本当は学びたい~貧困と向き合う学習支援の現場から~|ETV特集

NHK・Eテレの「ETV特集」で本当は学びたい~貧困と向き合う学習支援の現場から~が放送されました。子供の6人に1人が貧困、これが日本の現状です。彼らの多くが学びたくても学べない厳しい現実と向き合っています。埼玉県にそんな子供たちが集まる場所があります。NPOさいたまユースサポートネットです。代表の青砥恭さんは3年前にこのNPOを作りました。ここに集うのは10代~30代の若者たち。その多くが不登校や中退などで学校に行かなくなった人たちです。ここではNPOの職員や学生、社会人のボランティアがマンツーマンで勉強を教えてくれます。利用料は無料で、運営は企業や団体からの寄付でまかなっています。集まる若者の半数以上が貧困の状態にあり支えを必要としているからです。

 

22歳のあきら(仮名)は中学時代に不登校になりました。あきらは母と姉、弟と4人で暮らしています。家族全員働いていますが収入は少なく不安定です。あきらは小学2年生の時、父親を事故で亡くしました。それ以来、母親が掃除のパートで働きながらあきらたちを育ててきました。あきらは毎日働きづめの母の姿を見続けてきました。仕事と家事に追われて睡眠を3時間しかとれない母に甘えたことを言うわけにはいきませんでした。自分の部屋も机もなく母に勉強を見てもらうことも出来ませんでした。塾や習い事に通えない、修学旅行に行けないなど、他の多くの子に出来ることがあきらには出来ませんでした。

 

塾や携帯電話、インターネットなど現代の平均的な家庭の子供は多くの物を手に入れて育ちます。あきらのように経済的に苦しい家庭の子供はどんどん取り残され、やがて挽回できないほどに差は開いていきます。この格差に苦しめられるいわゆる相対的貧困が先進国で深刻な問題になっています。小学校で学力の基礎を作れなかったあきらは中学に入るとあっという間に授業についていけなくなりました。そんな時、教室で友達のお金が盗まれ真っ先にあきらが疑われました。友達や先生、学校に絶望したあきらは不登校に。そして中学を出るとすぐに働き始めました。今は生活のために建設現場などの日雇いのアルバイトを掛け持ちしています。1日働いて稼ぎは6000円ほどです。

 

14歳のあかね(仮名)は中学1年生の2学期から不登校です。月に数回、中学の相談室に登校することはありますが、たいていは家かNPOさいたまユースサポートネットで勉強しています。不登校になったきっかけは授業についていけなくなったこと。あかねは母親と2人暮らしです。母のはるえさん(仮名)は事務の仕事をしていましたが、体を壊して5年前に退職。現在もフルタイムでは働けず月収は約10万円。貯金を取り崩しながらの生活です。今、公立中学の7割が学習塾に通っています。塾にお金をかければかけるほど成績が上がるというデータもあります。経済的に苦しくて塾に行けない生徒にとって学力の差は開くばかりです。母のはるえさんは何度か塾の資料を取り寄せたものの費用は高額で生活費やこの先の学費のことを考えると諦めるしかなかったと言います。学校教育からこぼれ落ちてしまった娘のためにはるえさんは必死で別の居場所を探し、NPOさいたまユースサポートネットと出会いました。青砥さんはあかねをいきなり勉強に向かわせることはしませんでした。まずは安心できる居場所を作ろうと考えたのです。事前の聞き取りであかねが絵を好きだと聞いて小さな絵画教室を開きました。ここで初めてデッサンなどを本格的に学んだあかねは絵の楽しさや奥深さを知り美術部が盛んな高校に進みたいという夢が生まれました。高校進学という目標が出来て遅れていた中学での勉強を取り戻そうと意欲がわいてきました。

 

国は去年、子供の貧困対策の推進に関する法律を定めましたが具体策はこれからです。国は民間団体などに補助金を出して学習支援などの事業を始めています。対象は生活保護を受けている小中学生15万人。しかし、実施している地域はまだ少なく利用できる子供はわずかです。一方、生活保護に準ずる厳しい暮らしをしている小中学生は140万人。彼らへの公的な学習支援はほとんど行われていません。