消えた地名「蛇落地悪谷」 生かされなかった先人の警鐘|とくダネ!

フジテレビの「とくダネ!」で生かされなかった先人の警鐘について放送されました。最悪の土砂崩れに見舞われた広島市安佐南区ですが、被災後に多くの住民が口にしたのは「まさか」の言葉。しかし、この土地には後世の土砂災害をなくそうと先人たちが残した多くの知恵がありました。なぜ、その声は届かなかったのでしょうか?

 

消えた地名「蛇落地悪谷」

今回、最も大きな被害を受けた地域の一つが安佐南区八木3丁目。山の8合目付近で起きた土砂崩れで、土砂は真下に流れた後、5合目付近から大きくうねり住宅地を襲いました。代々八木3丁目に暮らす町内会長の福地進さん(79歳)は「元々40軒くらいが古い家で、そこの人は100~200年住んでいる。その中で今回のようなことは起こっていない」と言います。古くから住む人たちにとっても今回の土砂崩れは想定外だったそうです。その一方で、今回土砂崩れが起きた場所で大雨が降るとたびたび道から水が噴出すことがあったと言います。平野孝太郎さん(77歳)はかつての地名にこめられた秘密を語りました。それは八木3丁目はかつて「八木蛇落地悪谷(やぎじゃらくじあしだに)」という地名だったこと。昔、山で大きな水害があったことから麓の地域をそう呼んでいたと言います。その後、「八木蛇落地悪谷」は「八木上楽地芦谷」と改名され、現在では「八木」だけが残され水害のイメージは時代と共に忘れ去られたのです。しかし、町にはその名残がいくつも残されています。

 

土地に伝わる「蛇落地」激流の絵

八木地区で130年の歴史を持つ浄楽寺の住職は、「昔からの言い伝えで竜がいて、その竜の首をはねてその首が飛んで落ちた所が蛇落地。竜は水の神様なので、水害を収めたということもあるのかもしれない」と言います。記録には残っていないものの、この話は昔から口々に語り継がれてきたそうです。蛇落地伝説が伝わる光廣神社の境内には竜を討った武将と、その横を流れる激しい水流の絵が描かれています。そこには、かつての災害を伝えようとする先人の教えがありました。

 

「山より川が怖い」進んだ宅地開発

安佐南区で不動産業を営む男性は「山から流れてくる水というのはあったんだろうと思います。その名残りで地名がついたのかと思いますけれど、今の私たちから見てそれを聞くと、そんなのあったのかなという状況であまり認知されていないと思います」と話していました。先人たちの警鐘はなぜ消えてしまったのでしょうか?そこには別の災害の存在があると言います。それは川の氾濫。堤防の決壊で大きな洪水になったことがあり、昔の地主さんは「山より川の方が怖い」といって警戒していたのです。かつて八木地区で恐れられていた自然災害といえば太田川の氾濫でした。戦後、氾濫の恐れのある川から離れるように山側の宅地開発が進み、さらに人口の増加に伴いベッドタウンとしての需要が高まるとその数は爆発的に増えていきました。100年以上起きなかった土砂災害よりも、頻繁に氾濫する川に目が向いた時、八木地区の山間に残されていた先人たちの警鐘は姿を消してしまったのです。