減塩社会への挑戦|クローズアップ現代

NHK総合テレビの「クローズアップ現代」で道は険しい?減塩社会への挑戦が放送されました。心臓から送り出される血液によって血管が受ける圧力が血圧ですが、血圧は年をとればとるほど上がっていき、放置すると動脈硬化が進んで脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気、または慢性の腎臓病を引き起こす可能性があります。この血圧を低く抑えるために切っても切れないのが塩分。高血圧が招く様々な病のリスクを少しでも減らすために日本高血圧学会が推奨する塩分摂取量は1日6g未満。ところが、6月に発表された平均塩分摂取量では成人女性で1日11.8g、成人男性で14gにものぼりました。塩分指導が長年すすめられてきたにも関わらず、なかなか減らない塩分摂取量。国が調査対象の人に食べたものを申告してもらい計測した平均塩分摂取量の推移でも、1970年代の1日14gから現在の10.4gと下がってきてはいますが、どちらのデータでも高血圧のリスクを減らすためには少なくとも4割塩分の摂取を削減しなくてはいけません。しかし、減塩は容易ではありません。個人個人の地道な努力だけでは限界があることが分かってきました。

 

減塩しているはずなのに 家庭の苦闘

埼玉県に住む辻めぐみさんは、夫の幸雄さんが6月の健康診断で高血圧と判定されました。それ以来、食塩や醤油などの調味料を以前の半分近くにまで減らす工夫を続けています。しかし、夕食で食べたソーセージ2本、パスタサラダ、味噌汁、カボチャの煮物で塩分摂取量は5.8g。高血圧患者の摂取目標とされる1日6g未満の上限に夕食だけでほぼ達してしまいました。調理のさいに塩の量を気をつけているはずなのに、なぜ減らないのでしょうか?その理由は食材にありました。実は料理で使った食塩は、わずか0.7gでした。それに対し、醤油やマヨネーズなどの調味料に含まれる塩分が合わせて2.4g。さらにソーセージやハムなど加工食品に2.7g含まれていました。実は日本人は塩分の7割を食塩そのものではなく、調味料を含めた加工食品などから摂っていることが分かっています。チーズ、レトルトカレー、即席めんなど加工食品には味付けだけでなく保存のためにも食塩が使われています。加工食品を使う以上、調理の工夫だけで十分な減塩をするのは難しいのです。家庭での減塩がなかなか進まないなか、国は来年4月から塩分の摂取目標量を厳しくする方針を打ち出しています。男性の場合、これまで9g未満だった目標を8g未満に引き下げます。国は減塩を社会に浸透させるため、家庭にとどまらず食品業界への働きかけが重要だとしていますが、本格的な減塩対策はこれから検討するとしてます。

 

どう減らす 加工食品の塩分

一方、食品メーカーの中には率先して減塩商品の開発に取り組む企業が現れています。ある大手調味料メーカーでは5年前から塩分を半分に減らしただしつゆなど、減塩を前面に出した商品を販売してきました。開発にあたり塩分を減らしても味わいを保つために様々な試行錯誤を繰り返してきました。減塩で失われる塩気は塩化カリウムで補います。そのままでは独特のえぐみが出てしまうためポリグルタミン酸という食品添加物を加えます。使う材料の種類は2倍に増えました。香りや風味を引き出すためのコストが影響し、従来品と比べ販売価格が1.5倍に上昇しています。価格のアップは商品の売れ行きにも影響します。あるスーパーで売れた減塩のだしつゆは先月18本でした。これは減塩ではない他社のだしつゆの4分の1の売り上げです。減塩のアピールは消費者にはいま一歩です。減塩の市場規模はカロリーを減らした商品と比較すると8分の1にとどまっています。他の健康食品と比べても消費者の支持を十分に得られていないのが実情です。

 

国ぐるみで減塩イギリスの試み

ロンドンのスーパーには塩分を減らして作られた様々な加工食品が並んでいます。塩分を減らした商品が普及することでイギリス人の食塩摂取量は8年間で9.5gから8.1gに減少しました。そこにはイギリス政府が主導した減塩政策が深く関わっています。政府は食品メーカーに対し、商品ごとに減塩する数値を定め、その達成を求めました。こうした目標値を85種類にわたって設定。あらゆる食品業界を巻き込むことで減塩を進めました。社会をあげての減塩で、国民の健康と財政を圧迫する医療費の削減という一石二鳥を狙ったのです。しかし当初、食品業界は薄味による消費者離れを懸念していました。そこで業界が受け入れやすい減塩方法を科学者グループが政府に提出。その方法とは塩分を時間をかけて段階的に減らすという作戦でした。段階的に塩分量を減らすという提案に多くの業界が賛同。イギリスのパンメーカーで作るベーカーズ連盟では塩を3年間で10%減らす計画を立てました。この計画に従い各メーカーが取り組んだ結果、目標通り塩の量を100gあたり1gまで減らすことに成功しました。他の食品業界でも、同様のやり方で減塩を進め次々と目標を達成していきました。国をあげての減塩政策を進めたことで、心臓病などの患者が減り医療費が毎年およそ2600億円も削減できたと言います。

 

子供のうちから減塩 学校給食で一斉に

日本でも減塩を社会で取り組む動きが始まっています。その現場は学校の給食です。広島県呉市では多くの小学校で給食に含まれる塩分を一斉に下げています。取り組みを始める前、1食あたりの塩分量は平均3.1gでした。それを国の基準を参考に2.3gまで下げるという目標を立てました。目標達成のため加工食品に対して様々な工夫を行っています。例えば小分けのマヨネーズは容量の少ない製品にかえることで全部食べても0.1gの減塩に。さらにドレッシングやふりかけは加工食品をやめ手作りすることで塩分を減らしました。こうして毎年0.2gずつ塩分を下げることで子供たちが給食に違和感を持つことなく目標に近づけることが出来ました。