エアロゾルが気候変動を支配する|サイエンスZERO

年々深刻度を増す地球温暖化。2013年、報告書を発表したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)でも二酸化炭素が最も重要視されてはいますが、急速に注目度を集めているのがです。まったく新しい観測や実験が次々に行われ、詳しいメカニズムが明らかになりつつあります。

 

 

中でも専門家たちが注目するのは長生きする雲。調べてみると、その雲は海の飛沫など身近なあるものと深い関係があることが分かりました。

 

積乱雲のメカニズム

空気が暖められると上昇気流が発生し、小さな雲ができます。さらに、上昇気流がやってきて雲が成長。大きくなって重くなると雨になって落ちていきます。さらに、上の方は蒸発して消えてしまいます。このように、それぞれの雲には一生があります。

 

しかし、雲は上昇気流だけでは出来ません。大気中に浮遊している小さな微粒子「エアロゾル」が雲の種になるのです。

 

エアロゾルがあるとなぜ雲が出来るのか?

雲の粒になるエアロゾルは、半径が0.1~10マイクロメートルと非常に小さく砂や塩、細菌、硫酸塩、すすなどの種類があります。どうしてエアロゾルがないと雲が出来ないのでしょうか?

 

大気中には水蒸気、つまり水の分子が浮遊しています。湿度が100%を超えると水分子同士の衝突が激しくなり、とても小さな水の粒の芽が形成されます。これがどんどんぶつかれば大きな水の粒になってくれるはずです。

 

ところが、水の粒は成長するだけでなく表面から蒸発もしています。蒸発は水の粒が小さいほど激しくなります。そのため、ごく小さな水の粒の芽は極めて蒸発しやすく大きくなれないのです。では、エアロゾルがあるとどうなるのでしょうか?

 

実はエアロゾルがあると水の粒が蒸発しにくくなります。エアロゾルがあると水滴の中にエアロゾルの成分が溶け込み、蒸発を邪魔するからです。水の分子が衝突して大きくなる効果は変わらないため、エアロゾルがあると水の粒が成長できるようになるのです。

 

エアロゾルが生み出す長生き雲

普通の雲は成長と共に中心部の雲粒が大きくなります。しかし、長生き雲は小さい雲粒しかありません。小さい粒だけで出来た長生き雲は大気中にある微粒子(エアロゾル)の影響を受け、なかなか成長できないのだと言います。

 

雲の種であるエアロゾルが増えすぎると、一個一個の雲の粒が得ることが出来る水の量が少なくなっていきます。すると、なかなか雲が成長できず雨にまでならず、ずっと空気中に雲として漂ってしまうのです。

 

寿命が数時間の雲の場合、エアロゾルの量が2割増えると寿命が30分のびると言います。19世紀の産業革命以降、人間の活動によってエアロゾルが約2割増えました。

 

エアロゾルが気候変動を支配する

IPCCで取り上げられたのが産業革命以降の気温の上昇。150年で平均0.85℃上昇しています。しかし、エアロゾルなどの効果を除き温室効果ガスだけを考慮してシミュレーションを行うと温度上昇は1.3℃にもなってしまったと言います。つまり、エアロゾルが増えたことで0.45℃もの気温の差が生まれていました。

 

エアロゾルは空気を冷却する効果があり、温暖化の約3分の1をおさえていると言います。しかし、エアロゾルは大気汚染物質でもあるので、温暖化を抑える効果があるものの健康への影響を考えると放置もできない状況です。

 

しかし、雲ができる時にエアロゾルがどういう役割をするかが分かっておらず、エアロゾルの種類ごとに雲のなりやすさが違うため研究や推定が難しいのです。

 

「サイエンスZERO(ゼロ)」
雲のニュータイプ出現!エアロゾルが気候変動を支配する

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