パフィン|地球ドラマチック

NHK・Eテレの「地球ドラマチック」でピエロ顔のアイドル パフィンについて放送されました。パフィン(和名:ニシツノメドリ)は北大西洋と北極海に生息し、1年のうち8ヶ月間を厳しい環境の海で過ごします。春になるとパフィンは繁殖のために陸に戻り、コロニーを形成して雛が育つまで集団で暮らします。カナダ東部ニューファンドランド島のウィットレス・ベイ環境保護区には、北アメリカ最大のパフィンのコロニーがあります。カモメ島と呼ばれる小さな島にはパフィンのつがい30万組が巣をかまえています。

 

春 ふるさとの巣穴へ

パフィンは海鳥の中では長生きで26年生きた例があります。つがいは一生連れそうことが多く毎年春に同じ巣穴に戻ってきては繁殖と子育てを行います。春一番の仕事は巣穴の大掃除です。くちばしをシャベルのようにして新しい穴を掘ったり、古い巣穴を修繕したりします。仕事の後は丁寧に羽繕いして汚れを落とします。口から出す油には水をはじき羽のしなやかさを保つ効果があります。完成した巣穴は深さ1メートル、長さ3メートルもあり、巣は奥の方に隠されています。

巣穴のそばでオスとメスがくちばしをこすりつけ合うのは、ビリングと呼ばれる求愛行動です。異性の気を惹くために、この時期のパフィンは羽がつややかで、くちばしの色が鮮やかになります。

 

巣穴の内部を撮影

これまであまり観察できなかった巣穴の内部を撮影するために特別なカメラが開発されました。つがいが1シーズンに産む卵は1つだけです。くちばしや羽を一生懸命使って、体の下に卵を抱え込みます。オスとメスは交代で卵を温めます。カモメなどの捕食者から卵を守るためには片時も巣を留守にすることはできません。卵やヒナは危険に合いやすく、25%は大人になる前に死んでしまいます。

 

深く潜る!速く飛ぶ!

ウィットレス・ベイは大陸棚の水深の浅い場所にあり、暖流と寒流が交わるために魚が豊富です。この海に大量にいるカラフトシシャモはパフィンにとってヒナに与えるのにちょうどいい大きさの魚です。パフィンは素晴らしい潜水能力の持ち主です。まるで空を飛んでいるかのように水の中を自在に泳ぎ、小さな魚を仕留めます。獲物を追って水深60メートルまで潜ることもできます。オレンジ色の大きな足は水の中で舵の役目を果たしています。さらに、ずんぐりした体型に似合わず時速90kmという速さで空を飛ぶことができます。この見事なスピードは1分間に400回という目にもとまらぬ速さで翼を羽ばたかせることで実現されます。一方、パフィンは他の多くの海鳥と違って風に乗って滑空することが出来ません。飛ぶたびに多くのエネルギーを消耗するため4日間食べ物を得られないと力尽きてしまいます。

 

初夏 ヒナの誕生

夏の初め、海辺の巣穴でヒナが一斉に孵りはじめます。ヒナが生まれた後、親鳥は休む暇もありません。食べ物をとってきて与え、ヒナの安全を守るという大事な仕事が始まります。

 

海辺での集団生活

夏は子育ての季節です。海辺の丘陵地帯では、パフィンのコロニーが大混雑。集団の中で生きていくには社会的な振る舞いを身につけなくてはなりません。仲間の間を通る時は少し頭を下げ、邪魔しないようにおとなしくすり抜けます。巣穴のそばに戻ってくると、見張り番のように真っ直ぐに立ちます。自分の縄張りを示すため大げさに足跡をつけて円を描くように歩きます。強そうにみせる時には、足を踏み鳴らしたり翼を羽ばたかせたりします。

パフィンは好奇心が旺盛な鳥です。互いの巣穴をのぞきこみ、時には勝手に中に入ります。一つの不適切な行為が争いのもととなることもあります。鋭いくちばしと爪は相手にダメージを与える武器にもなります。

この時期、パフィンの親は食べ物をとることに1日の大半を費やします。ヒナが巣立つのは生まれてから6週間後。それまでか弱い我が子を守らなければなりません。

 

カモメの脅威に対抗!

お腹を空かせているのはパフィンのヒナだけではありません。辺りにはカモメも沢山います。欲張りで攻撃的なカモメは他の鳥が見つけた食べ物も容赦なく狙います。カモメの脅威にパフィンは集団で対抗します。大きな輪になって飛ぶのはカモメの裏をかき、カモメが巣に近づかないようにするためです。

 

イギリスで大人気!

