気によって北極・南極など冷たい地域に向かって運ばれていきます。その役割を担っている一つが偏西風です。では偏西風の固定化はなぜ起きたのでしょうか?アメリカ大気研究センターのケビン・トレンバースさんが世界の海水温などのデータを分析した結果、偏西風を固定化させていた原因を見つけました。赤道直下の太平洋、インドネシアのレンボンガン島は今年初めかつてない被害が広がっていました。海草の4割が出荷できない状態になっていたのです。海草が白く変色し次々と腐っていったのです。原因は普段より高くなっていた海水温でした。インドネシア周辺の西太平洋の海面水温の平均は29℃で、世界で最も水温の高い海域です。当時はさらに0.5~1.0℃ほど高くなっていました。熱帯域で温められた海水が周辺から集まっていたのです。トレンバースさんは、この海の熱が偏西風の波の固定化を引き起こしたと指摘しています。

 

海水温が上がると水蒸気の量が増えます。水は蒸発するさい、海の熱を抱えて上昇。上空に到達した水蒸気は水滴にかわり、同時に大気中に熱を放出します。このとき出る熱は凍結熱と呼ばれます。こうして雲ができるたびに上空に凍結熱が発生。インドネシア近海の海水温が高かったことで普段にはない膨大な熱が上空に放出されました。これが偏西風の流れに異変をもたらしたのです。インドネシア上空に発生した膨大な熱のエネルギーが伝わったことで、偏西風は北へ大きく押し上げられました。この状態が続いたため、偏西風の波の位置が固定化されたのです。

 

海水温上昇 激化する災害

海水温の上昇の影響が今最も懸念されているのがアジアの沿岸部です。南シナ海に面したベトナムの海岸では10年前まであった村が海の中に消えてしまいました。海岸侵食と呼ばれる現象が深刻化しているのです。水温が上がり水が膨張したことで、ベトナムでは海面が上昇していると言います。この50年で最大20cm上昇。波が内陸にまで押し寄せるようになり、浸食が進みました。そこに追い討ちをかけたのが台風など熱帯低気圧の増加です。ベトナムに接近する熱帯低気圧は増加する傾向が見られ、2013年は過去最多の19に達しました。高波が発生するたびに海岸がえぐられ、これまでに2万5000ヘクタールの土地が海に消えました。

 

より深刻な影響が出ているのがインド洋沿岸です。この海域では5年間で0.6℃上昇しています。海水温が上がると大量の水蒸気が発生し次々と雨雲ができます。一度に降る雨の量が多くなりサイクロンなどの低気圧も発達して強くなります。ガブラ村はかつては肥沃な土地に恵まれた豊かな農村でした。しかし、気象の変化が村の暮らしを一変させました。豪雨によって洪水が頻繁に起きるようになったのです。さらに海水が田畑に流れ込むようになり、作物も育たなくなったのです。

 

大異変の前兆か?ハイエイタスに迫る

世界の海面水温は20世紀以降、多少の上下はありますが上昇を続けてきました。ところが、ここ10年は海面水温の上昇は止まっています。また世界の平均気温もここ10年ほど上昇が鈍っています。この状況を専門家たちは「ハイエイタス」と呼んでいます。しかし、これを大変な事が起こる前触れではないかと考えているそうです。海水温度はハイエイタスが始まった2000年頃から上昇が緩やかになっています。ところが水深700mより深い深海の水温は、ハイエイタスが始まった2000年頃から水温の上昇が加速しています。温暖化によって生じた新たな熱が深海に吸収されたため、気温の上昇が止まっていると考える専門家もいます。