エドガー・ドガはオペラ座の踊り子たちに魅了され、その可憐な姿を生涯に渡って繰り返し描き続けました。
エドガー・ドガ「青い踊り子たち」
「青い踊り子たち」は縦85cm、横75cmの油彩画です。チュチュと呼ばれる青いバレエ衣装を着た踊り子が4人、舞台のそで口でどこか緊張した様子で出番を待っています。その奥に見えるのが本番中の舞台。しかし、踊り子たちは何を踊っているのか影のように描かれているだけです。よく見ると4人の踊り子たちの表情もはっきりとは描かれていません。
当時、エドガー・ドガは50代で人生最大の危機にさらされていました。もともと芝居やバレエが好きで20代からオペラ座へ通っていたエドガー・ドガが本格的に踊り子を描き始めたのは、30歳を過ぎてからです。
エドガー・ドガは、気に入った踊り子をアトリエに呼んでスケッチしていました。その中から選んだものを最終的に組み合わせて1枚の作品に仕上げていました。こうした手法が注目を集め、エドガー・ドガは踊り子の画家として名声を高めていきました。
ところが「青い踊り子たち」では画法が驚くほど変貌しています。この絵を描いていた頃、エドガー・ドガの視力は著しく低下し、絵の具をつけた筆先すらハッキリ見えなかったと言います。
「青い踊り子たち」でエドガー・ドガは舞台の背景に描かれた点描を指で描いていました。エドガー・ドガは新たな表現の可能性を探っていたのです。
さらに、ドレスの青い輪郭線をわざとずらして青を塗り線と色の境界を曖昧にしています。これは20世紀の画家たちのスタイルを先取りした画期的な技法です。
エドガー・ドガは生涯独身だったため「青い踊り子たち」をどうやって描いたのか謎のままです。ところが、亡くなった後にアトリエから蝋を使ってエドガー・ドガ自身が作った小さな彫刻が大量に発見されました。
視力が弱くなっていく中、エドガー・ドガが絵を描くためにモデルの代わりに使ったものです。クルクルと彫刻を回しながら、目の奥に残る踊り子たちの踊りの記憶を懸命に描いていたのです。
「美の巨人たち」
エドガー・ドガの「青い踊り子たち」
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