天ぷら油を燃料に 植物性ディーゼル燃料|夢の扉+

ユーズ代表の染谷ゆみ(そめやゆみ)さんは、東京のどこかに1万トンもの燃料が手付かずのまま眠ってるといいます。

2013年2月、目黒川一帯をイルミネーションで彩る光のイベントが開催されました。この無数の光の電力のもとになっているのが、家庭から出た天ぷら油。染谷ゆみさんは東京とその近郊200箇所に天ぷら油を集めるための「廃食油回収ステーション」を設置。各家庭から持ち寄ってもらっています。

実は家庭用の天ぷら油は回収の義務がないため通常は廃棄されてしまいます。そこで染谷ゆみさんは独自に回収するシステムを作り上げました。こうして集められた天ぷら油は墨田区にある染谷商店で燃料に変わります。

1ヶ月で集められる油は約5トン。それらが巨大なタンクに集められ不純物が取り除かれていきます。そして化学反応によって天ぷら油の95%が軽油の代わりとなるバイオディーゼル燃料に生まれ変わるのです。

もともと環境問題に関心のあった染谷ゆみさんは高校卒業後、OLをへて油をリサイクルする稼業の3代目として働き始めました。回収が義務づけられている業務用の油を集め石鹸やロウソク、肥料などの原料を作るのが主な仕事でした。

ある日、汗と油にまみれ油を回収していると「どうしてあんたみたいな若い娘が」と言われてしまいました。染谷さんは、この仕事の現場を変えてやろうという悔しさと同時に奮い立ったといいます。

そんな時、アメリカで大豆油を原料としたバイオ燃料を開発したというニュースを目にしました。染谷ゆみさんは「大豆油で燃料ができるなら天ぷら油も燃料になる」と思ったのです。そして染谷親子の挑戦が始まりました。

もともと廃油を扱う工場のため、不純物を取るのはお手の物。でも、そこからどうやって燃料にするのか。適した触媒を探し求め試行錯誤を繰り返すこと1年。ついに使用済み天ぷら油からバイオディーゼル燃料を開発することに成功。この燃料は大気汚染の原因となる硫黄酸化物はほぼゼロ。黒煙は軽油の半分以下です。しかも軽油の代わりになるのです。

天ぷら油燃料は「植物性ディーゼル燃料(Vegetable Diesel Fuel)」と名づけられました。この画期的な燃料は墨田区をかわきりに八王子市や所沢市などで様々な工業車に採用されていきました。ゴミ同然だった天ぷら油は資源に生まれ変わったのです。

そんな染谷ゆみさんが挑む次なる挑戦は「東京を油田にする」という壮大な計画。「TOKYO油田2017」は2017年までに東京とその近郊の天ぷら油を集め燃料化する計画です。

東京で捨てられる家庭用の天ぷら油の量は年間1万トン。全てを回収することが出来たら北海道宗谷岬から鹿児島までの約3000kmを28000台のトラックが走行できる燃料になります。もし全国の天ぷら油が回収できれば量はその10倍に。ところが、家庭用の油は業務用と違い回収の義務がありません。

染谷ゆみさんは、廃食油回収ステーションを200ヶ所から2000ヶ所に増やすことを計画しています。

「夢の扉+」

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