がんの匂いを嗅ぎ分ける!驚異の生物 線虫
2015年3月、がん患者の尿のニオイを嗅ぎ分けることで話題になったのが線虫です。線虫の体長はわずか1mmで、多くは土の中に生息しています。線虫の鋭い嗅覚に目をつけた九州大学大学院の廣津崇亮さんが研究したのが、線虫を使ってがんのニオイを識別する実験でした。
廣津崇亮さんは、ステージⅠ~Ⅳまでの食道がんや胃がんなど7種類のがん患者24人とがんではない人の218人の尿サンプルを調べていきました。実験の結果、がんではない人の尿からは線虫は遠ざかっていました。218人中207人をがんではないと識別。95%の精度でした。
一方、がん患者の尿には近づいていきました。24人中23人をがんだと識別。95.8%という精度でした。線虫は高い確率でがん患者の尿を識別することが分かったのです。
なぜ線虫は人間では検知できないニオイをかぎ分けることができるのでしょうか?線虫の頭部にある鼻には、細胞の表面に嗅覚受容体があります。ここでニオイを感知し、その情報を神経回路に送ります。ニオイは匂い分子という集合体からなります。このニオイ分子が嗅覚受容体と結合することでニオイを感知する仕組みです。
実は線虫には嗅覚受容体の種類が人間の3倍以上の1200種類もあります。そのため、多くの種類のニオイを嗅ぎ分けることができるのです。
線虫だけじゃない!世界で活躍中の生物とは?
アフリカオニネズミの嗅覚受容体の種類は、人間の3倍にもなります。
この優れた嗅覚を地雷の探知に利用しています。人間が地雷を探すと2日間で100㎡しか調査できませんが、同じ面積をアフリカオニネズミは30分で調べることが出来ます。さらに、体重が1~2kgしかないので地雷に乗ってしまったとしても心配無用なのです。
アフリカオニネズミは「ヒーローラット」と呼ばれ、アフリカだけでなくカンボジアやラオスなどでも活躍しています。
昆虫が嗅覚センサーとして活躍!
遠く離れた花の蜜を嗅ぎわけるミツバチの嗅覚の感度は、人間をはるかに超えます。ミツバチに爆発物のニオイを嗅がせ、その後に砂糖水を与えます。こうすることで爆発物のニオイに条件反射するように。
こうして訓練したミツバチを箱に入れ空港で爆発物の検査に使っています。イギリスの他にアメリカ、クロアチアなどでも研究が進められています。
「サイエンスZERO(ゼロ)」
超嗅覚!驚異の生物センサー
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