2010年、大相撲野球賭博事件が起きました。現役力士や親方など27名が野球賭博に関与した事を認め、19名の現役力士が謹慎休場に。そして理事長以下執行部28名に厳しい処分が下されました。
その渦中にいたのが元関脇の貴闘力(たかとうりき)さん。当時42歳で、親方として大嶽部屋を開いていました。そんな彼が野球賭博の関与を認め親方を辞めました。さらに、昭和の大横綱・大鵬の三女と結婚し4人の息子がいましたが離婚。貴闘力さんは全てを失い表舞台から姿を消しました。
親方を辞めて無職になった貴闘力さんは、江東区に焼肉店をオープン。以来、自らもお店に出て働いています。そして都内にある一軒家で従業員と共に男6人で暮らしています。料理や掃除、洗濯など家事は貴闘力さんが進んでやっています。
一体なぜ貴闘力さんは野球賭博に手を出したのでしょうか?
貴闘力さんは、神戸で6人兄弟の長男として生まれ育ちました。父親はギャンブルに巨額をつぎ込み、1日に2000万円を勝つこともあれば、一晩で1億円を超える借金を作ることもあったと言います。
そんな非合法なギャンブルをする父親を見て育った貴闘力さんは、ギャンブルに対する抵抗が一切なかったそうです。
1983年、15歳の貴闘力さんは藤島部屋に入門。藤島部屋といえば猛稽古が有名で、ギャンブルのことなど考える余裕もありませんでした。
ところが1989年、十両に昇進した貴闘力さんは知り合いに誘われ競馬に。偶然にも万馬券を的中させてしまいました。その瞬間、今まで経験したことのない高揚感を味わったと言います。これを機にギャンブルの魅力に取り付かれてしまいました。
貴闘力さんは1993年に大鵬の三女と結婚。大鵬家の婿養子になりました。大鵬は貴闘力さんを実の息子のように思い期待していたと言います。結婚後、4人の子宝にも恵まれ2000年には幕尻での平幕優勝という史上初の快挙を成し遂げました。
しかし、勝負の世界で生きた男はギャンブルにも無謀な大金をつぎ込みました。競馬の1レースに投入する金額は450万円。しかも一頭の馬に賭ける一点買いというハイリスクな勝負。現役を引退し親方になってもギャンブルを続け、損した金額は5億円にもなりました。
40歳の時、さらなる刺激を求めた貴闘力さんは違法なギャンブル野球賭博に手を染めてしまいました。野球賭博は試合の勝敗・点差を電話やメールで予想する非合法のギャンブルです。1週間ごとの清算で勝った場合は仲介人の口座に振り込まれ、負けた場合は郵送で現金を支払うというもの。
そして2010年6月に野球賭博事件が明るみに。ことの発端は現役力士Kが暴力団関係者から野球賭博の口止め料1億円を払えと脅されているという雑誌の記事。その後、現役力士や親方など27名が野球賭博に関与したことを認めましたが、証拠不十分のため逮捕などの処分には至りませんでした。
貴闘力さんは親方の座をおり現役力士だけは守ろうと必死に訴えました。さらに妻と離婚。仕事・地位・家族すべてを失いました。
大鵬さんとは絶縁状態と報じられていましたが、実は貴闘力さんは離婚後も大鵬さんから自宅に招かれ再出発のために始めた焼肉店の弁当を味見してもらっていたと言います。病床の身でありながら大鵬さんは迷惑をかけた貴闘力さんを気にかけていたのです。
これ以上お世話になった人たちを裏切りたくないと、貴闘力さんはギャンブルを断つ努力を続けています。
「爆報!THEフライデー」
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