地球から12億キロ以上離れた土星に、誰よりも近づいた探査機がカッシーニです。13年に渡って土星の素顔を撮影してきました。2017年9月、カッシーニは土星の大気に突入して消滅。その役割を終えました。
カッシーニ最後のミッション!リングの秘密とは!?
1997年10月、カッシーニは謎に満ちた土星の実態を明らかにするために送り込まれました。土星に到着してから13年、カッシーニは数多くの写真を届けてくれました。
2017年4月、カッシーニの最後のミッションが発表されました。燃料がわずかとなり探査の旅の終わりが見えてきたのです。
最後のミッションでは、研究者の悲願でもあった土星の本体とリングの間を通すことになりました。通り抜けるさいに、土星表面の大気やその内部までも観測し土星の詳細を知ろうというのです。
ダイブは全部で22回。2017年4月、最初のダイブが行われました。事前の予測では、本体とリングの間はその周囲と同様に氷などのチリが高速で飛び交う極めて危険な場所とされていました。しかし分析の結果、本体とリングの隙間にはチリがほとんど存在しないことが分かりました。この隙間は「Big Empty(巨大な空白)」と名付けられました。ビッグエンプティのおかげで、機体が壊れることもなくミッションは順調に進みました。
そして、9月15日、最後のダイブの時を迎えました。探査機カッシーニは土星の空に消えました。
土星のリング 誕生の秘密とは!?
今、グランドフィナーレのデータが少しずつ解析され始めています。中でも注目されているのはリングの成り立ちです。これまで、土星のリングは太陽系ができた直後、45億年前に本体と共に誕生したと考えられてきました。
しかし、イタリアの研究チームはリングの年齢が土星本体よりもずっと若い可能性があると指摘します。カッシーニは本体とリングの間を通るさいに、重力によって速度が変化し、そこからリングの重さを推定できます。
土星のリングにはいくつか種類があります。イタリアの研究チームが特に注目したのは、最も重いとされるBリングです。Bリングの重さを計算すると、当初の想定よりも軽いという結果がでました。土星誕生と共にリングができていれば、太陽系の外から飛来する物質も取り込み、もっと重くなっているはずです。しかし、カッシーニの計測した重さから年齢を導くと1億~2億年だというのです。
2億年以上前、恐竜が出現した頃、見上げた空の土星にはリングはなかったことになります。カッシーニが残した観測結果は、太陽系の定説を覆すものでした。
地球外生命を探せ!衛星エンケラドス
カッシーニがとらえたエンケラドスの写真は、生命探査の歴史に残る発見となりました。2015年、カッシーニは自らエンケラドスの噴出物の中にダイブしました。その時、検出された成分から驚くべき発見がありました。
内部から水素分子が検出されたのです。水素が発生するのは、エンケラドスの氷の下に広がる海の底で、岩石と熱水が反応しているからだと考えられています。これはすなわち、エンケラドスの海底に熱水噴出孔があることを示しています。
地球では、熱水噴出孔に水素をエネルギー源とする細菌が存在します。原始的生命を育むゆりかごのような場所です。エンケラドスには地球と同じ海底の環境があり、原始的な生命が存在できる条件が整っているのです。
カッシーニの発見によって、エンケラドスは地球外生命の存在が大いに期待される衛星となりました。
想定外の生命圏!?衛星タイタン
2004年、カッシーニはタイタンへと向かいました。上空で小型探査機ホイヘンスを投入。パラシュートで徐々にスピードを落とし、着陸させました。目指したのは陸地のある赤道付近。タイタンには驚くべき光景が広がっていました。
ホイヘンスの観測データから、表面の気温はマイナス180℃、気圧は地球より少し高い1.5気圧。カッシーニはレーダーでタイタンの地形をくまなく探査し、詳細な地図を作り上げました。そして、巨大な湖があることが分かりました。マイナス180℃の地表でも凍らないメタンの湖です。メタンの雲ができていることも明らかにしました。
タイタンでは、メタンの大気が循環しており、極地で冷やされたメタンが雲を作っているのです。メタンの雲からメタンの雨が降り、メタンの湖ができるタイタン。さらに、太陽光が大気や湖に降り注ぐことで多くの有機物もできていることが分かりました。
タイタンには水を基準とした地球とは全く異なる生命圏が存在する可能性があると言います。
「サイエンスZERO」
あなたの知らない土星の真実
偉大な写真家 探査機カッシーニ
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