天の川銀河の姿に迫る|サイエンスZERO

最新の観測で見えてきた天の川銀河の全体像とは?

 

天の川銀河は本当はどんな姿をしているのか、その謎に挑戦しているのが鹿児島大学宇宙物理学研究室の中西裕之准教授です。

 

観測したのは天の川銀河の中の水素ガスから出る電波です。この電波を観測するのには理由があります。遠くの星々を観測する場合、可視光で見える星の光は宇宙空間に漂うチリに遮られるため地球からは正確な観測が出来ません。

 

しかし、水素ガスに含まれる電波は塵を通過する性質があるため正確な観測が出来るのです。また星が多く存在するところでは、水素ガスの濃度が高いことが分かっています。つまり、電波も強くなるのです。こうして、どれくらいの距離からどれくらい強い電波が来ているのかを調べます。すると水素ガスの分布、すなわち天の川銀河の星の分布が浮かび上がるのです。

 

中西さんは、世界5か所にある電波望遠鏡のデータを分析。天の川銀河の立体的な地図を、世界で初めて発表しました。

 

銀河系を輪切りにすると、外側の方では円盤が大きくゆがんでいることが分かりました。右の端に注目するとやや上に曲がっています。先端部分は他の部分より5000光年近くも上がっていました。一方、左の端はいったん3000光年下がって再び上がっているのが分かります。何と天の川銀河の渦巻きは真っ平らではなく大きく歪んだ形をしていたのです。

 

これはマゼラン雲が関係しているのではないかと言われています。銀河系から20万光年離れた小さな銀河ですが、秒速380kmという速さで天の川銀河の近くを通り過ぎています。マゼラン雲が通り過ぎていくと、その辺にある物質を波立たせるのです。そのため、天の川銀河のまわりの物質が波立って、その影響が銀河の円盤のゆがみに影響していると考えられています。

 

また、天の川銀河の形を変化させる要因はマゼラン雲以外にもあることが分かってきました。マゼラン雲は矮小銀河ですが、天の川銀河の周りには40個くらいの矮小銀河が見つかっています。それらは天の川銀河の周りをぐるぐる回っています。

 

矮小銀河で判明!天の川銀河の真の姿

バージニア大学のスティーブ・マジュウスキ教授が明らかにしたのは、地球から約8万光年離れた「いて座矮小銀河」の形です。発見のもとになったのは、地球から全方向の星をとらえた画像です。うっすらと線のようなものが見えるのに気づき、それがいて座矮小銀河でした。

 

マジュウスキさんは、さらに矮小銀河の観測を続けました。注目したのは星の色です。星の色はその質量によって大きく変わります。質量の大きな星は核融合が盛んなため温度が高く青く光ります。そして質量が小さいほど赤く光ります。

 

また、その色によって星の寿命も違ってきます。青く光る星は、わずか数百万年で寿命を迎えます。一方、赤い星は長生きで百億年以上生き続けます。矮小銀河は、その多くが百億年を超える赤い星で構成されていることが分かっています。

 

そこで、全方向の星をとらえた画像の中から赤く光る星を抜き出し、いて座矮小銀河の形を調べることにしました。すると、いて座矮小銀河から銀河系を1周するような赤い星のリボンが見つかったのです。その後、様々な矮小銀河から星のリボンが出ていることが明らかになってきました。現在分かっているだけで、その数は26にもなります。

 

こうした観測結果から見えてきた天の川銀河の真の姿は、矮小銀河から無数に出た星のリボンが幾重にも渦巻き型の銀河を取り囲んでいるという幻想的な姿だったのです。

 

「サイエンスZERO(ゼロ)」
七夕!天の川銀河の姿に迫る

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