タイに住むパンちゃん(7歳)とピンちゃん(7歳)は体が繋がっている双子の姉妹です。二人とも知能レベルに問題はありませんが、4本の手に2本の足という独特の体をしています。互いの手足を器用にコントロールして歩きます。
2人が生まれてすぐ入院したのがラマティボディー・バンコク病院。レントゲン写真によると、2人の背骨は一つの骨盤に繋がっています。2人には心臓と肺、胃はそれぞれありますが、肝臓は一つ、そして互いの小腸が途中で繋がり、大腸は一つとなっています。
つまりパンとピンは、上半身は2人ですが下半身は1人なのです。そして2人はその命さえも共有していると言います。血液や神経を共有しているので、片方の体調が悪化すると他方も悪化します。片方が死ねば、もう一人も死ぬのです。
パンとピンのように体がくっついている双子は結合双生児と呼ばれ、5万人~20万人に1人の割合で生まれてくると言います。なぜ体がくっついてしまうのでしょうか?その答えは人の命が生まれる最初の2週間にありました。
受精卵は分割を始め、細かい細胞の塊になりながら子宮を目指します。そして受精から5日目、胚盤胞という状態になり子宮に着床していきます。注目すべきは内細胞塊という部分です。内細胞塊の分離によって双子が生まれる場合、受精から13日目以内に分離すれば通常の形となります。しかし、内細胞塊の分離が13日目以降になったり、不十分だったりすると結合体になる可能性があるのです。
結合体の種類は多岐にわたります。日本でもいくつもの症例が報告されています。出生前診断が進んでいる国では結合体が見つかると、ほとんどの場合中絶するのが現実です。しかし、タイのパンとピンは生まれてから初めて結合体であることが分かったのです。
パンとピンは学校のロッカルームを借りて暮らしています。面倒をみているのは祖父のサネー・ロンポーエンさん(57歳)と再婚相手の祖母ノックノーイ・ポンチャムナーンさん(41歳)です。
2人の母親は生まれた直後から育児を放棄。祖母が母親代わりとなりました。両親が双子のもとを去ったのは数年前。遠くの町へ出稼ぎに行ったままです。祖父は学校で住み込みとして働き、祖母は校内にある小さな屋台を切り盛りすることで生計を立てています。
かつて結合双生児として世界の注目を集めたベトナムのベトちゃんとドクちゃん。ベトが7歳の時に脳の病気で意識不明となりドクの命にも危険が及んだため分離手術が行われました。手術は成功し、それぞれに1本ずつの足が残されましたが、ベトは脳に障害を抱えたまま寝たきりとなり26歳の時に亡くなりました。一方、ドクは結婚し父親となりました。子供は男女の双子でした。
実は結合双生児の4割は死産です。例えこの世に生を受けても3割以上が翌日には亡くなってしまいます。パンとピンが今ここに生きていることが一つの奇跡なのです。
インドでもたびたび結合双生児の誕生が報告されています。ガンガさん(48歳)とジャムナさん(48歳)もまた結合双生児です。2人の身の回りの世話をするのは親戚の女性と使用人の少年です。
見世物小屋で働いています。入場料は1人10ルピー(約16円)です。ガンガとジャムナはチップを貰うと立ち上がります。さらに貰うと回ってみせます。ガンガとジャムナは物心ついた時からこうしてお金を稼いできました。
一緒に暮らしている家族も2人の稼ぎによって生活しています。昼間、家に閉じこもって人目を避けるのもこのためです。
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