球体になる不思議な生き物がマリモです。マリモは大きいものでは直径30cmにもなります。これほど大きな球体になる生き物は地球上に他に存在しません。
マリモはなぜどのようにして丸くなるのでしょうか?
解明!マリモはどうやって丸くなるのか?
世界で唯一のマリモ群生地がある阿寒湖。しかし20cm以上の球状マリモが生息している水域は湖の北側チュウルイ湾という小さな湾だけです。そして遠浅の湖底が広がるチュウルイ湾の中でもサッカーグラウンド半分ほどの面積にしかいません。
マリモの謎に挑んでいるのが若菜勇さんです。マリモの回転は、風によって起きることが分かってきました。
6月になるとチュウルイ湾には3日に1回、5m~10mの南風が吹き込みます。マリモが最も成長する夏は、太平洋からやってくる風が山間を抜けて阿寒湖に到達します。風がうむ波が湾に押し寄せます。
この時、水中では水の粒子が上下左右に揺られ回転するような軌道を描きます。円運動と呼ばれる現象です。この円運動は湖底にいくにつれ次第に弱まります。そして水深2mの浅瀬に住むマリモに絶妙な強さで働きかけます。
すると、マリモは隣り合うマリモや湖の底とこすれあい回転するのです。これによりマリモは岸にうちあがることもなく沖に流されることもなく、その場で回ることが出来ていたのです。
マリモの群生地に存続の危機!?
2013年11月、大型の低気圧が北海道を直撃し、風速18mを超える強風がチュウルイ湾に吹き荒れました。
岸辺には大量のマリモが打ち上げられていました。その多くが長い年月をかけて育った20cm以上のものばかり。群生地のマリモの3分の1が打ち上げられてしまいました。
打ち上げられたマリモはどうなる?
打ち上げられてしまったマリモは、波にもまれバラバラになってしまいました。しかし、丸いマリモは1本1本の藻の集合体です。断片も死んではいないのです。
マリモの欠片たちは冬の氷の下でじっと春を待ちます。春になり雪解けで水かさが増した湾に沖に向けての流れが起きます。すると、マリモの欠片たちは動き始めます。そして、たどり着いた群生地でまた大きく丸く成長していくのです。
消えた世界の球状マリモ
マリモの姿は、かつてヨーロッパの湖でも見ることができたと言います。その一つがオーストリアのツェラー湖。ツェラー湖には150年ほど前までは数多くの球状マリモが群生していました。
球状マリモがいなくなった原因は護岸の整備でした。護岸に当たった波が跳ね返る返し波が発生し、浅瀬にいたマリモは沖へと運ばれてしまいました。光が届かない深場へ運ばれて球状マリモは絶滅したと考えられています。
「サイエンスZERO(サイエンスゼロ)」
マリモ 球体の謎に迫る!
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