私は宇宙人に誘拐された!?エイリアン・アブダクション|幻解!超常ファイル

NHK総合テレビの「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」で私は宇宙人に誘拐された!?が放送されました。アメリカのサンフランシスコの一角では謎の生命体と遭遇し誘拐されたと語る人々の集会が開かれています。彼らはその異常な体験を家族や友人にも理解されず同じ境遇の仲間と語ることで自分に何が起きたのか確かめようとしています。宇宙船や謎の人物を目撃すると次の瞬間、彼らの施設に引き込まれ気がつくとエイリアンに囲まれていると言います。体験者たちによると、エイリアンの肌は青白く目は大きいそう。自由を奪われ裸にされ無理やり人体実験をされるそうです。中には精子や卵子を採取されたという証言も。さらにはエイリアンとの間に子供が生まれたという証言まであります。

 

特に有名なのが1961年のヒル夫妻誘拐事件。その異様な体験はアメリカ中に衝撃を与えました。ある夜、ヒル夫妻が帰宅するためのドライブ中のこと、車を追いかけるような光を目撃し恐怖に陥ったと言います。明け方、夫妻は家に辿り着いたものの謎の光を見てからの3時間の記憶がぼんやりとして曖昧なことに気づきました。不安を感じた夫妻は専門家に相談し催眠を受け、宇宙人に連れさられていたと証言。ヒル夫妻事件は全米の話題となり、自分もアブダクションされたという証言者が急増。その中で登場してくるのが寝ている時に誘拐されたというケースです。事件は深夜、地方から都会まであらゆる場所で起きると言います。体験者は得体の知れない恐怖感に襲われ目を覚ますも体が動きません。近くに気配を感じ、数時間後にはまたベッドの中。夢とは異なるリアルな恐怖。あの後、自分に何が起きたのかどうしても思い出せないのです。不安にとりつかれた彼らはセラピーに行き催眠を受け、そこで記憶が失われた時間に誘拐されていたことを証言します。デビッド・M・ジェイコブス博士は30年以上アブダクションの実態を研究しています。証言の多くが作り話にしては内容に共通点が多く信憑性は高いと言います。

 

しかし、この現象は宇宙人による誘拐ではなく別の原因によるものだという研究者もいます。その原因とは私たちの脳です。エイリアン・アブダクションの典型的な例の一つが睡眠中に目が覚めたら体が動かないというもの。そして恐ろしい人影を目撃するという現象。この状態は日本でいう金縛りです。江戸川大学精神生理学の福田一彦さんによると、アブダクションで見る恐ろしい人影は金縛りの仕組みを理解すれば説明できると言います。金縛りの時はリアルな幻覚を感じることがあります。睡眠中、眠りが浅くなると脳が活性化し夢を見やすくなります。この眠りが浅いとき扁桃体という恐怖や不安の感情を司る部分が活性化するため、夢は怖いものが多くなります。ここでさらに眠りが浅くなり意識が目覚め始める一方、体の筋肉が眠りから覚めない場合に起こるのが金縛り。医学的には睡眠麻痺です。睡眠麻痺の時は視覚や聴覚など五感が司る部分も活性化。その結果、自分が部屋で寝ている場面のリアルな幻覚を見ると考えられています。こうした状況が重なると体は動かず、今まさに恐ろしいものが近くにいると感じるようになるのです。この幻覚に現れる恐怖の対象は国や文化によって姿が異なります。アブダクティ(誘拐された人)が見るのは宇宙人ですが、日本人が見るのは主に幽霊、中世ヨーロッパでは夢魔(ナイトメア)など、見知ったことを元にして幻覚が作られるのです。また、記憶を引き出す催眠にアブダクション体験の原因があるとも言われています。

 

スタンフォード大学医学部のデビッド・シュピーゲル教授は催眠という手法には現実には起きていない作り話まで実際の体験の記憶として引き出す可能性があると指摘します。教授が注目するのは前部帯状回と呼ばれる部位。ここは様々な記憶を比べ合わせる機能があります。例えば実際に自分が経験した記憶と本や映画などから得た作り話を比べ、現実の自分と矛盾がない正しい記憶を選び出すのです。ところが催眠を受けると、その比べ合わせる機能が一部に集中してしまいます。すると、作り話の記憶を実際に経験したものと認識して語ってしまう可能性があるのです。アメリカではヒル夫妻事件以来、アブダクションは出版やドラマ、映画などで度々取り上げられてきました。曖昧な記憶や体の不調の原因はアブダクションだったなどという物語が社会に氾濫。こうした社会的な背景にアブダクションの問題の根本があると指摘するのがハーバード大学スーザン・A・クランシー博士です。350人近いアブダクション証言者の聞き取り調査を実施し、その結果多くのケースが日常的な心や体の不調に悩むうちにアブダクションの体験談を見聞きして自分も同じだと思い込んでいると言います。アブダクションは日常で生まれた不安の目が催眠や社会の影響で成長して実った偽の記憶だったのです。