獣人ビッグフットを信じる心理|幻解!超常ファイル

NHK総合テレビの「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」で森の獣人ビッグフットを追え!Part2が放送されました。Part1は>>獣人ビッグフット パターソン・ギムリン・フィルム

 

ビッグフットが最初に文書に記録されたのは19世紀半ば、西部開拓の時代です。アメリカ東部から新天地を求めて西に向かった人々がロッキー山脈近辺にやってきたことがきっかけでした。豊かで厳しい自然の中、開拓者や宣教師が現地に暮らしていた先住民から謎の生物の噂を聞きつけました。ある部族はそれを「サスカッチ」と呼びました。毛むくじゃらの巨人の意味だといいます。20世紀に入ると金の採掘のため山に入った入植者たちの中から、「私は山小屋でサスカッチに襲われた」「サスカッチに誘拐された」といった証言が続出。原始人の生き残りかといった推測をさらに盛り上げたのが、続々と見つかるユニークな証拠品でした。それは大きな足跡。サスカッチはやがてビッグフットという名で親しまれるように。ところが、ビッグフットの足跡は自分が作ったと名乗り出る人が続々と現れたため、足跡には常に疑いの目が向けられるようになりました。そうした逆風の中、アイダホ州立大学人類学者のジェフ・メルドラム博士はビッグフットの足跡といわれる中に、生きた動物でしかつけられないものが存在すると指摘しています。しかし偽造の足跡を排除できたとしても、他の野生動物の足跡とはっきり区別はつくのでしょうか。最も可能性が高いのがアメリカクロクマ。体長が2m近くあり、その姿をビッグフットと見間違えているケースも多いと言います。熊の指は5本で一見すると人間やビッグフットに似ています。しかし、決定的な違いは指の並び。熊の足は親指が一番小さく、小指が一番大きいのです。こうしてメルドラム博士は偽造や見間違いをはぶき、残った足跡を分析したところ、人とは違う特徴に気づきました。ビッグフットの歩行の特徴となるのが中折れ現象。それは足の真ん中の関節が地面を蹴りだすさいにグニャリと曲がる現象です。この時の足跡の特徴は折れ曲がった関節部分の下に押し出された土の盛り上がりが見られること。では、中折れ現象が起きるのは、どのような歩き方を意味するのでしょうか?

 

中折れはゴリラやチンパンジーなどの足が持っている特徴です。木の上で暮らすために足でも木をつかめるよう手に近い柔軟な構造を持っているのです。つまりビッグフットの足が中折れ現象を起こしているとすれば、ゴリラやチンパンジーなどの類人猿に近いと考えられます。ところが、ゴリラの足は手のひらのように物を掴むために親指が離れているのに対し、ビッグフットの親指は前でそろっています。そのためメルドラム博士はビッグフットは類人猿よりも人間に近い新種なのかもしれないと考えています。

 

ヒトを含む霊長類の進化は約8000万年前に始まったといわれ、進化の過程で枝分かれを繰り返してきました。現在、猿やゴリラ、チンパンジーなどの中で直立二足歩行を常に行う動物はヒトだけです。ビッグフット実在の可能性を考える人たちの中で、その候補として挙げているのがオラウータンの仲間ギガントピテクスと初期の人類パラントロプスです。ギガントピテクスは800万年前に南アジア辺りで発生し、分布を東へ進めたという巨大類人猿。発見された化石は下顎と歯のみですが、そこから推定される体長は3mで体重500kgです。一方、パラントロプスは200万年前のアフリカで発生した初期の人類。二足歩行をしていたことが分かっており、体長は1m30cmほどだったと言われています。ギガントピテクスがアジアからベーリング海を渡ってアメリカに入ってきた可能性や、アフリカのパラントロプスが大西洋を渡ってアメリカに渡ってきた可能性はあるのでしょうか?

 

ヒトの進化の過程を研究している京都大学の中務真人さんは、その可能性に否定的です。それはギガントピテクスの化石が北緯30度より北で発見されていないからです。またパラントロプスのような大型の霊長類が大西洋を漂流して無事に漂着する可能性は皆無だと考えているからです。実際、アメリカ大陸で類人猿や初期の人類の化石は見つかっていません。移動してきた形跡も、もともと生息していた証拠もない以上、野生動物としてビッグフットが存在する可能性は限りなく低いのです。それでもビッグフットはアメリカの人々の心をなぜか惹きつけ続けています。

 

ミズーリ・ウェスターン州立大学心理学のブライアン・クロンク教授は、そこにはアメリカ人の自然に対する意識の変化が反映されていると言います。かつて西部開拓の頃のアメリカ人は自然を切り開き、自然を征服してきました。ところが、機械産業が発達すると人々は都市に縛られるようになり、人間vs自然という構図がなくなりました。それに代わって現れたのが、自然の中には孤独で野生的なビッグフットがいて、産業社会と戦っているというイメージです。ビッグフットは現代人が産業社会から離れ、自由を取り戻すための象徴となったのです。はるか昔から北アメリカ北西部の先住民の間では人と似た毛むくじゃらな巨大な生き物の存在が語り継がれてきました。アメリカ先住民クヌート族のジェリー・ハイスマンさんによると、彼らは森に住む不思議な隣人を「シアコ」と呼んでいるそうです。シアコは彼らの兄弟で家族です。姿は見せないですが、いつもそばにいるのだと言います。彼らが探せば探すほど、見つけるのは難しくなります。探すのをやめた時に彼らは姿を見せてくれるのだそうです。