iPS細胞10年 夢の医療はここまで来た|サイエンスZERO

NHK・Eテレの「サイエンスZERO(サイエンスゼロ)」でiPS細胞10年 夢の医療はここまで来たが放送されました。人類の夢だった再生医療を実現しうるiPS細胞は10年前、山中伸弥(やまなかしんや)さんによって発表されました。今、人への医療応用へと大きく動きだしています。2016年に日本再生医療学会で注目されたのはiPS細胞で作られた細胞や臓器とその実用性です。人類は今、作りたい臓器や細胞を高い精度で作る、そんなレベルに到達しました。

 

カギとなるのは「山中ファクター」と呼ばれる4つの遺伝子です。これを細胞に入れると時間が戻り、3週間程でiPS細胞になります。iPS細胞は「万能細胞」とも呼ばれ、どんな細胞にも成長させることができます。iPS細胞の使い方の代表的なものが再生医療です。

 

臓器をつくる技術はここまで進んだ!

京都大学iPS細胞研究所の櫻井英俊(さくらいひでとし)准教授はiPS細胞を使って筋肉の病気を治す研究を行っています。筋肉のもとになるのは人の皮膚から作ったiPS細胞です。筋肉をつくるにはまずiPS細胞を大量に増やしていきます。そしてドキシサイクリンを加えられるとiPS細胞の核の中ではMYODという遺伝子が発現。このMYODが細胞の中の筋肉になる部分の働きだけを強め、他の部分をブロックすると言います。

櫻井さんは筋ジストロフィーの中でも特に重度とされるデュシェンヌ型の治療を目指しています。しかし、作り出した細胞をそのまま移植すれば病気が治るわけではありません。患者の細胞からiPS細胞を作りますが、そこには患者の遺伝情報がコピーされています。これをもとに筋肉の細胞を作っても病気を引き起こす遺伝情報は残ったままなのです。

 

どう解決?遺伝情報コピー問題

櫻井さんと堀田秋津(ほったあきつ)助教が行っているのはゲノム編集。筋ジストロフィーの患者の細胞から作ったiPS細胞にクリスパー・キャスというたんぱく質を入れ込みます。するとクリスパー・キャスはDNA上を移動し、筋ジストロフィーの原因となっている部分にたどりつき、酵素を出して遺伝子の一部を切るのです。その後、遺伝子は再びくっつきます。筋ジストロフィーの原因だった部分を切ることで、ちゃんと働く遺伝子になるのです。ただし、ゲノム編集による傷が、がんを引き起こさないかなど安全の確認が必要だそうです。さらに、治療が可能になっても自分自身の細胞を使うという自家移植のため、多額のお金(5000万円くらい)と1年近い時間が必要になります。実は安全性を確保しながらお金と時間の問題を解決する新たなアプローチが始まっています。

 

安全 お金 時間 一挙解決の秘策とは

それはiPS細胞ストックのプロジェクトです。扱っているのはボランティアから提供を受けた特別な細胞です。ここからiPS細胞を作ると、それをもとに作られる臓器や組織は他人に移植しても拒絶反応を起こしにくいと考えられています。こうして作られたiPS細胞は冷凍保存し、出番の日を待ちます。ゲノムの情報も徹底的にチェック。あらゆる角度から安全性を確かめます。山中教授はiPS細胞ストックを国際的なプロジェクトにしようと奮闘中です。

 

iPS細胞が創薬の常識を変える!

iPS細胞の医療応用へのもう1つの大きな柱が創薬です。京都大学iPS細胞研究所の妻木範行(つまきのりゆき)教授は軟骨無形成症という難病に効く薬の開発に挑んでいます。軟骨無形成症とは骨が成長しにくい病気です。3万人に1人が発症する患者数の少ない難病です。患者数の少ない難病に対して製薬会社は採算の面から手を出しづらく薬の開発は進んできませんでした。こういう難病にこそ力を発揮するのがiPS細胞の技術です。妻木さんのチームでは4年前から薬の開発を行っています。

患者の細胞からiPS細胞を作ると病気を起こす遺伝子が引き継がれます。こうして手に入れた沢山の細胞を使って妻木さんたちは世の中で使われている薬を一つずつ試していきました。これがiPS細胞を利用した創薬の方法です。そのうちの一つがコレステロールを下げる効果のあるスタチンです。スタチンを入れて2ヶ月間培養すると正常な軟骨に育ったと言います。現在、研究チームは治験に向け、マウスを使って投与するスタチンの量をどこまで減らすことが出来るか調べています。コレステロール値が正常な子どもが飲んだ場合に、どのような影響が出るか見極めるためです。

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