戦後70年ニッポンの肖像 バブルと失われた20年 何が起きていたのか|NHKスペシャル

NHK総合テレビの「NHKスペシャル」で戦後70年 ニッポンの肖像 豊かさを求めて 第2回 バブルと失われた20年 何が起きていたのかが放送されました。阪和興業は戦後間もない1947年に北茂(きたしげる)さんと2人の兄が設立した会社でした。日本の高度成長を支えた鉄鋼の流通を担い急速に売り上げを伸ばしました。国内外に30近い拠点を展開し、社員は1000人を超えていました。70年代、2度のオイルショックを境に日本の高度成長に陰りが見え始め、鉄鋼の需要もそれまでのような増加が望めない時代が来ようとしていました。創業以来、右肩上がりを続けていた本業の売上高は80年代横ばいに転じました。本業が頭打ちになる中、財テクに乗り出していった北茂社長。この頃、日本を取り巻く世界の金融市場で大きな変化が起きていました。アメリカでは国境を越えた資金調達や金利の自由な設定などが進められていました。当時アメリカは日本にも金融自由化を働きかけていました。金融自由化でもたらされた新たな投資手法は日本企業を財テクに駆り立てました。阪和興業は当時、日本より金利の低かった海外の市場から資金を調達し、その資金を金利の高い国内の銀行預金や株式・為替で運用し増やしていったのです。財テクを始めて5年が経った1989年、利益は本業の2倍以上に膨れ上がっていました。なぜそれほどまで阪和興業の利益は膨らんだのでしょうか?深く関わっていたのは山一證券です。

 

阪和興業と山一證券の間で繰り返し行われていたのが違法な取引「ニギリ」です。利回りを保証し損をさせないと約束する代わりに巨額の取引を持ちかけていたのです。財テクブームの影で密かに行われていたニギリ。株価は急激な上昇を見せていきました。1985年、1万円台だった株価は4年後には3倍以上に。同じ頃、都心の一等地でも異常な事態が進んでいました。麻布建物の元社長・渡辺喜太郎さんは港区麻布に駐車場用の土地を持っていました。80年代後半、銀行から巨額の融資を持ちかけられるようになったと言います。それを促したのも金融自由化でした。それまで企業への融資で利益をあげていた銀行は、多くの企業が自ら市場で資金調達をするようになり新たな融資先の開拓を迫られました。目をつけたのが地価の上昇で業績を伸ばしていた不動産業への融資でした。渡辺さんは銀行の融資をもとに都心に100ヶ所以上土地を購入。ハワイのリゾートホテルやゴルフ場も相次いで買収し、資産は一時7000億円を超えました。

 

バブルの引き金とされるプラザ合意。1985年9月、アメリカが求めるドル安を先進5カ国が協調して目指すことを決めました。背景にあったのが当時巨額に膨れ上がっていたアメリカの貿易赤字です。とりわけ深刻だったのが日米貿易摩擦でした。アメリカでは自動車などの輸入が増加。批判が強まっていました。そのため日本に対し円高誘導、金融緩和を求めてきたのです。プラザ合意から4ヶ月が経った1986年1月、日銀は金融緩和に動きだしました。手段は公定歩合の引き下げ。1月、3月、4月と立て続けに金利を下げました。短期間に繰り返された利下げで、銀行による不動産業への融資が拡大し地価の上昇が加速。日銀の中でバブルへの警戒感が強まり出したのはこの頃でした。しかし不動産業への異常な融資に気づきながら日銀はこの後も利下げを続けていくことになりました。プラザ合意をうけて進んだ円高が日本国内の輸出産業を直撃。宮澤大蔵大臣は、アメリカにこれ以上円高が進まないよう協力を求めました。しかしベーカー財務長官はアメリカが期待するほど貿易赤字が減っていないことなどを理由に、日本にさらなる利下げを求めました。その後も日銀による利下げは行われ、1987年2月には公定歩合は戦後最低の水準まで低下。銀行からの不動産融資は一段と拍車がかかり東京の地価はさらに上がり、地価の上昇は郊外にも広がりました。日銀の理事たちの間では利上げに転じるべきではないかという議論が持ち上がっていました。しかし、その矢先の1987年10月、ニューヨーク市場を株価の大暴落が襲いました。株価急落はアメリカから日本、そして世界へと伝播。日銀は2年余り利上げを行わず、ようやく利上げに動いたのは1989年5月。この間バブルの膨張は続き株価は3万8000円を突破しました。

 

1990年1月、株式市場で異変が始まりました。株価が下落に転じたのです。財テクを進めてきた阪和興業の北茂社長は巨額の損失を出し辞任。会社はその後、本業への回帰を掲げ経営の建て直しに8年の歳月を要しました。顧客獲得に明け暮れニギリを拡大させた山一證券は、損失隠しを続け自主廃業に追い込まれました。地価も急落していきました。

 

日本が熱狂したバブルから30年。バブルのリスクをはらむ金融緩和は世界中に広まり、膨張するマネーをいかにコントロールするかが今問われています。




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