今、様々な分野で不思議な水が注目を集めています。
この水につけると、足が速く一日しかもたないと言われるサバの刺身が5日間も食べられるように。養殖魚に与えると2倍の速さで成長し、農作物に使うと根が太くなり天候の変化に対して強くなります。
さらに、医療の分野では細菌やA型インフルエンザを破壊するのです。
ウルトラファインバブルが起こす水産業革命
福岡県北九州市の卸売市場では、ウルトラファインバブルの発生装置が導入されています。使われているのは窒素を使ったバブル。水揚げした魚をバブルが入った氷水につけるだけで驚くほどの効果が得られると言います。
水揚げして4日目の通常のサバは、少し押しただけで身が崩れてしまいますが、バブルの水につけたサバは弾力が残り身が崩れません。
身が崩れる大きな原因は雑菌です。窒素自体には殺菌力はありませんが、窒素バブルには菌を減らす力があるのです。
実は雑菌が繁殖しない秘密は酸素がないことにあります。酸素を含まない窒素バブル水はどのように作るのでしょうか?
まず水中に窒素のバブルを放出。この時ウルトラファインバブルだけでなく大きなバブルも入れます。水中の酸素は空気中と同じ状態になろうとする性質があります。そこで窒素100%の泡があると、その中に入っていきます。大きな泡は浮上するため水中の酸素の大半はなくなります。そこにナノサイズの窒素の泡を追加すると泡は小さいため水中にとどまります。さらに、水面から酸素が入っても窒素バブルの中に入るので酸素のない状態が維持されます。そこに魚をつけることで菌の繁殖を防ぐことができるのです。
ウルトラファインバブルの作り方は驚くほど単純です。装置に水と窒素を入れ圧力をかけながら10分間で60回循環させるだけ。秘密は筒の中に組み合わされた特殊なフィルターにあります。
筒の中には幅が狭い部分と広い部分があり、流れの速さに差が生じます。すると窒素の泡には強さの異なる力が同時にかかり泡がちぎれ細かくなるのです。化学反応などを使わない単純な仕組みだからこそ食品にも安心して使えるのです。
酸素のバブルで驚きの効果
広島県尾道市の養殖場では、酸素のウルトラファインバブルを使って魚を育てています。海水にバブルを混ぜたところ普通の海水で育てたウマズラハギよりも10ヶ月で1.5倍の重さに成長。さらに、トラフグは10ヶ月も速く出荷サイズに成長しました。
その秘密は海水中の酸素の量です。ウルトラファインバブルは海水から抜けないため、通常より多くの酸素を水中にとどめておくことができます。海水中の酸素の量は通常の海水の約5倍にもなると言います。その結果、魚が活性化しエサをよく食べるようになったのです。
酸素のバブルは農業の分野でも注目されています。高知県のある農家では生姜を育てるのに酸素のバブルを使っています。これまでショウガを育てるにあたっては天候の変化に弱いことが悩みの種でした。そこでこれまで使っていた地下水を酸素バブル水に変えました。水中の酸素の量は約5倍になります。
地下水で育てたものと比べてみると根の太さが違います。根から多くの酸素を吸収したことで天候の変化にも強いショウガが育ち、今後収穫量が上がると見込まれています。
医療にも応用 細菌やウイルスを破壊せよ
九州大学先端医療イノベーションセンターの大平猛さんは、ウルトラファインバブルを使って細菌を殺す研究をしています。
使うのは殺菌効果のあるオゾンで作ったバブル水です。研究を進めていく上で大きな転機になったのが2014年12月。超高圧電子顕微鏡を使って極小の泡のサイズを確認できたのです。
オゾンのウルトラファインバブルを顕微鏡で観察したところ、50ナノメートル以下のバブルが確認できました。従来考えられてきたよりも約10分の1程も小さいことが分かったのです。
大平さんが注目したのはこのサイズ。一般の細菌の大きさは約100ナノメートル以上。つまりバブルの方が細菌よりも小さいことを示しています。このことから、医療への応用がすすめられると考えたのです。
極小のバブルが細菌のいる場所まで辿り着き菌を殺すことができると言います。実験の結果、大腸菌やサルモネラ菌、腸炎ビブリオ、白癬菌などに効果があることが分かりました。これは従来の抗生物質を使った治療と比べても効果的だと言います。
さらに、A型インフルエンザなどのウイルスも破壊できることが分かりました。ウルトラファインバブルはウイルスを物理的に破壊できるため、どんなウイルスに対しても応用がきくのではないかと期待されています。
現在、エボラウイルスを破壊できないかカナダで研究が行われています。
「サイエンスZERO(サイエンスゼロ)」
日本発 驚異の泡!ウルトラファインバブル
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