急増する高齢者の暴力|あさイチ

NHK総合テレビの「あさイチ」で急増する高齢者の暴力について放送されました。怒りから暴言、暴力にまでエスカレートする高齢者が増えていると言います。さらに高齢者の犯罪も急増。ここ20年で傷害事件で検挙された人数は9倍、暴行事件では48倍に増加。他の世代と比べ極めて高い増加率となっています。また高齢者の犯罪の3分の2が初犯だと言います。4年前には60代の男性が飼っていた猫をめぐるトラブルからアパートの大家さんをナイフで刺すという事件も起こりました。

 

院内暴力の実態

ある日の夕方、病院の主任看護師だった田中章子さん(仮名)のもとに若い看護師が駆け寄ってきました。患者をひどく怒らせてしまったというのです。患者はその日検査のために入院した60代の男性。男性は入院に必要なパジャマを持っておらず、看護師に「病院が用意して」と詰め寄ってきました。若い看護師は「入院用のパンフレットに書いてあったと思うんですが」と言いました。すると60代の男性は「ふざけるな!何だその口のきき方は!お前じゃダメだ上の者を呼んで来い」と激高。事情を聞きすぐに病室に駆けつけた田中さんは、男性の怒りを静めようと謝罪しましたが収まりませんでした。男性は田中さんの頭を数回殴り首をつかんで押し倒しました。病院のスタッフが警察を呼び事態はおさまりました。後日、病院と男性が話し合い和解。その後、田中さんはインターネットで男性の顔写真をみつけ、ある企業の会長だったことを知りました。

 

院内での暴言・暴力 共通の傾向

都内の私立病院のグループが医療従事者3万人近くを対象に行ったアンケートでは、過去1年に44.3%の人が何らかの暴言や暴力を受けたと回答。被害を加えた人を年代別にみると暴言は50代が24%と一番多く、次いで60代が21%です。暴力は70代が24%と一番多く、次いで60代が22%となっています。都内のある大学病院では病院内でのトラブルを防ぐために院内交番という部署を設置。警察OBが常駐してトラブルが起きたさいにはすぐに駆けつけるようにしています。さらに院内をくまなく回り被害の実態を明らかにする作業も行っています。なぜ病院で高齢者によるトラブルが起きるのでしょうか?

 

院内暴力を調査している筑波大学の三木明子准教授によると、病院側にも不備はありますが多くは患者側の粗暴な行為だそう。一つ一つの事例を詳しく調べた結果、暴力をふるってしまう高齢者には共通した傾向があると言います。それは特権意識。「自分がいちばん大事」という考え方を全面的に出してくる人です。診療の順番でも早くして欲しい、最高の治療結果が欲しいなどを暴力で要求を通そうとするのです。

 

手を出した本人の告白

白石正さん(72歳)は大学教授の職を7年前に退き妻と2人で暮らしています。海や山にでかけ自然と触れ合う悠々自適に毎日です。そんな白石さんに今年トラブルが起こりました。原付バイクが散歩をしている白石さんの横を通り過ぎた後Uターンして目の前で止まりました。乗っていたのは見知らぬ若い男性。「何か用か?」と言ってきました。白石さんは「おんどりゃ誰に話してんじゃ」と怒り、ヘルメットに手をかけ持ち上げました。その後、男性も白石さんにつかみかかり揉み合いに。しばらくして駆けつけた警察官の仲裁で大事になるのは免れました。仕事を辞めるまでトラブルを起こしたことがなかった白石さんですが、この出来事をきっかけに自分の身の回りについて考え始めています。世の中から要求されていないことがつらいと言います。自分が今置かれている現実は受け入れる一方で、もっと自分にできることがあるのではないかと焦りを感じています。

 

怒りは扁桃体が反応しノルアドレナリンなどホルモンが分泌されている状態です。それを抑えてくれるのが前頭葉です。前頭葉は「家族に迷惑がかかるのではないか?」「周囲の目は?」「罰則を受けることになる?」など考えて暴言や暴力を抑制してくれます。しかし、孤立していたり疎外感を感じている人は家族に迷惑がかかることや周囲の目などが気にならなくなるために怒りの抑制が効かなくなるのです。