イギリス南西部にあるスコーマー島は、約1万組のパフィンのつがいが繁殖のために訪れる場所です。夏になると島にはバードウォッチングを楽しむ人たちが大勢つめかけます。パフィンは中でも大人気の鳥です。

 

1羽ごとに異なるルート

オックスフォード大学の研究チームはパフィンに位置情報の記録装置をつけ、1年間の移動経路を研究しています。パフィンは8ヶ月もの移動の間、いわゆる渡り鳥のように集団で行動しません。たいていの渡り鳥は本能、または親鳥から学んだ方法によってある決まった場所を往復します。しかし、パフィンはそのどちらでもありません。一体どうやって方角を見定めて移動するのでしょうか?

パフィンの小さな頭には北大西洋の地図が入っているようです。そのような能力は小さい頃から海上で多くの時間を過ごすことで培われているのでしょう。パフィンは年ごとに経験を積みます。広い海について知り、食べ物の豊かな場所を覚え、それらを総合して独自の移動ルートを組み立てているのでしょう。広い海の上では途中で会う鳥やくじら、イルカなどの行動が情報原となります。辺りの海に食べ物が豊富にあるかどうかを知るのにも役立ちます。そのような多くの情報をもとに今いる場所や進むべき方向を判断しているのでしょう。

 

予期せぬ気候変動

パフィンは生涯のほとんどを海で食べ物を探すのに費やします。しかし、そこには地球温暖化の影響がじわじわと押し寄せているという報告もあります。地球温暖化が予測不可能な天候をもたらすようになり、海の生態系には様々な異変が起きています。

 

絶滅から復活したコロニー

ウィットレス・ベイのパフィンはカナダの国境南部メーン湾のパフィンと特別な関係にあります。メーン湾では一時期、完全にパフィンの姿が失われていました。1973年、スティーブン・クレス博士はメーン湾に100年ぶりにパフィンを取り戻すためのプロジェクトを立ち上げました。クレス博士とそのチームは、ウィットレス・ベイからパフィンのヒナを運びメーン湾の小さな島々に移住させました。ヒナは人が用意した巣穴の中で人工保育されました。その第一期生たちは巣立った4年後に再びメーン湾に姿を現しました。しかし、なぜか陸におりてくることはありませんでした。そこで、人が作った囮をおいて、仲間が大勢いるように見せかけてみました。間もなく、辺りの島でパフィンを見かけるようになり1981年には島で子育てをする4組のつがいが確認されました。今では4つの島に1000組以上のつがいがいます。コロニーの復活によって愛らし姿を一目見ようと、島には観光客が訪れるようになりました。

 

海の環境変化

プロジェクトの成功を紹介するために、クレス博士は巣穴にカメラを設置しました。ペティと名付けられたヒナがインターネットで公開されると、100万人以上の人が映像にアクセスしました。しかし、生後3週間程まで順調に育っていたペティは死んでいました。その年、親鳥はバターフィッシュと呼ばれる大きな魚を運んできました。ペティはそれを飲み込むのに苦労し、口から吐きだすことも度々でした。近くの巣穴でも大きなバターフィッシュに囲まれ死んでいるヒナが見つかりました。ペティの死はある重大な事実を示していました。海の環境が変化し、パフィンのヒナが口にできる小さな魚が減っていたのです。ペティが死んだ年、メーン湾の海面の温度は過去150年間で最高を記録しました。シシャモは減少し、代わりに増えたのがより大きな魚であるバターフィッシュでした。

 

巣立ちのとき

夏の終わり、パフィンのヒナが親と過ごす時間はあとわずかです。みすぼらしい産毛は徐々に生え変わりますが、繁殖期までは親鳥のような姿にはなりません。ヒナが生後6週間になると、親鳥は食べ物を運ばなくなります。飢えが巣立ちのきっかけとなり、ヒナは食べ物を求めて巣穴を出ようとします。子育てを終えた親鳥はヒナを残して去っていきます。巣立ちの時を迎えたパフィンは夜の闇にまぎれて一人で出発します。行き先は誰にも教わりません。無事であれば4年後には再び生まれた土地に戻り繁殖の相手を見つけることでしょう。

 

迷子を救え!

旅に出たばかりの若いパフィンにとって、大きな脅威の一つは人間の住む街です。若いパフィンは人工の光を月や星の光と間違えて、道からそれてしまいます。結局、海に戻ることが出来ず街中で迷子になってしまうのです。数年前、ウィットレス・ベイの住人がパフィンのためのユニークな保護活動を始めました。シャウ夫妻は迷子のパフィンを救助するパトロールを始めたのです。パトロールには地元の人や子供たちが協力しています。

 

夏の終わり、ヒナの巣立ちと前後してパフィンの親鳥も再び旅立ちます。春が来るまでの8ヶ月間、それぞれのルートで大海原を旅するのです。そして、春の到来とともにパフィンは再び故郷の巣穴に帰ってきます。毎年繰り返されるパフィンの営み。それを可能にするのは変わることのない海からの恵みなのです。

 

PUFFIN PATROL
(カナダ 2015年)




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