地球最古のイーグルハンター モンゴル・カザフ族|地球イチバン

NHK総合テレビの「地球イチバン」で地球最古のイーグルハンターが放送されました。イヌワシは鋭い爪に獰猛な性格、飛行速度は時速200km、一直線に獲物を狙う最強の鳥です。このイヌワシを自在に操る人々がモンゴルの鷹匠たちカザフ族です。その歴史は4000年にも及びます。

 

鷹匠たちが暮らすのは西の果てにある山岳地帯。父のアグライさん(44歳)は代々続く鷹匠の末裔です。アグライさんの娘アイ・チョルパンさんは女性初の鷹匠です。鷹匠のパートナーとなるイヌワシはそれぞれ決まっています。普段は人を襲わないように目隠しをして飼っています。狩に使うのは全てメスです。体が大きくオスよりも狩のセンスがあるからです。イヌワシの体重は6kg、日本の鷹匠が使うオオタカの5倍もあります。イヌワシは翼を広げると2mを超えます。鷹匠たちはイヌワシと共に生き抜いてきました。

 

この大平原で生きる糧となっているのは牧畜です。羊やヤギを飼う遊牧生活を送っています。大切な家畜を守るためにはイヌワシが欠かせません。オオカミなどの外敵を仕留めるのも大事な役割です。鷹狩のもう一つの目的はキツネやウサギなどの毛皮をとることです。冬には氷点下40℃を下回ることもある酷寒の地。動物の毛皮は何にも代えがたい防寒具なのです。鷹匠は地域の長として尊敬を集め、4000年もの間その伝統を受け継いできました。その中でもアグライさんはモンゴルで1番の名手だと言います。アイ・チョルパンさんは偉大な父に憧れて鷹匠となることを決意したのです。しかし鷹匠となったものの、まだ狩に成功したことのない半人前です。狩を成功させるために最も大切なのがエサの管理です。エサは獲物となるキツネやウサギの肉。鷹匠に従えば好物が貰えることをうえつけるのです。しかし、飼いならしすぎると野生を失ってしまいます。普段与えるのは乾燥した赤身の肉をお湯で戻したもの。食欲をそそる血や脂肪分をあえて落とします。狩に向けエサの量も減らしイヌワシの狩猟本能を呼び覚ますのです。狩で得た肉はイヌワシ、毛皮は人間と分け前は平等です。

「私たちカザフ族は太古の昔からイヌワシで狩りをしてきました。その伝統を続ける必要があると思っています。イヌワシを使って獲物をとるのは世界にここだけ。カザフ族はイヌワシと共に生き抜いてきたのです」(アグライさん)

 

鷹狩は動物の毛が伸びる冬が本番です。鷹匠と麓で獲物を追い立てる勢子との呼吸が狩の成否を分けます。勢子は石を投げ大きな声で獲物を威嚇し、山の両脇から追い立て鷹匠が身構える真下に獲物をおびき出すのです。キツネやウサギが姿を現すのは岩から岩へ飛び移る一瞬。それを逃さずにイヌワシを放てるかが勝負です。

 

遊牧民として動物と共に暮らすカザフ族の守り神とされてきたのがイヌワシです。イヌワシは不毛の地で生きる彼らに富をもたらす存在として語り継がれてきました。誇り高き鷹匠は4000年前、ある一人の男から始まったと伝えられています。キツネを襲うイヌワシの勇猛な姿に惚れ込み、狩に使ったその男は一代で財を築きました。以来カザフ族は鷹匠の民となり、今もイヌワシを神聖なものとして5年で野生に返す掟が守られています。

 

アイ・チョルパンさんは中学一年生です。月曜から金曜までは学校の寮で生活しています。放課後はいつも友達と宿題をします。全員に教科書がいきわたらないため1冊をみんなで共有しています。努力家のアイ・チョルパンさんは成績も優秀です。モンゴルでは遊牧生活を続ける人は急速に減っています。この20年の間にその割合は半分に減りました。

「いやだよ。遊牧民なんてださいし貧乏だし。遊牧民は靴が汚れちゃうからいやだ」
「冷害があると家畜が全滅しちゃうよ」(モンゴルの少年)

実は鷹匠の数もこの10年で3分の1に激減。モンゴル全土でわずか100人しか残っていません。それだけに久しぶりの新人鷹匠アイ・チョルパンさんにかかる期待は大きいのです。

「獲物をつかまえて一人前になったらクラスのみんなにも見せたい。いま女性鷹匠は私だけだけど男の人がやっているんだから女の人でもできるんじゃないかと思う」(アイ・チョルパンさん)

 

アグライさんの家の大切な家畜がオオカミに襲われ10匹の羊が食べられてしまいました。この犠牲は一家にとって小さなものではありません。8万円の財産がなくなったのです。8万円は一家の年収の約半分。現金収入は家畜の毛皮を売ることでしか得られません。家畜は財産そのものなのです。生活に欠かせない水も家から離れた平原の真ん中まで汲みに行きます。辺りに水道はなく井戸だけが頼りです。かつてここには豊かな牧草地が広がり、20世帯が暮らす集落がありました。しかし、街での便利な暮らしを求めて、みなこの地を去っていきました。それでもアグライさん一家は狩り場が近く鷹匠の伝統を守れるこの場所を離れるつもりはないと言います。

「家畜とここでずっと暮らしてきたから他に仕事もないし手に職もない。行く場所もない。こっちの生活に慣れているから。子供たちは学校に行かせるけど私たちはここで十分」(アグライさん)

「将来の夢はお医者さん。弟とか妹の生活の援助をしてあげたい。鷹匠は医者をやりながら続けると思う」(アイ・チョルパンさん)




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