殺害されたのは1970年代、抜群の美貌と歌唱力で日本で人気急上昇中だった東北出身の美人歌手A。彼女は日本での成功を捨て、世界で活躍する夢を追い単身アメリカへ。しかし、待っていたのは猟奇殺人でした。
何者かに全身25か所をメッタ刺しにされ、トランクに詰め込まれているのが発見されたのです。しかも、その傷は顔に集中していたと言います。捜査線上に浮上したのは2人の男の存在でした。
歌手デビュー
歌手Aは1949年、東北の田舎町で生まれました。日本とアメリカのハーフで、高校卒業後に歌手を夢見て上京すると、その美貌と歌唱力を武器に22歳でデビュー。同期のライバルには小柳ルミ子さんや南沙織さんらがいました。
アメリカへ
日本で華々しい歌手生活を送ったAでしたが、ハーフだったこともあり世界への思いが強く、日本での成功を捨て単身アメリカへと渡りました。今でこそアメリカ進出する日本人は当たり前になったものの、当時はかなり珍しいケースでした。
サンフランシスコの小さなクラブから地道な下積み生活をスタートしました。Aは持ち前の美貌と美声を武器に徐々にファンを獲得。プライベートでも恋人ができるなど夢に向かい全ては順調でした。
殺害
1974年4月、警察は通報を受けある家を捜査。血まみれになった部屋には旅行用トランクが転がっていました。中に入れられていたのは変わり果てたAでした。
全身に刃物のようなもので切り付けられた25か所にも及ぶ傷がありました。そして、なぜか傷は顔に集中していました。このニュースは瞬く間に日本にも流れ、有名歌手が巻き込まれた猟奇殺人に世間は騒然となりました。一体誰がAを殺したのでしょうか?
容疑者
浮かび上がってきたのは2人の容疑者でした。1人目の容疑者は恋人X。当時、大学生だった彼は日系2世で、数か月後に控えた大学卒業を前にXは幾度となくプロポーズを繰り返していました。しかし、警察は聞き込みからXがAの浮気を疑っていたことが分かりました。
もう一人の容疑者がAの浮気相手と疑われた男イケメンZ。ZはもともとAの同僚の恋人でした。同僚を介して出会った2人。Zは当時、勤めていた会社とトラブルを起こしたばかりのダメ男でしたが、おしゃべり上手で女性にモテ、以前日本に長く住んでいたこともあり大の日本通でした。そんなZはAを口説いていたと言う噂がありました。
実は殺されたAの手には何かを伝えるかのように紙のようなものが握りしめられていました。それは2枚の航空券。行き先は日本。一枚はAの名前、そしてもう一枚に書かれていたのは恋人Xの名前でした。
しかし、この航空券についてXは何も知らないと言います。航空券を調べると偽物であることが分かりました。実はZは偽の航空券を売りつけ、航空会社をクビになっていました。Aが握りしめていたのはZが作った偽物の航空券だったのです。警察はZを緊急逮捕しました。
事件の真相
Aは殺害される直前、恋人Xと結婚を決意していました。しかし、Aの国籍は日本、アメリカ人のXと結婚するためにはアメリカでの永住権を取得する必要がありました。そこで手続きのため帰国しようとしたAは、恋人Xの航空券もこっそり購入し、結婚の決意をサプライズで伝えようとしていました。
そんな時に近づいてきたのがZでした。Zは勤務先で航空券を偽造して売る詐欺の常習犯。後日、Zの航空券が無効と知ったAはZの家へ。追い詰められたZはAを殺害。こうして、たった20数万円の航空代金を理由にAは命を奪われてしまったのです。
実はZは日本人に対して異常なまでの恨みを抱いていました。そこにはZの生い立ちが関係していました。
Zは幼い頃から任侠映画を食い入るように見て、日本のことが大好きでした。10歳の時に親の仕事の関係で日本へ。しかし、待っていたのは外国人に対するイジメでした。日本が大好きだったZの思いは裏切られたのです。
そして、その反動からか日本への思いは激しい憎悪へと変化。Zは常に所持していた日本刀でAの顔を切り刻み、任侠映画さながら死体をトランクに詰め死体を海に捨てる直前だったのです。
その後、Zに下された判決は10年以上から終身刑に及ぶ不定期刑でした。
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