ミドリムシ 地球を救う!?神秘の生物|サイエンスZERO

世界各地で今もなお続く食糧問題、供給力と安全性が問われるエネルギー問題。人類が直面するこうした課題の解決に期待される生物がミドリムシです。実は、ミドリムシの体内では植物や動物に含まれている59種類もの栄養素が作りだされています。そのため、ミドリムシからとれる栄養素が食料に利用されているのです。さらに、2015年12月にはミドリムシを使った大規模なプロジェクトが動きだしました。

 

ミドリムシ誕生の秘密とは?

東京大学大学院理学系研究科の野崎久義さんは、ミドリムシの生態を遺伝子から調べています。窒素やリンなどの有機物を好むミドリムシは池や水田に多く生息しています。現在確認されているだけで4000種いると言われています。

 

実はミドリムシは植物と動物、両方の性質をかねそなえた生物です。ミドリムシが緑色をしているのは体内に葉緑体を持っているからです。つまり、植物のように光合成をして糖類を作っています。

 

一方で、ヒゲのようなものは「べん毛」と呼ばれ、ミドリムシの足のようなものです。べん毛を使って動物のように水中を移動しています。もともと動物だったと考えられるミドリムシは、なぜ植物の特徴も持つのか、野崎さんは進化の過程を明らかにしようとしました。

 

まずミドリムシの遺伝子のデータを8651個採取。これを2億種類を超える他の生物の遺伝子データと比較。スーパーコンピューターを使ってミドリムシがどのようにして葉緑体を獲得したのかを調べました。その結果、ミドリムシは植物の特徴を藻類から取り込んでいたことが分かったのです。

 

もともとミドリムシの祖先は葉緑体を持たず、バクテリアや植物を捕食して暮らす動物でした。その頃食べていたのが、紅藻という光合成をする植物。ところがある時、紅藻が持つ葉緑体を自らの体の中に取り込んで共存。動物でありながら植物のように光合成をするようになりました。このように他の生物の細胞を自らの体に取り込んで利用することを「細胞内共生」と言います。

 

さらにその後、緑色の藻類を食べるようになり、現在の緑色になったのです。ミドリムシが植物と動物の性質を兼ね備えた生物になったのは、細胞内共生によって進化をとげてきたからなのです。

 

ミドリムシが食糧問題を解決?

ミドリムシの研究がすすめられている分野の一つが食料としての利用です。40年以上に渡ってミドリムシの栄養素の研究をしている大阪府立大学大学院の中野長久さんは、ミドリムシが持つ栄養素には他の動植物にはない特徴があると言います。

 

ミドリムシには植物にしか作れないアミノ酸の他に、動物にしか作れない脂肪酸など59種類の栄養素があることが分かってきました。これは人間が生きていくために必要な栄養素の半分に当たります。さらに、ミドリムシの栄養素は食べたさいに吸収しやすいというメリットもあります。通常の植物がかたい細胞壁で覆われているのに対し、ミドリムシの体は柔らかい細胞膜で覆われています。そのため、植物を食べることで消化吸収できる栄養は40%~50%ですが、ミドリムシは93%の栄養を吸収できるのです。

 

こうした特製をいかして作られたのが、ミドリムシの粉末を混ぜたクッキーです。このクッキーを役立てようというプロジェクトがバングラデシュで始まっています。バングラデシュでは、200万人の子供が栄養不足に陥っているという報告がされています。そこで日本のジャイカと現地のNGOが協力して24の小学校にクッキーを配布。毎日食べてもらうことで栄養不足の改善をはかろうとしています。

 

ミドリムシを培養できる特殊な環境とは?

沖縄県石垣島にミドリムシを純粋培養する施設があります。1年の半分が晴天に恵まれ、日照時間の長いこの地域で年間60トンのミドリムシを培養しています。

 

光合成をすることで成長し増殖するミドリムシを純粋培養するために必要なのが、高い二酸化炭素濃度を保った環境です。水中の二酸化炭素濃度を上げた場合、濃度が10%を超えるとほとんどの動物プランクトンは死んでしまいます。一方、ミドリムシは二酸化炭素27.5%の環境でも生き残れるのです。一体なぜ二酸化炭素濃度が高くても生きることが出来るのでしょうか?

 

二酸化炭素が水に溶けると、炭酸水素イオンと水素イオンが発生します。その水素イオンが生物の細胞に入ると、中性に保たれていた細胞が酸性に。しかし、生物は酸性に弱いのでナトリウムポンプと呼ばれる機能を使い、水素イオンを外へ組みだして体内を中性に保とうとします。しかし、水素イオンが大量に入ると組みだしきれず酸性になり死んでしまうのです。

 

ところが、ミドリムシはナトリウムポンプを沢山持っています。そのため二酸化炭素濃度が高い環境でも生き続けることができると考えられています。酸性に強い特徴をいかすことで、安定して培養することが可能になりました。

 

栄養素だけじゃない!ミドリムシのさらなる可能性

ミドリムシを使ったさらなる研究が、ミドリムシを燃料として利用するというものです。実はミドリムシはある条件のもとにおくと燃料として使えるようになるのです。光を遮断し酸素が少ない状態にしておくと、ミドリムシに変化が起きます。

 

通常の環境ではミドリムシは光合成を行い、二酸化炭素と水から酸素と糖を作ります。この酸素の一部を使って糖を燃焼させることで活動するエネルギーを得ています。ところが、光がなくなると酸素を作れなくなるため糖を燃焼できなくなります。

 

そこで生き延びるために行うのが、蓄えていた糖を油に作りかえることです。実はこの糖を油に作りかえる時にエネルギーが発生するため、光と酸素がなくても生き続けることが出来るのです。こうしてミドリムシが作り出す油は「ワックスエステル」と呼ばれます。ワックスエステルに火をつけると燃えます。

 

2015年12月、行政と5つの企業が協力してワックスエステルを燃料に利用しようというプロジェクトが始まりました。利用するのはジェット機の燃料です。実はワックスエステルはジェット燃料の規格に適合していると言います。

 

ワックスエステルの主成分であるミリスチン酸は、約19℃以下になると液体から固体になります。一方、大豆などの植物から作るバイオ燃料が固体になるのは約39℃以下。ワックスエステルの方が低温でも固まりにくいのです。そのため気温の低い上空を飛ぶジェット機の燃料としてワックスエステルへの期待が高まっているのです。

 

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