ソメイヨシノの起源に迫る|サイエンスZERO

ソメイヨシノは日本全国に数百万本あるのではないかと言われ、みな同じ遺伝子を持っていると言われています。

どう確かめる?ソメイヨシノのクローン性

森林総合研究所では、全国各地の様々な桜を遺伝子レベルで分類しています。全国10箇所からソメイヨシノのサンプルを集めました。

ソメイヨシノのクローン性が遺伝子レベルで研究され始めたのは1990年代のことです。DNAフィンガープリント法という手法が使われましたが、その精度は現在ほど高いものではありませんでした。

今回用いられたのはDNA内のSSRを比較する方法です。SSRはDNAの4種類の塩基がCACACACAなど単純な繰り返しを見せる部分です。こうした単純な繰り返しは、例え外見が似ていても個体ごとにばらつきがあります。そのためSSRの繰り返しが一致していたら、それはクローンの可能性があるのです。

この研究で使われたSSRは全部で17ヶ所。これが全て偶然に一致してしまう確率は1兆分の1。つまり全て一致すると非常に高い精度でクローンだと言うことが出来るのです。

分析の結果、全てのSSRが一致しました。やはりソメイヨシノは非常に高い精度でクローンだったのです。

ソメイヨシノが最初にできたのは江戸時代の後期と言われています。そこからソメイヨシノのクローン栽培が始まりました。接ぎ木と呼ばれる手法は、今でも一般的に行われている桜の増やし方です。

遺伝子のブレンドを解き明かす最新研究

多摩森林科学園では、全国各地から500種類ものサクラの品種を集め保存しています。主任研究員の勝木俊雄さんは花の色や形、木の大きさなど主に形態からサクラの分類に取り組んできました。勝木さんたちは今ソメイヨシノなどの栽培品種の起源を明らかにしようとしています。

まず行ったのは野生種のサクラのSSRを分析して、それぞれに固有の遺伝子のパターンを割り出すこと。このとき使ったSSRは26ヶ所。目印となるポイントを増やすことで、異なる品種を見分ける精度を上げました。

次にソメイヨシノのSSRのパターンがどの野生種と似ているかを比較しました。

結果
  • エドヒガン 47%
  • オオシマザクラ 37%
  • ヤマザクラ 11%
  • 不明 5%

この結果はソメイヨシノの起源についてのこれまでの推理に修正を迫るものでした。

これまでの研究から、ソメイヨシノの親候補としてあげられていたのはオオシマザクラとエドヒガンでした。今回の解析をもとに勝木さんはソメイヨシノの起源について新しい推測を始めています。

ソメイヨシノの片方の親はエドヒガン、もう片方の親は、オオシマザクラとヤマザクラが交雑したものではないかというのです。オオシマザクラとヤマザクラの交雑種は人里でよく見られます。そのため全くの自然から生まれたものではないと考えています。

新説が登場 ソメイヨシノの起源

従来ソメイヨシノの発祥とされてきたのは、駒込駅の近くの染井村です。江戸時代後期、染井村の職人が発見し全国に広がっていったと考えられてきました。

しかし、新しい仮説では駒込ではなく上野公園に原木があると言うのです。そこは当時は寛永寺の敷地で花見の名所でした。ここがソメイヨシノの起源だととなえるのは、千葉大学大学院園芸学研究科の中村郁郎教授。管理番号136番のソメイヨシノです。

中村教授が注目しているのは、桜同士の位置関係です。この周辺には原木候補のソメイヨシノの他にも古い桜が並んでいます。注目すべきはその種類。4本のソメイヨシノの他にコマツオトメ、エドヒガン系など様々な種類が並んでいるのです。

中村教授が注目したのは、自家受精できない性質「自家不和合性」とその機能をになうS遺伝子。2組の遺伝子を持つサクラは、2つのS遺伝子を持っています。例えばS1S2という遺伝子を持つサクラには、同じS1やS2を持つ花粉は受精できません。違う遺伝子を持つ花粉だけが受精できるのです。

受精が高い確率で成功するように本来S遺伝子は不要です。オオシマザクラだと60種類、エドヒガンでは100種類あると考えられています。無関係の個体のS遺伝子が一致することはあまりありません。

上野公園のサクラの場合、ソメイヨシノ136番を含む7個体は片方のS遺伝子が同じでした。さらに、ソメイヨシノ136番と142番はもう片方のS遺伝子も一致。たまたま一致する確率は1万分の1程度だと中村教授は考えています。

そして141番、143番、144番も両方のS遺伝子が一致しました。これら合わせて5本のサクラは兄弟ではないかと中村教授は考えました。

中村教授の仮説

染井村の園芸職人の庭先で桜の木が実をつけ、どのような花を咲かすのかを確かめるために植えたのが上野。その中の1本のサクラの咲き方が気に入られ各地に接ぎ木され始め、これが後のソメイヨシノなのではないか。

「サイエンスZERO(サイエンスゼロ)」
ソメイヨシノの起源に迫る

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