事件が起きたのは、バブル真っ只中の1987年。この頃、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍していたのが芸人Xでした。彼は東京・浅草を拠点に活躍し、2度の演芸賞にも輝きました。芸歴は20年以上で月収は500万円、テレビにもひっぱりだこの売れっ子でした。
私生活も幸せそのもので、Xを下積み時代から支えた献身的な妻と3人の子宝にも恵まれ、豪勢な暮らしをしていました。誰もが羨むスター街道を歩んでいました。しかし、お笑い芸人Xにはとんでもない裏の顔がありました。
Xの口癖は「芸人は遊んでナンボでしょ!女と博打は芸のこやしなんだよ」でした。Xは妻の他に2人の愛人を作り、密会場所にアパートまで借りていました。しかも、部屋の表札にはXの他に2人の女の名前を堂々と掲げていたのです。
1人目の愛人である田村友香(仮名)は、背中に大きな花の入れ墨が入った水商売の女でした。そんな女とXはポーカーゲーム店で知り合い意気投合しました。
2人目の愛人である大谷麗子(仮名)は、宝石を売る商社を経営し大成功したセレブ女社長でした。またXが副業として始めたパブでママも務め、その商売の腕を買われていました。芸能界関係者にも片腕として紹介されるなどXの信頼はあついものでした。
1987年9月、Xの家で遺体が見つかったとの通報がありました。警官がかけつけるとXは全身をメッタ刺しにされて死亡していました。第一発見者は芸能事務所の社長Zでした。その時、部屋は完全に施錠され密室状態だったと言います。部屋には「私がお父さんを殺すなんて夢にも思ってなかった」というメモが残されていました。
犯人は…
事件発覚の2日後、大谷麗子の遺体が某海岸で発見されました。しかし、背中には花の入れ墨がはいっていました。そして大谷麗子の財布を調べると、出てきたのは田村友香の免許証でした。しかし、裏を返すと大谷麗子の名前が。つまり田村友香と大谷麗子は同一人物だったのです。顔は整形で別人に作り替えられていましたが、消すことができない入れ墨がありました。
田村友香こと大谷麗子は、Xと出会う前ヤクザの愛人をしていました。しかし、裏の世界で生きることに嫌気がさしヤクザの元を逃亡し、追われる身に。そんな時に出会ったのが芸人Xでした。
女の身の上を知ったXは、名前も顔も変えることをすすめました。氏名を変更した女は、郵便物の誤配送を防ぐため一時的に改名前と後の名前を掲示していました。さらに、美容整形手術を受け、全くの別人になりました。
最初は助けてもらった恩返しとXが経営するパブを手伝っていただけでしたが、生活をともにするようになり本気でXと幸せな家庭を築きたいと思うように。しかし、Xはいつまでたっても妻と別れるそぶりを見せないどころか、ギャンブル中毒で数千万円の借金を抱え金を奪っていくように。時には彼女の商売品である宝石すら持ち出していきました。
そして事件当日、Xから「お前は俺の財布でしかねぇんだよ」と言われました。女はXを殺害し、自分も自殺しました。事件は無理心中とも言える悲しき結末を迎えました。
当時の記事はXの生き様を評しこう綴っています。
どこか憎めないところのある芸人だったが、こやしを毒にしてしまった代償はあまりにも大きかったと言うほかない。
「爆報!THEフライデー」
実録!名前の出せない芸能界事件簿 第7弾
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