光触媒技術で細菌を99.9%撃退するタイル|夢の扉+

太陽や蛍光灯の光を当てるだけで汚れを落とし、さらには細菌やウイルスを撃退するという驚きのタイルがあります。現在、飲食店や病院、トイレなどの現場で効果を発揮し話題を呼んでいます。

開発したのは北九州で製鉄加工一筋50年のフジコー社長、山本厚夫(やまもとあつお)さんです。

福岡県北九州市にあるモノレール平和通駅は、かつてトイレのニオイに悩んでいました。ところが、特殊なタイルを設置したとたんニオイがピタリとなくなりました。その恩恵は病院でも。北九州古賀病院では病院独特のニオイに長年悩まされてきましたが、タイルによってニオイが軽減しました。数々の現場で効果を発揮するタイルは、ニオイの原因となる細菌やウイルスまで99.9%撃退できると言います。

菌やニオイを撃退する鍵は、タイルにコーティングされた光触媒技術。光を当てるだけで殺菌や消毒を可能にする技術が光触媒。使われる材料は酸化チタンです。

まず酸化チタンに光が当たると空気中の酸素や水分と反応し活性酸素が生まれます。これが細菌やウイルスなどを攻撃、分解。さらに驚きなのはこの効果が光があるだけで半永久的に続くことです。

光触媒を発見したのは日本人。今から40年前、世界的科学誌にも掲載されノーベル賞候補にもなった。

10年前、山本厚夫さんは光触媒に注目。しかし、当時の常識ではその能力を最大限に活かすのは極めて困難とされていました。光触媒の材料である酸化チタンは粉末状。これを接着剤と混ぜ塗りつけて使用されていました。ところが、この方法では接着剤の分だけ光触媒の密度が薄くなり、本来の効果が十分に発揮できず剥がれてしまうケースも多かったのです。

山本厚夫さんは接着剤を使わずに貼り付けようと考えました。山本厚夫さんはフジコーの技術開発のトップ永吉英昭さんに声をかけました。ところが、接着剤を使わずに光触媒を貼り付けるのは想像を絶する難しさでした。失敗につぐ失敗で会社の経営を圧迫するように。しかし、苦労を重ねた先にこそ真似できない技術が生まれると信じて開発を続けました。

鉄鋼業を営む家庭に生まれた山本厚夫さん。高度経済成長期、天才技術者と呼ばれた父は当時不可能とされていた鋳型の新技術を開発し会社を急成長させました。そんな父に憧れ入社した山本厚夫さん。技術屋として腕を磨きやがて社長に就任。順風満帆の船出のように思われました。

しかし、製鉄業界に技術革新の波が押し寄せ、長年父の技術にあぐらをかいていたことに気づいた時にはすでに手遅れでした。仕事はピーク時の半分まで激減。山本厚夫さんは必死に従業員を守ろうとしました。営業にあけくれましたが焼け石に水。ついに最後の決断をする時が来てしまいました。断腸の思いで700人の従業員をリストラ。だからこそ山本さんと永吉さんは新しい技術にこだわり続けたのです。

接着剤を使わず光触媒を貼り付ける技術に選んだのは溶射という金属加工の技術。

溶射とは高音・高速で材料を衝突させることで接着剤を使わず密着コーティングする技術。

しかし、温度が2000度と高音なため光触媒の機能が低下してしまいました。温度を下げると吹き付ける力が弱まり接着力が低下

これまで燃料を燃やすために使われていたのは酸素のみでしたが、そこに燃えにくい窒素を含む空気を混ぜることで勢いを落とさず温度を下げられるかもしれないと永吉さんは考えました。永吉さんの予想は的中。開発開始から10年、ついに光触媒だけを確実に接着できる溶射機を完成させました。それは確かに誰にも真似できない技術でした。

山本さんと永吉さんの画期的な光触媒は着実に活躍の場を広げています。宮崎では鳥インフルエンザや口蹄疫の予防にむけて施設の壁や床で実験的に使用されています。今後、畜産の現場や人が多く集まる場所でもその効果が期待されています。特に注目しているのが医療機関です。

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